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300年 吸血鬼ごっこ  作者: ☆夢愛
12/24

第11話 〜誤解してたのかな?〜

 ハローエブリワン。私は司道凌菜。男装してる女子高校生で前世は300年前の聖女・ミルフィ。

 今年で17歳になるんだけど、そんな時突如300年の時を経て聖女である私の血を吸いに来た吸血鬼・ヴォルフと一週間に一度鬼ごっこをする羽目になった。

 次第に私はヴォルフに気を許すようになり、ヴォルフも私を他の吸血鬼から守ってくれる。

 これってさ、何かおかしいよね────。


「凌菜さん、上の文は何ですか?」


「あらすじ的な」


「あらすじ的なものですか」


「はいそうです」


 彼女は詩乃香恋(しのかこい)

 私と同じく前世は聖女で、今は一緒に行動する事にしてるお仲間さんかな。

 実はお嬢様。少しも隠してないけどね。


 メインキャラは私以外秀才です。


「凌菜ちゃん、香恋ちゃん、一緒にご飯食べない?」


「あ、おう。行こうぜ香恋」


 私達が三人でご飯を食べるのは、吸血鬼が来てもヴォルフが守ってくれるように。

 ただ、大体タイミングが悪くヴォルフが居ない時に襲われる事が多い。まあ結局は助かってるんだけど。


 前回、ガルドのせいでダメになった別肉体は新しいのを即日購入し、今もまだ男装をして過ごす。

 だけど吸血鬼達は皆私が女だってすぐ気付いちゃうんだよね。悲しいけど。


 タコさんウィンナーが好きで、私は最後まで残すんだけど、今回は早めに食べる。吸血鬼来たら食べれないし。


「そう言えば凌菜さんはいつまで男装をしたままなのですか?」


 膝に落ちてきた葉っぱを屋上からひらりと落とし、香恋が問いかけてきた。


「何で?」


「貴女には大事なお友達がいるでしょう? その方にも多少の苦労がかかっていると思うんですよ。他の人と同じ部屋で着替えないのは何故? など、聞かれている場面を何度か目撃致しましたの」


「そっか……」


 確かに私の幼馴染みである由奈には苦労をさせてしまっている気がする。

 私が女って事実を隠してる所為で、他の人が確認の為に寄って行くのは由奈だから。

 でも、ちょっとだけ理由があるんだよ……。

 男に生まれたかったってだけじゃないんだ。今は。


「なぜ男装に拘るんですか? なぜ女性じゃダメなんですか?」


 不機嫌そうな眼差しを向けてくる香恋に、申し訳なさそうに背を向ける。


「私は、聖女だからなるべくバレないように……だよ」


「そうですか……まあ今はそれで良しとしておきますね。ですが、それで後悔しないかどうかは分かった事じゃないですから」


「うん」


 恐らく嘘をついてるのはバレバレ。でも本当にこの姿をまだ暫く辞めることは出来ないんだよ。

 香恋……そして由奈も皆、ごめん。もうちょっとだけ我が儘でいさせて。


 次の授業は体育らしい香恋は先に教室に戻ったけど、私とヴォルフは黙り込んだままご飯を食べる。

 何で喋らないのかなコイツ。


「ぐぅ〜」


「ぶん殴るぞお前」


 何で屋上みたいな肌寒い場所で座りながら寝れるんだよコイツ。しかも弁当食べながら。

 一発叩いたら起きたので、さっさと食べるように急かす。


「凌菜ちゃんさ、本当は由奈ちゃんを守りたいんでしょ。だから男らしくいようと思ってその格好なんだよね」


「はぁ!? 何で急にそんなこと言うんだし!!」


「いや、凌菜ちゃん優しいからそうかなって」


 今、コイツが言ったことは実は図星で由奈の事を守りたいからなんだ。

 由奈は身体が弱いから、何とか幼馴染みの私が助けてあげないといけないんだ。そう勝手に思ってる。

 だけど私も肺が弱いから常に酸素マスクを装備しなきゃならないし、激しい運動も出来ない。

 それでも由奈を守り抜くには見た目で威圧することくらいしか出来ない。でも私は女だから誰もビビらないんだよね。

 だから男装をして、別肉体も着けて強い自分を演じてる。まあそれも吸血鬼相手には全く意味無いんだけどね。


 私が俯いてると、重ねた両手にヴォルフの右手が覆うように乗せられる。

 大きくて、ゴツゴツしてて、とても暖かい手。


「もうそんなに自分を追い詰める必要は無いんじゃないかな。凌菜ちゃんが由奈ちゃんを守りたいって気持ちは僕が君を守りたい気持ちと同じだから分かる。だけど彼女もそろそろ一人で動ける筈だよ」


「だけど……」


「今は僕もいる。君だけじゃないんだからさ」


 わかってる。でも絶対に大丈夫なんて保証は無いだろ? もうさ、二度とあんな思い(・・・・・)したくないから。

 でも……そうだね。


「私はまだこの姿は解けないよ。だけど、私はお前のこと誤解してたかも。もっと残酷で卑劣な奴だって思ってたけど、違った」


 私を助けてくれる。私を守ってくれる。私の支えになってくれる。私のそばにいてくれる──。

 私はコイツに恋したんだ。

 きっと────。


「僕は……外道だよ、酷いやつさ。吸血鬼なんて皆そうなんだよ」


 少し哀しそうに微笑むヴォルフは、自分の本心を押し殺してるようにも見えた。

 何でなんだろう、こいつは良い奴なんだ。本当に他の吸血鬼とは全然違うんだ。

 私にとってはそうなんだよ────だから、言ってやった。


「ふざけんなよ、何自分悪者にしようとしてんの。私からしたらお前は良い奴なんだよ! 他の吸血鬼とは違うんだよ! 分かれ!」


 ああ何でだろう、何で私はこんなに口下手なんだろう。つかバカなんだろう。

 もっと優しい言い方が出来た筈。もっと良い言葉を掛けられた筈なのに……バカだなぁ。

 そんな私の気持ちでも、伝わって欲しかった。

 こいつに、もっと自分を大事にして欲しかった。


「私にとってお前は、由奈の次に大切な奴なんだよ。好きなんだよ! バカ!」


「え?」


 思いを告げただけだ。これで良いんだ……ちょっとキレてる様にも聞こえちゃったかも知れないけど、私なりの伝え方だからこれで良いんだ。


 私は少し照れちゃったからヴォルフの方を見ず、別の方角へ視線を向ける。

 だから抱きつかれたのにすぐ反応出来なかった。


 多分、避けなかったけど。


「何して…… ︎」


「僕のことを大切なんて、初めて言われたんじゃないかな多分」


「いや知るかよ!」


 自分が言われたことくらい自分で覚えとけよ! コイツは本当にバカだろ!

 まぁ、照れて何も出来なくてパニクってるだけの私よりは数段マシだけどさ。


 それに抱きついてきてるヴォルフの事を、何か、ちょっとだけ可愛く見えてきた気がする。

 ていうか、愛しく思えてくる。気がする。


「良いの? 隙があれば吸っちゃうよ?」


「嘘つけ。今隙だらけなのに吸おうとしてねぇだろ」


「え? 好きだらけ? 照れちゃうなぁ」


「んなこと言ってねぇだろアホか!」


 違うよ、アホは私だよ。認めたくないんじゃなくて、認められないだけなんだ。

 もっと時間経ったら……あとそこそこ時間経ったら心の準備出来ると思うからさ、その時にまた伝えさせてよ。

 精一杯の、私の気持ちを。



 屋上で二人……端から見たら抱き合ってる様にも見えちゃうかも知れない体勢の私達だけど、ただ抱きつかれてるだけっすから。

 そして二人が見つめ合ってる中────鳴るチャイム。


「授業、遅刻だ」


「あ、怒られちゃうから急いで行こう」


 差し伸べられた右手に同じく右掌を乗せ、階段を駆け下りる。危ないので真似しないでね。






 ────ここから6㎞離れたビルの屋上から二人の状況を観察していた者が二人いた。

 背中に漆黒の翼を広げる、禍々しい影。


 物語は、中盤に差し掛かる。

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