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300年 吸血鬼ごっこ  作者: ☆夢愛
16/24

第15話 〜変わった心〜

 おはようございます皆様。まあ、更新時間は夜中なんだけど……って私は何の話をしてるんだろう。

 今日も張り切って学校学校〜って思ったんだけど貧血で休むことにした。そりゃそうだほぼ空にされたんだもん、よく生きてたよ。

 吸血鬼二体に襲われてから3日経ったんだけど、ヴォルフは毎日お見舞いに来てくれる。お前も寝とけ。

 そういえばアイツ、学校では隠し事が失くなった分なのか他の吸血鬼が恐ろしかったからなのか極普通に過ごせてるらしい。生徒達も気にしてないそうで。

 良かったじゃんな、ヴォルフ。


 朝飯食べながら思ったんだけど、香恋は今どこに居るんだろう。最後まで見なかったな。

 あの吸血鬼に血を吸い尽くされてしまったんなら、もう生きてないかも知れない。それは悲しいことだ。

 私と同じで前世に会えてれば帰って来れるのかも知れないけど、確率は低いだろうなぁ。成仏してるかも知れないし。


 もう、何の悪い気配もしなくなったこの街だけど、吸血鬼達はいなくなったんだろうか。それはそれでラッキーなんだけどさ。

 でもまだ残ってるんだとしたら、油断は絶対にできない。したら負けだ。もうやられまくってるけど私。


「あ、香恋電話出ないかな? 出ないか?」


 とりあえずかけてみたところ、応答は無し。だとしたら本当にやられてしまったのだろうか。

 私は黙祷し、手を合わせた。これで生きてたら笑えない。


 家のチャイムが鳴ったけど、ヴォルフかな? まだ朝だけど今日は学校行ってないのか? 行くなら行けよな。

 つうかアイツ家無くなってた筈だよな、どこに住んでんだ今。


「はーい、ヴォルフお前何で学校行ってない……あれ?」


「凌菜さん、私ヴォルフさんじゃありません」


「香恋!? 生き返ったのか!?」


「人を勝手に殺さないでいただきたいのですが」


 ──香恋はあの吸血鬼達と出くわしてはいなかったみたいで、実は5日前から旅行に行ってたらしい。学校来いよ。

 良かった殺された訳じゃなくて。早とちりするところだったよ。

 ん? ちょっと待て? じゃあ一体目の吸血鬼が言ってた奴って、誰のことだ? 香恋がやられてないなら一体誰を連れ去ったってんだ?

 一つ、疑問が出てきてしまったけど、今はとにかく香恋の無事をヴォルフに伝えよう。


『そっかそっか良かったよ。じゃあ僕は授業あるから』


「え、ああ」


 何だよ素っ気ないなあのバカヴォルフ。そんなに私と話したくないのか? おい。

 朝風呂に入りながら、ふと想像してみた事がある。

 例えばこの街に居る吸血鬼達が私を追いに来ないのは、もしかしたら今が貧血だからの可能性もある。だとしたら数日後確実に狙いに来るだろうけど、勿論一体じゃない筈。

 そうだったら絶対絶命じゃね? 私達全員。

 自分で考えたのに、物凄く寒気がした。本当にそうだとしたら、勝ち目はないから。


「凌菜さん、一緒に入っても?」


「よろしくありません」


「失礼します」


「話聞いてた!?」

 

 結局香恋と二人で狭いお風呂に入ってる訳なんだけども、何だろうな、女同士でいるのも苦手なんだよ私。

 異常な程密着してくる香恋は、耳元で小さな声を出した。


「凌菜さんの別肉体……廃棄しておきましたから」


「何やってんのお前!?」


「もう隠す必要は無いのでしょう? その上ヴォルフさんと交際を始めてるんだとしたら、女を磨くしかございませんわ」


「はぁ!?」


「まあ無理でしょうけど」


「何だとコノヤロウ」


 てか誰がいつヴォルフと交際を始めたってんだ? 確かに3日前一か八かで告白はしたけど、付き合う気は一切なかったんだぞ。

 そもそも今まで男として生きてきた人間が急に男と付き合えると思うんじゃねぇぞ。女の子が良いって訳じゃないけど。


「凌菜さんは女性としての魅力が無いので」


「おい」


「色地がけしかないのではないでしょうか?」


「しねぇわ」


「あ、必要無いですね。ラブラブですもんね」


「お前何なの? 本当」


 私に女の子としての魅力が無いのは百も承知だけど、そんなハッキリと言わなくたって良くない? ねえ。

 しかも何で行き着くのが色地がけなのかな? それって最終手段じゃねぇの? 私どんだけ終わってんだよ。

 あとラブラブじゃない。ありゃただの変態だ。

 そんなに私達の事が気に食わないのかこのお嬢様は? 私達が一体何したってんだよお前によ。


「リア充全部爆ぜろ」


「それが本心か。つぅか口調!!」


「嫌ですわ、つい本音が」


「お前の本心ヤベェな!」


 恐いよこの子何本当。お嬢様が飛んでもない言葉飛んでもない口調で放ったんだけど!? マジで恐ろしいよ。

 つぅかどんだけカップルとか気に入らねぇんだよコイツ。前も彼氏が欲しいとか言ってたけどさ。

 あと私とアイツは恋人じゃねぇから。


 背後から抱きついて来てるお嬢様の熱気と言うか殺意と言うか、とにかくオーラが半端じゃないので急ぎお風呂から脱出した。勿論お嬢様も出て来る。

 今思ったら、香恋結構美人な筈なのに何でモテないんだろうな? もう皆本心に気付いたとか? だとしたら凄いな。


「あれ? 知らなかったんですか? あの学校カップルばかりですよ。けっ」


「やめなさい。てかマジかよおい」


 知らなかったよ知らなかった。つぅか気付かなかったよ本当に。

 カップルばかりねぇ……道理で男女一人ずつのペアとかよく居る訳だ。そういう事ね。

 ただ香恋よ、そこに私とヴォルフを入れるんじゃない。私達は完全潔白純粋な関係だから。ただの友達擬きだから。

 だって吸血鬼と聖女が友達ってよくよく考えると訳わからないからね。騙されてるとしか思えないからね。


 んっと、カップルだらけってことはまさか由奈にも彼氏がいたりする!? ちょっと気になるので聞いてみよう。

 多分由奈は私に隠し事をしようとか思わない筈。


『え? 彼氏? 要らないよそんなの。りょーちゃんいればそれで良いもん。あ、でもりょーちゃんにはヴォルフ君がいるんだったね』


「ヴォルフはただの友達擬きだ」


『それただのじゃない』


 でもこれでわかったんだけど、由奈は私が一番ってことなんだな! やったね。ありがとう由奈私もお前が一番だよ! えへへ。

 だけどちょっと聞き逃さなかったんだけど、彼氏がいない(・・・)んじゃなくて、要らない(・・・・)は色んな奴等可哀想な気がするからやめてあげて。しかもそんなのて。


 香恋がまた頬を膨らませて不貞腐れてるけど、恐らく『余裕あんなコノヤロウ』ってところだと思う。

 まあ事実由奈に言い寄る連中は多いし、そもそも超絶美少女なミルフィと顔殆ど一緒だし分かるわ。

 見ただけなら清楚で優しそうなイメージあるけど、あの子は私以外に優しくないからね。別に清楚でもないし。アホだし。

 まあバカの私が言えたもんじゃないんだけど。



 ──夕方になってヴォルフに公園に来い、と呼び出された。血が足りないのに鬼ごっこを始めるとか言う訳じゃねぇよな。

 公園に恐る恐る脚を踏み入れると、ベンチの上で目を閉じてるヴォルフを発見した。

 端正な顔立ちに一瞬ドキっとしたけど、アイツは吸血鬼なんだ。油断はしちゃいけない。


「何だよヴォルフ、何の用?」


 少し驚いてから私を見て笑顔になったヴォルフからは、邪悪な気配は感じなかった。てか寝てたんかい。


「やあ、凌菜ちゃんごめんね急に。貧血なのに」


「別に良いけど」


 ヴォルフに誘導され、私も隣に座る。改めて見ると体格の差がハッキリ分かるなぁ。

 まあそもそも男と女だし、そんくらいの違いはあるか。あるわな。


「僕は、君の事がとても大切なんだ。多分、世界で一番」


「は!? き、急に何言ってんだよお前! お前にはミルフィが居るだろ!?」


 何の話かと思ったらそういう話かよ! 今後の作戦とかでも練るのかと思ったんだけど全然違った。

 私が真っ赤になって否定すると、ヴォルフは私の眼を見て顔を横に振る。


「ミルフィ王女は、僕が血を求めた時の犠牲者でしかなかった。でも君は僕に鬼ごっこで勝ったのに血を分け与えてくれた。吸血鬼相手にだ」


 それは、嫌に苦しそうにしてるからだし……。


「その時からかも知れない、僕は君に恋したんだ。血なんかじゃない、君を愛しているんだ」


「あ、愛!?」


 全身が火照っていくのが分かる。顔が熱くなっていく。こんな本気の眼で、そんなこと言われたら……何ていうか、凄く恥ずかしい。

 だけど、凄く、嬉しくもある。

 よくそんな恥ずかしい台詞をそんな真剣に言えるな、私だったら絶対に無理だよ。


「だからもう、君の血は要らない」


「え?」


「変わったんだ、心が。君を大切にしたいんだ。その為には時々血は必要になるだろうけど、君の血には頼らない事にする。鉄剤と人参で我慢する」


「何でその二つ」


 つぅか私の血を吸わなきゃお前大して強くないだろ!? 失礼かもしれないけど。

 私を大切にしたいからって血を吸わないってのは本当にありがたい事なんだけど、それで二人共死んだら元も子もないんだからな!? 死んだらそもそも何も意味ないし!


「じゃあ、条件だヴォルフ」


「ん?」


「お前は私を守れ、皆も守れ! この街を守ってくれ。その為なら私の血をあげる。無理する必要なんて無いんだからな。そして絶対死なないこと、これが絶対条件だ」


「ええ……」


「分かったか!?」


「う、うん。……仰せのままに、凌菜ちゃん」


「ふん」


 キザなキャラクターみたいに私の手の甲に触れた唇は暖かかった。

 その満開に咲く笑顔が、私の心を掻き混ぜていく。私の心を揺らしていくんだ。


 好きだよ、ヴォルフ。これからもずっと────。

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