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300年 吸血鬼ごっこ  作者: ☆夢愛
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第5話 〜2体目の吸血鬼〜

 今日は何やら空が曇っているようで、 少しばかり暗く感じる……けど別に空は暗くない、 晴れなのに雲がかかってるだけみたいだ。


 でも、 辺りは暗く感じるぞ? 眼でも腐ったか? ……な訳ないか……。


「やっほりょーちゃん! 今日も明るいね! 」


「あ、 おはよう由奈。 ……やっぱ明るいはずだよな……」


 私が不思議そうに呟くと由奈は首を傾げてから、 心配したかの様に返して来た。


「何言ってるの? 晴れてるんだもん明るいに決まってるでしょ……? りょーちゃん、 疲れてる? 」


 晴れてる……? これが? 『晴れ』って、 太陽が出てて眩しくて、 影がはっきりと出るはずだよな? 雲が在ったとしても空は見える筈だよな?


 これは……晴れじゃないよな……?


「ねぇ、 由奈にはこの空、 どんな風に見えてる? 」


 私がそう聞くと、 眼を細めながら空を見上げる由奈。

 さっきまで晴れてると言ってた癖に、 暫く眺めている。


「りょーちゃん……」


「! 何だ?」


「やっぱ晴れてるよ」


 マジか、 雲で空が覆われてる様にしか見えないんだけど……コイツの眼は大丈夫か? いや大丈夫ならコレは晴れって思う筈だけど。


「そっか。 ごめん、 じゃあ行こう」


 私と由奈は急ぎで学校へと向かうと、 いつも一緒に居るのに今日はそれぞれ別の方へ向かった。


 私は空中廊下に行くと、 そこで窓を開けて空を見るヴォルフに遭った。

 私は、 ココにコイツが居るのは知ってた……と言うか、 コイツにメールで先程呼ばれたんだ。


 私はヴォルフの真横に立ち、 空を見上げた。


「ねぇ、 この空は何色に見える? 」


 何色って聞き方はよく分からないけど、 見た感じで答えれば良いんだろうと思い、 見たままの景色の色を答えた。


「白……お前にはどう見えてる」


「やっぱ白だよねぇ……または灰色」


 灰色……か、 確かにそんな風にも表現出来るかも知れない、 ただ、 乾いたコンクリートのような色とも言えるけどそれは分かりづらいだろうと思い言わなかった。


 ヴォルフは、 私の眼を見て頷いた……どした??


「間違いなく誰かの特殊能力(キャプシャル)だよね」


 あ、 そうなの? ……そうだったんだ、 間違いなくって言われたけどゴメン分からなかった。

 私にそんな事考える脳無いの、 本当にゴメンね。


 私とヴォルフの沈黙は2分程続いた。


「人間には到底出来ない様な能力だ……でもどんなのだろう」


「え、 知らね」


 思わず本音が出ると、 ヴォルフは笑顔でこっちを向いて来た……見んなキモい。

 そしてまた沈黙が1分程続くと、 直後ヴォルフは私に接近してそのまま空を指差した。


「あそこに紫色の星みたいな光があるでしょ? それが能力の起点。 誰かがあそこに居るはずだ」


「……どこ? 」


 私が眼を凝らしていると、 ヴォルフは更に近づいて来た。


「ここ」


「殺すぞお前」


 ヴォルフは私の背後からお尻をなんと下の方から鷲掴みして来たのだ、 本当に変態だなコイツ。

 私はヴォルフの腕に肘を思いっきり当て、 どかしたと同時に空に紫の光を見つけた。


「見つけた! 」


「あそこにいってみようか」


「いや無理だわ」


 私が無理と言うと、 ヴォルフは完全に密着して私を抱き上げた。


「ちょ……!? 」


 そして大空へ高く飛び発った……わーお、 怖。

 地上30メートル程を飛び、 少しずつ空を上がって行くヴォルフだが、 もう少し私の事を考えて欲しいです。

 めっちゃ怖いんだけど。


「凌菜ちゃん可愛い、 怖がってるの? 」


 ヴォルフは微笑みながら言うけど、 怖いに決まってるよね? どんだけアクティブな人間なら人型のものに抱かれて50メートル辺り飛んで平気でいられるの。

 落ちたら死ぬって事考えて無いでしょそれ。


「手……話したら殺すから……」


「あれ? 急にデレた? 可愛いね〜」


 本当に殺すぞコイツ……単に落ちたくねーだけだわ。

 それに私男装モードなのに何で可愛いなんて言えるんだ? お前は男もアリなの?


「居た……!! 」


「あ、 誰か飛んでる……飛んでる! あ、 私達もか」


 雲を突き抜けた辺りには、 銀髪の男が飛んでいた……が、 背中からは羽が生えている。

 やっぱ吸血鬼か……私がそう思った理由は男の顔でだった。


 目付きはとても鋭く私の方を睨みつけ、 羽はよく描かれる悪魔の羽の様なもの……そして何より鋭い牙が見えている。


「来たか……少々遊んでやるとするか」


「はぁ……? 」


 その瞬間、 私の身体は宙に浮いていた……。


「え!? うわぁっ!? 」


 ヴォルフは蹴り落されたらしく、 もの凄い勢いで落下して行く……そして私はその銀髪の吸血鬼の逞しい腕に抱かれていた。


 だが私にはこれが落ちるよりも恐ろしい事だと分かっていた。


「ちょっと待て! 放せよ! 」


 私は奴の下腹部を殴り続けるが、 岩の様に硬くビクともしない……てか手が痛い。

 それよりコイツら吸血鬼は男装してても分かっちまうのか……ヴォルフは勘らしいけど何で分かるんだ!


「大人しくしてろ……すぐに終わる」


「待って! せめて空中じゃなくて……」


 私は口を首元にやる奴に最後の抵抗をした……が、 それは無意味に等しかった。


「結局は死ぬんだから空中だろうがどこだろうが関係無いだろう、 黙れ」


 そして、 私の服ごと別肉体を引き裂く吸血鬼。

 私の上半身はほぼ裸状態となった。


「ギャアアアアア!!! 」


 空中で裸! マジで最悪! こんなの見られてたらお嫁に行けないよ! うわぁあん!


 実は将来の夢はお嫁さんです……別にいいか。


「ん? 貴様何だこの傷……まさかもう誰かに」


 首の傷を見て言う吸血鬼の言葉を聞き、 やはりヴォルフのせいなのが分かった……てか見つめないで下さい、 恥ずかしくてそのまま死んじゃいそうです。


「む! 」


「だらぁあああ!! 」


 どうやってるのかは全く分からないけど、 ヴォルフは逆さでラ○○ーキックのポーズで下から突っ込んでくる。

 外れたら私に当たるからな。


 吸血鬼は間一髪で瞬間移動をし、 避けた。

 コイツも瞬間移動使えんのか……!! 吸血鬼は皆出来んのか!?


「おいお前……」


 ヴォルフはいつものお気楽な顔でなく、 全身から殺気を放つ程恐ろしい目つきで吸血鬼を睨む。


「その娘は僕の獲物だぞ……気安く触るな……!! 」


 誰が獲物だこの野郎。

 私は逃げられも倒せもしないからお前が作ったルールに従ってるだけだからな、 力がありゃ即ぶっ殺してたぞ。


 ヴォルフの言葉を聞くと、 吸血鬼は静かに笑い始めた……そしてヴォルフへ憐れみの眼を向け、 バカにした様に喋り始めた。


「どこかのお偉いさんか何かなのか? 貴様は。 そうだとしても、 獲物の血を吸い尽くせてもないとは……名が汚れるな。 この女の処女はお前が奪ったが、 中はこの俺が奪ってやろう」


 ちょっと待て、 気持ちの悪い言い方をしてんなこの野郎。

 誰の何がいつ奪われたって? そして誰の何を奪うって? おい、 本当に消されたくないんだからやめろよな。


「くそっ! 凌菜ちゃんゴメン、 僕の能力を……」


「え……? 」


 ヴォルフの身体は少しずつ妖気を放って行く……とても気持ち悪く、 吐き気がする程の妖気だった。

 眼は黒目と白目が反対になり、 ドス黒い血の様な色をした羽が生え、 牙が太く大きくなり……爪が鋭く伸びた。


『あれが……ヴォルフの本当の姿……』


「僕の能力を完全に解放するしかない……」


 喋り方は静かになったが……放たれる殺気と凍りそうな程冷たい目つきは、 最早ヴォルフではなかった。

 私の事も殺してしまいそうな程……。


「ヴォ……ルフ……? 」


 私は初めて見るヴォルフの恐ろしい真の姿に身体の震えが止まらなかった。



 怖い──。



 この吸血鬼よりも圧倒的に恐怖が刻まれて行った私は、 自分でも思ってもいなかった、 最低な言葉が口から出てしまった……。


「た、 助けて……」


 私がその言葉を向けたのは、 ヴォルフでなく吸血鬼に対してだった……。

 早く逃げたい……殺されたくない……今はヴォルフの方が恐ろしく感じる。


 吸血鬼は口元を緩め、 私の頭を撫でる。


「そうか……恐ろしいよな、 あんなもの。 お望み通りこの場から逃がしてやろう」


 吸血鬼にそう言われると、 私は我に返ってヴォルフの方を見た……そこには、 眼を見開き失望した様な顔をする彼が居た……。



「凌菜……ちゃん? ……」


「ヴォ……! 」


 私が彼の名を呼ぼうとしたと同時に吸血鬼と共にどこかへ消えてしまった──。


 せっかく……仲良くなれて来たのに……守ろうとしてくれたのに……私は最低だ。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「ここはどこだよ」


 吸血鬼に私は地下の迷宮のような所へ連れてこられていた。

 壁はレンガの様な物で、 でも何か違う気がした。

 廊下には一定間隔で壁の上の方にロウソクが1本ずつ設置されているが、 溶けてる様子もなく永久的な物にも見えた。


「ここにいろ、 そしてコレに着替えておけ。 3分以内に着替えなきゃそのままする」


「……は? 3分って……」


 吸血鬼が渡して来たのは血で染まった様な色の丈が長いドレスだった……。

 これを着て何人も血を奪われて来たんだろうと思うと、 また身体が震え出した。


「とりあえず着替えるか、 死ぬ前にドレス着れて良かったぜ……血の色だけどな」


 私は花嫁になったとでも考えて、 そのドレスを着た。

 ドレスには私の身体を呪いで縛るかの様な言葉に出来ない重みがあった。


 着替え終えると、 すぐに吸血鬼が入って来た。

 そして私の事をじっくりと見る。


「終わった様だな。 聖女と言うのもあってか……良く似合っている。 今からより美しくなれるぞ」


「そりゃどうも」


 私は心ここにあらずと言った感じだった。


 さっきのヴォルフの悲しそうな顔が頭に浮かんで来ると同時に、 遊園地へ行った時の楽しかった場面が走馬灯の様に脳内を流れる。


『ごめんヴォルフ……』


 ────。


 私と吸血鬼は教会の様な場所へ行き、 面と向き合う。

 吸血鬼は私の背中に手を置き引き寄せると、 首に歯を立てる……。

 とても乱暴で、 痛かった為どれだけヴォルフが優しいのかが手に取るように分かった。


 それを想い眼を閉じると、 私の瞳からは涙が一粒零れ落ちた……。


『皆さようなら……』


 そう思った瞬間、 脳を揺らす様な巨大な破壊音と共に教会の壁が砕け落ちた。


「言っただろう……その娘は僕の獲物だって。 放せ、 彼女に触れる事は許さない。 死に値するぞ……!! 」


「ヴォルフ……!! 」


「クク……来たか」


 ヴォルフは私の方を先程とは全く別の温かい瞳で見つめて来た……そして、 笑顔で口を開く。


「ごめんさっきは。 怖かったよね、 これが僕の真の姿なんだ……でも、 君を守る為ならどんなに醜い姿にでもなってやる。 だからもう……怯えないで」


「ヴォルフ……」


 私は彼の言葉に胸が苦しくなったが、 この時私はそんな事を気にもしていなかった……。

 後々この感情は2人の関係を大きく変えていく事も知らずに。


「もう、 怖くないよ。 ヴォルフ、 私こそごめんね」


 私は涙を流しながら彼に言うと、 彼は笑顔で首を振った。


「さて、 その娘を返してもらうよ。 行くぞ吸血鬼・マルス!! 」


「俺の事を知っていたか……流石だな。 聖女の血は俺が頂く……!! 」


「え……! 」


 マルスと言うらしい吸血鬼は勢いよく私の首の下辺りを噛んできた。


「いった……!! 」


「たぁ! 」


 ヴォルフはマルスが私を噛んでないと思ったのか、 そのまま蹴り飛ばした、 おいイテーよ、 どうしてくれんだ肉千切れたかと思ったぞ。


 マルスはフラつきながら立ち上がり、 不気味な笑みを浮かべている──肩に違和感……! 吸われた!


「ヴォルフあいつ……! 」


「分かってる……! けど、 君の血なら僕の方が多く吸っている! 」


 そうだった……けど、 1度戦った時と同じく、 ヴォルフは私に気を使いながら戦わなきゃならない……!

 大丈夫なのか!?


「ふふふ……これからの俺から女を守れるか……? 」

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