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300年 吸血鬼ごっこ  作者: ☆夢愛
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第19話 〜本領〜

 そろそろ五分経つんじゃないだろうか? 待っても待ってもロンドミゲルは現れない。待って? 帰ったとか言うなよな? 流石に無いだろうけど。

 木の陰に隠れているから飛んでる状態じゃ私達のことを簡単には見つけられないだろうし苦労はするだろうけど、この林に入った事くらいは分かるだろ。

 そういえばアイツさっきも誘い込みに乗らなかったな。つまり警戒心が強いってことだからそう簡単に待ち伏せ攻撃を食らってくれる訳がないんだ。この策は失敗かもしれないぞ。

 自分が痺れを切らして出て行った所で瞬殺される可能性も充分あり得る。ここはじっと待つしかないかな。


「来ませんね、ロンドミゲル」


「そうだな」


 来る訳がない。場所が分かってるなら上空からここら辺を見下ろしてる事だろうな、そして出て来たところを狙って来るはずだ。

 ヴォルフが来れない間は自分達で何とかするしか無いと思ってたけど、これは想定外だったな。あんな戦闘狂っぽい奴なのに慎重さがあるなんて。

 またか、どっちかが囮にならなきゃ動かないぞアイツ多分。


「香恋、私が少し外に出るから、来たところを狙ってくれ」


「ダメですよ、私が強い訳でもないのにそんな事したら無駄死にするだけです。そして私も殺されますわ」


「じゃあどうすんだ? いつまでもこれじゃ……」


「このままヴォルフさんを待つ方が得策かと」


 仕方ないな、ヴォルフが来るのを待たなきゃダメか。つってもアイツさっき見えない程遠くに吹き飛ばされてたから勝ち目なんて一切無ぇと思うけど。

 私達以外に誰もいないってのが完全に分かったら、もしかしたら警戒なんてせずに堂々と入って来る可能性もある。確かにそうだ、私達なんて警戒するに当たらない程弱いんだから。

 吸血鬼にとって人間は大した敵になり得ない。昔の人達が押されても対抗出来ていたのは大砲や重火器などを持ち得ていたからの可能性が高い。それに洗練された戦士もいただろうし。

 だけど私達もSPの人達も銃撃隊も全員普通の人間だ。戦士なんかじゃない。

 私達側で唯一警戒されるとしたら同じ吸血鬼のヴォルフだけで、そのヴォルフを瞬殺出来るなんて分かっちゃったら躊躇いなんか少しも持たなくなるに違いない。警戒する必要が無くなるからな。


「絶対に油断すんなよ香恋、いつ来るか分からねえから」


「凌菜さんこそですよ。私は接近されても何とかバットでぶん殴れますけど貴女は違うんですから」


 その通り。私が所持しているのは外したら大きな隙が出来るショットガンらしき銃。倒れた銃撃隊の人の横に落ちてたのを拾ってきたんだ。弾は五発。

 普通、初めて銃なんて持ったら多少恐怖とか重いなぁとか思うんだろうけど、全然気にならなかった。ロンドミゲルの方が恐ろしいからな。私的に。


 泉に映る影がある。恐らく空中を飛んでいるロンドミゲルの影だろうけど、その動きを見る感じもう既に場所がバレてるみたいだ。少しも一定の位置から動こうとしないから。

 反対側、林の外側からヴォルフが走って来るのが見える。無事だったみたいだな。

 少しでもヴォルフが警戒されているなら、ヴォルフに近付いた方が生き延びれる確率があるだろう。私は香恋に合図し、林を飛び出した。


「ヴォルフー! 来るぞ!!」


「分かってる!」


 私と香恋はヴォルフの数メートル後ろで武器を構える。そして前方では大きな翼を持つ者同士が、業風を起こし激突した。

 どんな風が来ようと目は逸らさずに二人を見る。激突時、押されたのはやはりヴォルフだった。女性の体躯なのにパワーもヴォルフより上だとは……。


「凌菜ちゃん達、何で逃げないの!?」


「逃げればまたお前が吹き飛ばされて追いかけられるだろ! 正直超疲れたんだよ!」


「なるほどね!」


 戦闘中に何つー会話してんの私達はよ、危機感無さすぎじゃね? まあ、そんな会話の中突っ込んで来るような器用な奴じゃないのはさっきまで分かってるから大丈夫だ。隙が出来れば確実に狙って来るなら、さっきの林の時点で私と香恋はやられてるだろうからな。

 さて、ここからはヴォルフがアイツ相手にどれくらい持ち堪えられるかを確認しなきゃ。すまん。


「ヴォルフ君、今度は楽しませてね?」


「んな余裕無いよ!」


「ですよね」


「皆さんアホなんですか?」


「ですよね」


 多分私かヴォルフがアホなんだと思うよ? うん。ヴォルフは本心丸出しで叫んでるだけだし、私ツッコミ入れたりコメント付けたりしてるだけだから。あ、私が一番アホなのか。

 吸血鬼とは思えない激しい翼や爪での打ち合いだけど、やはりロンドミゲルの方が圧倒してる様にも伺える。力の差なのか、翼の大きさの違いによる重さの差なのかは分からないけど。

 でも何だ?銃弾さえ殆ど当たらなかったロンドミゲルが普通にヴォルフの打撃は食らってる。そっちの方が遅いし避けやすいと思うんだけど。


「くっ! 蛇がめちゃくちゃ邪魔!」


 ヴォルフは蛇髪による攻撃にイライラし始めている。その気持ち何となく察せるわ。相手するのはロンドミゲル本体なのに時々蛇が突っついて来るんだもんな。うぜぇよな。

 サングラス越しにだけど、いっしゅん、ロンドミゲルと目が合ったように感じた。いや、思い切り目が合った。

 私を石にしようとでもしてんのか? 残念だけどゴルゴンの石化能力は目を直接見なきゃ大丈夫なんだよ。説明の通りで助かったぜ。何せ吸血鬼共は全然別だったからな。


「お前……! まさか!!」


 何かヴォルフが言ってるけど、激突音と風の音で上手く聞こえない。ただ分かる事は、そろそろヴォルフが一旦力尽きてしまうってところかな。ヤバいぞ。

 私と香恋はヴォルフ達から少しずつ、一歩ずつ遠去かって行く。この時、私達が向かって行く方向からこちらへ向かって来ている人間がいるのに気付いたのはロンドミゲルただ一人だった。


 私達が駆け出すと同時に吹き飛ばされるヴォルフと、その私達とすれ違う幼馴染み(・・・・)。脚を停め振り返るけど、ロンドミゲルの罠に思いっ切りハマってしまったらしい。


 そこに在ったのは私が一番良く知る人物の石像だった────。


「由……奈?」


「嘘……!」


「凌菜ちゃん香恋ちゃん逃げて!!」


 由奈を石に変えた張本人は次に私のサングラスと取りに突っ込んで来た。だけどそれを香恋が鉄杭金属バットで殴り防ぐ。助かった。


「凌菜さん! 早く!!」


「お、おう……!!」


 由奈が石にされた……石にされてしまった。私の幼馴染みが、私の大親友が石の像と変わってしまった。

 私は脳内にその姿が繰り返し映し出される事により無駄に酸素を使い、涙を流すことも止められずにただひたすらスタミナが尽きるのも気付かずに走り続けた。

 由奈を守れなかった。由奈を──。


 暫く走った先に聳え立っていたビルの中に忍び込み、身を隠す事にした私達は、お互いスタミナが尽きる寸前だった。


「由奈……」


「凌菜さん、らしくありませんよ。貴女がそんなんじゃ由奈さんが可哀想です」


「んなこと、分かってるけどよ」


 分かってる。分かってても辛い気持ち哀しい気持ちはどうにも出来ないんだよ。あのまま由奈が元に戻らなかったらどうしようって、不安なんだよ。

 きっと私は由奈が居なかったら生きてこれなかった。親なんていないから、いつも優しく明るく私を気にかけてくれた由奈に救われてたんだ。それで生きてこれたんだ。

 でも由奈がいなくなったら私は一人だ。それよりも、由奈が居なくなる事が何よりも恐ろしいんだ。


 『守れなかった』と自責に埋もれていく私の肩を香恋は強く──殴った。痛えよ。


「らしくない、って言ったんですよ? 凌菜さん。貴女らしさとは何ですか? 思い出してください!」


「私らしさ?」


「どんな相手にも油断はしない、本当に負けるまで勝つ方法を考える。それが司導凌菜じゃないんですか! 今の貴女はただのヘタレですよ!」


「酷いなおい」


 でもそっか、私はヴォルフが来た時もマルスが来た時もガルドが来た時も、他の二体が来た時も本当に諦めた事なんて無かったんだ。何か勝つ方法を探してたんだ。

 でも今は心の支えだった由奈がやられたから……。


「良いですか? 貴女は由奈さんを守れなかった訳じゃないんです。貴女を由奈さんが守ったんですよ! 分かってください、由奈さんの為に何をしなくちゃならないのか!」


 由奈が私を守ってくれた。だから私は今生きてるんだ、そっか。ちょっと待て由奈先に気付いてたのか、すげぇなおい。

 んで、何だっけ? 私が由奈の為にやらなくちゃいけない事だよな。それはこのまま逃げるだけじゃない。逃げるけど。


 ロンドミゲルの事を葬ること。だよな、由奈。


「よし、分かった香恋。これからどうするか考えよう」


「凌菜ちゃん、ロンドミゲルが死ねば石化した人達は元に戻るよ。ただちょっと面倒な事になったかもしれないしなってないかもしれない」


「うおお!? お前いつから……テレポートか。てかどっちだハッキリしろよ」


 急に来るなよな本当にびっくりするからよ。忘れてたけどコイツも二つの特殊能力(キャプシャル)持ってんだったな。つぅか私自分も持ってんの忘れてたわ。今は全然役に立たないけど。

 私達はヴォルフに連れられビルの外へ出たが、途中で管理人に出会って怒られた。そしてその管理人は石化した(・・・・)


「何だこれ……」


 外は全体真っ黒っつぅか灰色っつぅか、とにかく石の町と化していた。

 ビルも、人も、家も、学校も、動物も電車も何もかも? 空は違う。当たり前か。


「ロンドミゲルが、暴れ出したんだ。さっきまでも充分暴れてたけど」


「そうな」


「でもこれで、私達バレバレですね」


 そうなんだよ、バレバレなんだよ。全体石色なら石になってない私達がすぐにバレるって訳なんだ。

 例え灰色に自分達を染めたとしても動いてるからすぐにバレるだろうし、そもそも聖女は居場所が分かられてしまう。本当に面倒な相手だなアイツ。

 でもこれでどっちにしろ正面から堂々とやり合うしか無くなったんだ、あまり変わらない。

 アイツを倒せば皆は戻る。なら、勝てばいいだけなんだ。私は大して役に立てないけど、待ってろよ皆。


 由奈、クラスメイト達、先生、SPの皆さん、ビルの管理人さんも皆待ってろ。すぐ、解放するから……!


 ──すぐ近くにスタジアムがあるんだけどさ、そこも勿論石化してる。だけど広いから戦いの場としてうってつけじゃね? そうでもない? 知らねーよ戦いなんてよ。

 とにかくここでロンドミゲルを待つ。


「来い!! 私達はここだアァアアア!! ……ん? 鏡発見。これ、使えんじゃね? 上手くいけば……!!」


「来たよ、ロンドミゲル」


「ふふふ、まるで決戦場だね。頭打ったら凄く痛そう」


 激しく同感。絶対痛いよね、下も壁も天井も全てが石だから。お前の所為でなこのヤロー。

 中心に立つヴォルフとロンドミゲルを遠くから見て、私はショットガンを構える。実はさっき撃つ練習したんだけどさ、銃って扱い難しいね。超怖え。


「これで終わりだ、クソ吸血鬼」


「ええ!?」


「おめーじゃねぇよ」

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