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旅立ち

「もっと詳しい結解の解析とかはできないの?」

「そうだな、私は基本的に戦闘に特化しているからな。そういうことはわからん」


 そんなことまでできたら本当にチートだな。なんかできなくてちょっとほっとしたかも。


「それじゃどうするの? 一回出ちゃったからこの中にはもう入れないんだよね?」

「私は入れないな。今の魔力でこの結解は正直突破できそうにない」

「ひとまずダンジョンから出る?」

「どうしたものか…………これでは手掛かりが少なすぎるな」


 困ったな。ここ以外に身近な手掛かりはない。この調子だと一向に解決することは無いだろう。


「そうだ、メリアならこの中に入れるじゃないか。ちょっと中に入ってきてくれ」

「私が行かなくちゃいけないの? もう、仕方ないな」


 本当はあまり気乗りしないが、一応協力する約束をしてしまっているので我慢するしかない。


 私が結解に触れると、あっさりと中に入ることができた。やっぱりこの結解はモンスター専用なのかも……でも人間からも守る必要はあるんじゃないのかな? まあ、考えてもわからないや。


 中を見渡すと、昨日と全く同じ光景が広がっているだけだ。ヘルが寝ていた祭壇があるだけである。この祭壇に何か仕掛けでもあるのかな? でも簡素な作りでとても仕掛けがあるようには見えない。少し触ってみたが特に仕掛けのようなものはなかった。


「ただいまー」

「おう、何かわかったか?」


 胡坐をかいて頬杖をするというとても女の子がしてはいけない格好でヘルは待っていた。スカートじゃないだけましかな。


「うーん、昨日と同じでヘルを封印していた祭壇しかなかったよ。一応調べてみたけど何もなかったかな」

「それでは、本当に手掛かりがないじゃないか。一体これからどうすればいいんだ?」

「なにか思い出せないの?」


 ヘルはしばらく考え込むが…………駄目そうだ。見るだけでわかってしまう。


「無理だ、まったく思い出せない。こうなったら私の領地にでも行くか?」

 

 ヘルの領地? ヘルが魔王だったのってお母さんの記憶が正しければ三十年前だよね? まだ存在してるのかな?


「大丈夫? 絶対他の魔王や人間に奪われてると思うけど…………」

「許せんな。もしそうだったらすぐに取り返すぞ。この私が不在の時に奪うなどありえん」

「ヘルの配下のモンスターも相当強いんじゃないの? もしかしたら守ってくれてるかもよ」

「それだといいのだがな、魔王に侵略されたりなんぞしたら流石にあいつらだけでは荷が重いだろう」


 魔王から侵略か、想像するだけでも怖い。この街なんてひとたまりもないよね。


「ひとまずは私の領地を目指すとするか」

「え? 待って、ヘルの領地ってどこ? 日帰りで帰れる距離?」

「そんなわけないだろう。ここからだと、少なくともひと月はかかるな。本当になぜ私はこんなとこにいるのやら…………」


 ひと月? 私冒険者になって一年だけどまだ、日帰りでしか活動したことない。それに家を離れなくちゃいけない。


「ちょっと待って、私はこの街で冒険者やってたいんだけど」

「なにいってる? メリアは冒険者ランクを上げたいんだろう? それならこの街にとどまっていては駄目だ。この街には全然強い冒険者なんていないじゃないか。道中クエストでもクリアしていけば一石二鳥だ」


 正論だ。確かにこの街で活動しているだけではすぐに限界が来るに決まっている。それならヘルと二人で旅をしたほうがいいのかもしれない。


「とりあえず、一回家に帰ってから話し合おう」

「しょうがない奴だ。まあ、もう行くのは決定してるがな」


 横暴だ。完全に自分のことしか考えてないよね? 




「いいわよ、行ってきなさい」


 家に帰り着いてお母さんに説明をすると、速攻オッケーが出てしまった。


「え? 本当にいいの? 私が家からいなくなっちゃうんだよ?」

「なにいってるの? 冒険者になったくせにいつまでも実家にいるほうがおかしいわよ。実家暮らしの冒険者って何よ。メリアが冒険者になるっていった時からそのくらいのことは考えてるに決まってるでしょ」


 よくよく考えてみると、今までの生活が逆におかしかったのだ。


「ちょうどいい機会よ、ヘルちゃんが一緒にいれば安心だしね。なんてったって魔王なんだから」

「そうだぞ、私と一緒なら安全だ。魔王だからな」

「でも私が使役やめたら、ただの死体だよね?」

「やめろよ、それは。使役のことを持ち出してくるのはずるいぞ」

「そうよ、ヘルちゃんをいじめるのはやめなさい」


 お母さん、結構ヘルのこと気に行ってるよね。まあ、実際ヘルと二人なら大抵のモンスターは倒せるだろう。ヘルの目で、相手の魔力もわかるし、本当にやばかったら気づかれる前に逃げちゃえばいいしね。


「お父さんも寂しいが賛成だ。頑張ってこい」

「お姉ちゃん、頑張ってね」


 お父さん、それにミルも。私も寂しいな。いつも家族でいるのが当たり前だったし、でも頑張るよ。


「まあ、任せておけ。メリアに使役されている間はメリアの死は私の死にも直結するからな。私が守ってやろう」

「私だって初級魔法しか使えないけど結構強いはずだし、逆に私が守ってあげるよ」

「いくら魔力保有量が多いからと言ってそれは調子に乗りすぎだ。私はすべての魔法を使えるんだぞ」


 せこい、ヘルを使役してるんだから私にも同じ魔法が使えたりしないのかな? 成長したらスキルで獲得できたりしてね。私のネクロマンサーだってレアリティはSSなんだから。


「それじゃ、明日の朝出発しようかな。今日はゆっくり休もう」

「は? 今から行く流れだったろう。はあぁ、しょうがない。明日でいいだろう」


 

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