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宿泊

「今日はこの街に泊まとうと思ってるんだけどいい?」

「うむ、私もこの時間から次の街へ移動するのは面倒だ。ここでいいだろう」


 ヘルの了解も得られたことだし、今日はこの街の宿に泊まろうかな。と言ってもどんな宿があるか全く知らないから一から探すことになるけど。


 それにしてもこの街はほんとにリーリアと雰囲気が似てるな。特色のない街なんてどこもこんなものなのかな? 


「今日はかなりお金も入ったことだし、豪勢に行こうじゃないか」

「そんなことしてたらすぐお金無くなっちゃうよ。収入があったからって浮かれたら駄目だよ」


 これは実体験なのだが、初めてもらったクエストの報酬で調子に乗った私はどう考えてもいらない魔よけのお守りを買ってどれだけ後悔したことか…………本当に効果があるのかすら謎だ。


「とにかく調子に乗るのは駄目なの。しっかりお金は管理していかないと駄目」

「けち臭いなぁ、メリアがそういうなら私はそうするしかないんだからな。少しは私にも気を使ってくれてもいいだろ」


 確かにヘルは今日、あいつを追い払う大活躍だったし少しはご褒美を上げたほうがいいかもしれない。あまりけち臭いのも逆によくないよね。宿は普通でもご飯くらいは奮発しようかな。


「仕方ないなぁ、今日の晩御飯はヘルの好きなところでいいよ。頑張ったもんね」

「いいのか? メリアは話の分かるやつだな。それじゃあ、肉が食いたい!! 私は肉が食いたいぞ」

「肉? それだけだとちょっと困るよ。もう少し具体的にお願い」

「私は人間の料理のことはよくわからん。似たようなものはあるが人間ほどこった料理はあまりないな」


 ヘルはモンスターだもんね。食文化の違いはあるに決まってるか。


「ハンバーグなんてどうかな? 食べたことある?」

「聞いたことあるような…………でも実際に食べたことは無いぞ」

「それなら今日はハンバーグでいいかな。それじゃ、お店を探そうか」


 ハンバーグのお店ならどの街にもあるはずだし、すぐに見つかるよね。


 私たちが街をさまようこと数分で見つかった。個人で経営しているようなお店で、とてもおいしかった。この街に来るようなことがあればぜひまた来たいな。ヘルはハンバーグがお気に召したようで今後ご褒美はハンバーグでいいらしい。ハンバーグのために働く魔王ってどうなんだろうか?


「お腹いっぱいだね」

「私も満足だ。人間はこんなにおいしいものをいつも食べてるとは羨ましいな。私の城にも人間の料理人を雇うか本気で検討してしまうな」


 きっとその料理人はストレスで胃に穴が開くね。少なくとも私だったら魔王の城で一人料理を作るなんて耐えれるとは思えない。


「もう後は宿を探すだけだね。晩御飯はヘルの好きなところにしてあげたんだからこっちは安めのところにするよ」

「別に構わないぞ。今なら野宿するといわれても怒らない自信がある」


 いや、それは私が嫌だよ。



 少し歩くと、あなたの心のオアシスになりたいとでかい看板を付けた宿を発見した。なんかすごく意味わからないことを書いているが一応宿のようなので入ってみることにした。


「すいませーん」


 私が呼びかけると、すごい勢いで女の人が走ってきた。


「はぁはぁ…………こほん、もしかして宿泊のお客様でしょうか?」


 やばいよこの人絶対おかしい人だよ。怖いしやっぱりやめようかな。


「そうだ、部屋は空いてるのか?」


 ヘル!? 何勝手に言ってるの? この人のやばい人オーラに気が付かないの? 魔力は見えるのにこれは見えないの?


「もちろんですよ、どのお部屋でも選びたい放題です」

「ほう、それはいいじゃないか。どうするメリア? 何か希望とかはあるか?」


 選びたい放題っておかしくない? もしかしてこの宿一人も客居ないんじゃ? でもここでやっぱりいいですなんて私にはとても言えない。覚悟を決めよう。どうせ部屋が汚いとかそういうことだよね?


「じゃあ、安めの部屋でお願いします」

「かしこまりました。では二階の角部屋でよろしいでしょうか? このお部屋はこちらの宿で一番のお部屋です」


 え? この人話聞いてた? 安めの部屋をお願いしたよね私。一番の部屋ってことは一番高いってことでしょ。


「その部屋は一泊の料金はどれくらいですか?」

「一泊おひとり様金貨一枚になります」


 高っ!! ぼったくりにもほどがあるよ。相場の何倍なの?


「いいじゃないか。お手頃価格で」

「なに言ってるのヘル? 金貨一枚なんて驚くくらい高いよ」

「そうなのか? でも今日は報酬で五十金貨もらってるじゃないか? 一回のクエストでそれくらい貰えるんなら安くないか?」

「今回は緊急クエストで報酬も多かったの。私がやってたクエストなんてクリアしても金貨もらえなかったよ」

「そうだったのか。そう考えると高いかも知れないな」


 ヘルの金銭感覚が大分麻痺してるのがここで明らかになってしまった。ヘルにお金は持たせないようにしよう。


「もう少し、安い部屋はないんですか?」

「お客さまお願いします。一週間ぶりのお客さまなんです。どうか助けると思ってこのお部屋でお願いします。サービスも充実してい居るので絶対に満足していただけると思います。どうか、どうかお願いします!!」


 なにこれ? 一週間ぶりの客とか言われても困るよ。私たちには全く関係ないよね。さっきの看板を自分でよく読んだほうがいいなこの人。


「かわいそうに、いいじゃないかメリア。困ってる人を助けるのは当然の義務だぞ」


 なんかヘルが敵になってる!? 


「それしても高すぎるよ。せめてもう少し安ければ考えなくもないけど」

「それではお二人で金貨一枚でどうでしょうか? 半額です。大サービスですよ」


 やっぱりおかしいよこの状況。店の人が値切るって。


「わかりましたよ、金貨一枚で泊まります」

「ありがとうございます!! あなた方はこの宿の救世主です」


 これ以上粘ってもどうせ泊まる羽目になってただろうしもういいや。



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