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到着

 朝がやってきた。いや、来てしまった。今日から私はヘルと二人で旅をしなければならない。今まで泊りのがけのクエストなどの経験も皆無の私にいきなりこれは正直ハードルが高すぎる。しかも、なぜか今日は自分で起きることができた。本来うれしいことなのだが、今日に限ってはずっと夢の中のほうがよかった。


「起きろーー!! メリア!!」

「あ、おはよう、ヘル」

「なんだ、今日は起きているのか。とてつもなく朝に弱いと聞いたから寝坊しないよう、起こしに来てやったと言うのに」


 できれば私の朝弱いのを広めるのはやめてほしい。


「今日から私は生まれ変わったんだよ。もう朝に弱い私はいないよ」

「なにくだらん事行ってるんだ。おきてるのなら早く降りてきて飯を食え」


 あっさり流されてしまった。恥ずかしい…………。


 昨日と同じよう私の家族+ヘルという五人でご飯を食べた。みんないつもと変わらない様子だった。


 そのまま出発の時がやってきてしまった。


「たまには帰ってくるのよ」

「毎日帰りたいくらいだよ…………」


 憂鬱だ。これからのことを考えたくない。


「なにも心配することなどないだろ。私が一緒なのだ。大船に乗ったつもりでいればいい」

「ヘルと二人なんて何が起こるかわかったものじゃないよ」

「なにが不満だというんだ? 魔王が護衛についているなど普通では考えられないぞ」


 魔王だからいろいろと面倒なのである。ばれないように気を使わなければならないし、因縁のある相手もたくさんいることだろう。


「いや、ありがたいなぁ。ヘルが一緒だと安心だよ」

「そうだろう。最初から素直にそういえばいいものを、まったくメリアは素直じゃないな」


 きっとこう反応したほうがいいのだろう。メルの機嫌もよくなるし。


「二人ともそろそろ行かなくていいの? この調子だとまた明日になっちゃわない?」

「そうだね。出発しようかな」


 いつの間にか出発する雰囲気ができてしまっていたのでこれはもう従うしかない。まあ、最初から選択しなんてなかったけどね。


「頑張りなさいよ。Sランク冒険者になったら自慢してあげるから」

「お姉ちゃんたち頑張って」

「頑張るんだぞ」


 こうして応援されると嫌な気はしないな。ちょっとやる気が出てきたかもしれない。案外私も単純なんだな。


「行ってきます。頑張ってくるから」

「そうだぞ、私のためにもしっかり働いてくれ」


 一言余計なんだよね。やる気を下げに来てるのかな?


 


「まず、どこに行くつもりなの?」

「そんなこと決めてるはずないだろ。そういうのはメリアの役目だ」


 なんてことだ。出発していきなりまさかの目的地が決まってない!?


「どうするの? こんなことじゃこの先不安すぎるよ」

「まあ、いいじゃないか。適当に近くの街によりながら私の領地を目指せば」


 本当に適当だ。でもそれしかないかな。特に目的地も決まってないし。


「とりあえずはそれで行くことにするしかないか。まさかこんな大げさに出発したのに最初の目的地が隣の街になるなんて」

「最初なんだ、このくらいがちょうどいいだろ?」

「そうかな。じゃあ、まずはそこを目指すことにするよ」


 私の住む街リーリアから隣町のケルムへは歩いて一時間ほどの距離だ。かなり近い。もっと遠くまで行くことになると思ってたんだけどなぁ。


「整備された街道を進むからモンスターには遭遇しないと思うけど、出てきたらよろしく」

「任せろ。一瞬で消し飛ばしてやる」


 街道を進むこと一時間、ケルムが見えてきた。大きさはリーリアとほとんど同じくらいだろう。特にこれといった特色もない普通の街である。それはリーリアも一緒だけど。


「おお、見えてきたじゃないか。こんなにすぐ着くとはな。拍子抜けだ」

「隣町なんだし、こんなものじゃないかな? でも、着いたのはいいけどこの街で何かすることでもあるの?」

「そうだな……この近くにはダンジョンはないのか? ダンジョンには手掛かりがあるかもしれないぞ」


 どうだろう? 私はあのダンジョン一筋だったからほかのダンジョンがどこにあるかなんて知らない。あっても全然おかしくはないし、この街の冒険者ギルドで聞くのが手っ取り早いかな。


「まずはギルドに行くよ。ダンジョンがあるか聞いてみよう」

「わかった。下手に探し回るよりもそっちのほうが楽だしな」


 私たちは街に入り、冒険者ギルドを目指した。大体、街の中心に位置しているので探すのは簡単だ。


「あそこだね」

「この街のギルドもやはり大きいな。まあ、私の城には遠く及ばんがな」


 ちょこちょこ自慢を挟んでくるのはやめてほしい。


 私たちが中に入ると、何やら冒険者たちの様子がおかしかった。何と言うかすごい騒がしい。


「なんだこれは? 騒々しいな」

「なにかあったんじゃないかな?」


 取りあえずその辺にいるおじさんに聞いてみることにした。


「どうしたんですか? なんだか皆さんの様子がおかしいですが」

「うん、見ない顔だな。まあいい、今はそれどころじゃないからな。大変だぞ、モンスターが大量発生したらしくてな。なんでもこの街に向かって進んでいるとか。だからこんなに大勢の冒険者がギルドにいるわけだ」


 ついてない…………よりにもよって私たちが街に来た日にそんなことが起こるなんて…………。

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