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報酬

 耳がやられたかもしれない。うるさすぎる。


「お嬢ちゃんたちがやったのか?」

「とんでもない冒険者だったのか? Aランク冒険者があっさりやられたモンスターを撃退しちまうなんて」

「助かった!! 俺たちは助かったぞーー!!」


 私の話は聞いてたのかな? 急用を思い出して帰っていったって言ったよね? まあ、バレバレの嘘だけどさ。


「あいつを倒しちまったのか? 有名な冒険者じゃないよな?」


 あ、さっきのボコられたケンタさんだ。逃げてきてたのか。


「違いますよ、勝手にどっか行っちゃたんです。私たちは何もしてません」

「そんなわけないだろ。ここまで攻めてきていたモンスターが街を目の前にして撤退するわけがない」


 うん、その通りだ。どうしよう? 言い訳が流石に苦しすぎかな。


「隠す必要ないだろ。実はAランク冒険者とかなんだよな? それともSランク冒険者か?」

「Dランクですよ。どこにでもいる。冒険者にも去年なったばっかりですし」

「その言い訳は苦しいぞ。Dランク冒険者があの状況から生きて帰れるはずがない」


 もう、全然信じてれないよ。いっそ冒険者カードを見せたほうが早いか…………いや、見せたらヘルのスキルまでばれてしまう。


「皆さん、緊急クエストの達成お疲れさまでした。順番に報酬のほうをお渡ししますので並んでください」


 ナイスタイミング、お姉さん。これで人ごみにまぎれてやり過ごそう。


「みんな待てよ。一番はこの子に譲るべきじゃないか?」


 あー!! そんなこと言ったら。


「そうだな。俺たちは無様に逃げてきただけだ。ここはあの嬢ちゃんに譲るべきだろう」

「流石はAランク冒険者だぜ。いいこと言うじゃないか」


 なんか一番にいなくちゃいけない流れになってきてるんだけど…………はあ、もうあきらめよう。ヘルが強いのはこの際ばれてもいいか。魔王ってことさえばれなければどうとでもなると思うし。


「ありがとうございます。特に何もしてないですが、一番に行かせてもらいます。ほら、行くよヘル」 


 カウンターで待つお姉さんのところへとりあえず一番にならんだ。


「では、冒険者カードを見せてください」

「はい、どうぞ。お願いします」


 できる限り反応しないでほしいな。


「え、えーーーーーー!? なんですかこれ?」


 私の祈りはどうやら届かなかったようだ。ちなみにお姉さんはどこの部分を見てこんなに驚いているのだろうか? ここは私は普段通り冷静に話そう。


「どうかしましたか? 珍しいモンスターでも倒してました?」

「メリアさん、ですよね? 今のクエストで二百体モンスター倒してますよ」

「そんなに倒してたんですか? いや、夢中で全然気が付きませんでしたよ」


 うそ? 二百体も倒してたの私? 危うく驚いて冷静さを忘れるところだったよ。まさかそんなところで驚いてるなんて思ってもみなかった。


「一体何したんですか? 見たところ武器は持っていないので魔法ですよね? どんな魔法を使ったらこれほどのモンスターが倒せるんですか?」

「スキルの欄に書いてませんか? 私初級魔法しか使えないませんよ」

「へ?…………ほ、本当ですね。でもこのネクロマンサーっていうスキルは何ですか? これを使ったんですね」


 ネクロマンサーのおかげで初級魔法が使えるだけなんだけど。それとヘルを使役してるだけなんだよね。


「テイマーみたいなものですよ。今はここにいるヘルを使役してます」

「と言うことはこの人はモンスターですか?」

「そうですよ、ヘルはモンスターです」


 どんどんばれて行ってるけど大丈夫かな? なんか私自分で暴露していってない?


「人型のモンスターの使役なんて普通はできるはずないんですが…………それならヘルさんのスキルもカードに表示されてますよね。見ても問題ないですか?」

「あるんで駄目です」


 あ、つい即答してしまった。


「なぜですか? 何か見られたら困ることでも?」

「そういううわけじゃないですが、冒険者として切り札は隠しておきたいじゃないですか」

「その気持ちはわからなくはないですけど…………本当にそれだけですか?」


 もうっ、ギルドのお姉さんはみんな疑り深いな。めんどくさい。ここからごまかすのってもう無理だよね。ばらしたほうが楽かも。


「やめてやれよ、姉さん。誰だって自分のスキルを人に見られるのはいやだろ。自分の手の内がばれるしな」


 ケンタさん…………。ありがとう。本当にありがとう。


「そうですね、すいません。メリアさん。私もつい好奇心で」

「いいですよ、じゃあ、報酬をもらってもいいですか?」

「わかりました。参加報酬とモンスターの討伐報酬合わせて五十金貨になります」


 五十金貨ももらえるの? やった、これは参加して正解だったかも。


「報酬ももらったし、さっさとお暇しよう、ヘル」

「よくあの状況からごまかせたな。私はもう駄目かと思ったぞ」


 私もあきらめてました。本当ケンタさんのおかげだ。戦闘では役に立ってなかったけどまさかこんなふうに役に立つなんて。まあ、いいか。とりあえず今日は適当な宿を見つけて明日また出発しよう。

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