表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
300年 吸血鬼ごっこ  作者: ☆夢愛
11/24

第10話 〜vs.ガルド〜

 とりあえず帰って来れたのでヴォルフを捜す。それよりまずは治療したいし休憩したい。


「凌菜さんはここで休んでいてください。私が捜してきますわ」


「あ、サンキュー」


 ……正直言って今歩くのはかなり辛い。それは香恋だって同じ筈なんだけど、多分手も足も傷だらけの私に気をつかってくれたんだろう。

 でも本当に痛いからね、特に手。

 消毒したほうが良いな、洗いに行くか。勿論ガルドには警戒しながら。


 休んでいたのは神社で、その近くに公園があるからそこで手を洗った。

 大して綺麗な水とは思えないけど、水溜りで洗うよりは何倍もマシだと思う。我慢しよう。

 てか地面濡れてるしコンクリートも水溜まりが出来てるけど雨でも降ったんかな。そんな時間経った?

 確か連れてかれる前が4時台だったよな。


 公園のど真ん中に聳える時計を確認すると、6時5分だった。すんごい時間経ってるな。

 本当だ辺り暗いよもう。気付くの遅いな。てか香恋大丈夫かよ。


 ん? こんな時間にヴォルフがその辺歩いてると思うか? 無いよな。

 メールして香恋を呼び戻した。危険危険。


「ヴォルフは多分もう家に帰ってるよ、どうする?」


「私達も帰りますか……あ」


 ふと自分の身体を見つめる香恋にどうしたのか聞いてみると、やはり汚れに気が付いたみたい。

 その身体じゃ家に入れねぇよねー。お嬢様だもんね。

 私は頭を掻きながら香恋に手を差し出す。


「来いよ、うち。ちょっと狭いかも知れないけど、着替えも貸してあげるから」


「あ、ありがとうございます」


「別にいいよ」


 私は香恋の手を引き、自分の家へ慎重に向かった。

 勿論ガルドに警戒し続けたけど、捜していないのか遭遇する事なく辿り着けた。安心したよ。


 香恋は家にあがると、『狭い』とかの文句などは一切言わずにただただお礼を言ってくるだけだった。

 そしてお風呂に突っ込んだ。

 その間私は着替えを用意しとこうとしたんだけど、私と違ってアイツ胸あるからなぁ……ブラ無いや。

 は? 誰がぺちゃんこだし。違うし。


「凌菜さん、ありがとうございましたお風呂」


 バスタオルを巻いて歩いて来た香恋はまだ濡れてるから部屋には入れず、またお風呂場に連れて行った。

 んで着替えを渡す。


「傷、大丈夫か?」


「ちょっと染みましたけど大丈夫です。それに凌菜さんの方が大分酷いでしょう?」


「まあ私は大丈夫だけど」


 お湯を一旦入れ替えて私もお風呂に入る。うん、すっげぇ染みるわ。


「あれ? 凌菜さん私ブラジャーは無いのでしょうか」


「うん、ノーブラでいやがれ」


「えぇ……」


 ぺちゃんこって言うんじゃねぇぞ誰も。違うからな。小さめなだけだからな。

 ふと掌を返して見つめる。

 皮も剥けて、切り傷も出来てるし手首だって鎖の所為で傷だらけだ。

 裸足だったのもあって脚も痛いし……あ、忘れてた明日からどうやって学校行こう。

 別肉体も靴も無いんだけど……スマホもな。


 ヴォルフに説明したりしなきゃならないし、かと言って香恋一人を登校させるのも危険だと思うし。

 ……最初あんなに腹立つ奴だったのに今は全く嫌じゃないんだよなぁ、ヴォルフ。何でだろ。


「あ、凌菜さんもしかしてぺったんこ……」


「言ったなこの野郎」


 お風呂から上がり香恋と話し合って明日の登校は諦める事にした。

 ちょっと成績危ないけど、この場合仕方ないしヴォルフは多分気付いてくれる。

 ちょっと待て、家電でヴォルフに伝えりゃ良いんじゃね? 馬鹿か私。


『え!? 吸血鬼に!? ごめん気付かなかった!!』


「いや、うんまあ、気にすんな」


『今から向かうから! 30秒で!』


「いや実はまだお風呂出たばかりで……」


『10秒で向かうから!』


「じゃあな」


 コイツ本当に変態なんだろうな……。

 吸血鬼の癖に人間の裸見たいのかよ気持ち悪い。いや吸血鬼じゃなくても気持ち悪いけどな。

 さてと、急いで着替えないとな。


「来たよ!!」


「はーーーやーーーいーーー!!!」


 まだパンツしか履いてないんだけど!? しかも何で窓から入って来てるんだよコイツ! 間違いなく覗き目当てだ! 死ね!


「凌菜ちゃんがエッチぃ」


「クソセクハラ野郎死ね!」


「どはぁ!!」


 久々に杭付きバットでかっ飛ばす。

 そして窓の鍵を閉めてカーテン閉めて電気も消して即行着替えた。あのクソ野郎。

 着替えが終わり、ヴォルフを家に入れる。ちゃんと玄関からな。

 とっても厭らしい表情でジロッジロ見てくるヴォルフに目潰しをして部屋に引きずる。


 中では既に香恋も座って待っていた。


「ヴォルフさん、かなりの変態さんでしたのね」


「完全なる変態だよ」


「僕は凌菜ちゃんの身体目当てだしね」


「私の血な!」


「なるほど、真なる変態さんでしたのね」


「酷くない?」


 こんな感じのやり取りが続きそうだったので私がバッサリと切る。表題が違います。

 ヴォルフには今日私達の身に起こった事を大まかに話した。


「そんな卑劣な輩が吸血鬼にいたのか……許さないな」


「先程のお前の行為も卑劣だからな」


 ガルドの名前を出してもヴォルフはイマイチピンと来ないらしく、恐らく種族的には違うんだと思う。

 まあ聖女に興味が無いって時点で何となく分かるっちゃ分かるんだけどね。

 聖女の血を吸えば何だっけ? 不死身になれるんだっけか?

 違った。寿命延びるだけだったわ。


 そう言えば、前のマルスの時でも大苦戦してたヴォルフがそれより一回りもデカいガルドと戦って勝てるとは思えないんだよなぁ。

 こいつに言っても不安が安らぐ訳じゃなかった。ヴォルフにも悪いけど。


「今回の……あいつに十字架とか効くかなぁ」


 私がポツリと言うと、ヴォルフは首を傾げる。


「実際、僕を含めて吸血鬼が全員効く訳じゃないんだ。だから凌菜ちゃん達は何もしなくていい。きっと僕が倒すから」


「ヴォルフ……」


 ヴォルフの優しい笑顔に心が安らぎ、だけど胸が痛む。何か役に立ちたいんだけど……。

 何て考えていた為に気付くの遅れたけど、ヴォルフの右手は私の太腿に触れていた。勿論殴る。


「お二人はラブラブなんですね」


「は?」


 私が淹れたコーヒーを飲みながらボソッと言った香恋はつまらなそうにしている。

 誰がラブラブだ。コイツ只の変態だからな? 万が一私がコイツに恋してるとしたとしてもコイツは違うからな。

 私の血を吸いたくて私とヤりたいだけだからな。マジで死ね。


「僕は凌菜ちゃんが全裸で居たら襲わないって保証は絶対に無いかな」


「何の話をしてんだテメェは」


「私が全裸で居ても襲ってくれるような方は存在しませんわ。恋人が欲しいです」


「何の話をしてんだおめぇも」


 こんな奴等とこれからも上手くやっていけるかどうかと言われたら正直自信無いぞ。

 それに多分高校卒業しても一緒に居ることになるだろ? だって吸血鬼はまだまだいるんだもん。

 いずれ同棲する事になるかも知れないな……ヤダ。


 途中で眠くなった私は一足先に横になり、睡眠をとった。

 思ったんだけど、夜ご飯食べてないな。



 朝起きたら私を抱くようにヴォルフが寝ていた。目の前で。

 何か……何だろ。心拍数がヤバい感じになりました。

 いつもならすぐにぶん殴って引っぺがして外に捨てるのになぁ。何だろ。


 とにかく脱出して別の部屋に寝ていた香恋も起こす。


「じゃあ僕は二人が休むってモヨット先生に伝えとくよ。あと帰りにその湖に言って靴とか無いか探してくる」


「サンキュー」


 今思ったら私靴はあと一足分あるわ。どっちかっつうと別肉体の方頼むよ。アレ注文に時間かかるんだわ。あと高値。

 ……ヴォルフが居ない間は不安と恐怖でそわそわする。ガルドがこの家を見つけて襲って来るかも知れないしね。

 と思ったんだけど香恋は全く動じずにテレビゲームをやりたいと言い出す。緊張感を持て。


「私ゲームやるの初めてでして……楽しいですね、しゅーてぃんぐゲーム」


「まあ私も好きな方かな」


 二人でゲームしてる間も油断はせず、右側に杭付きバットを準備しておく。いや絶対に効かないけども。

 てか何だコイツ。めちゃくちゃゲーム上手いぞ。本当に初めてかよ。


 ヴォルフが学校に行くのは8時間くらい。それまで耐え続けなきゃな。



 ──ゲームを中断して昼食を買いに行った私は、勿論ちゃんと女の状態。

 いつもと目線が違い過ぎてバランスが取りにくくもある。


「ただいま香恋。香恋……?」


 返事が無い。寝てんのかな? と思ったんだけど、その直後脳裏にガルドの薄ら笑みが浮かび上がる。

 もしかしたら──!


 予想通りか部屋は荒らされており、香恋の姿は見当たらなかった。

 少し目を離した隙に……そんな、ヴォルフが帰って来るまでまだ4時間はあるのに。


 ふと目の前を見ると、電気で照らされた私の影はいつもより二回りも大きくなっていて────背後の気配に気づいた時はもう遅く、私は強い力で全身を拘束されてまたまた気を失ってしまった。

 油断するべきじゃなかった──。



 ──気がつくと今回は檻の中。辺りはジメジメしてて気持ちが悪い。

 そして私は下着姿。どんだけ脱がすの好きなんだよ吸血鬼共は。皆変態なのか?


 真横には虚ろな瞳をした香恋が体育座りで壁に寄りかかっている。何かショックでも受けちゃったのかな。


 足音がした方へ目を向けると、ガルドが立っていた。


「まさか脱出に成功してるとは驚いたぜ。おめでとうそしてお帰り──なんてな! ハハハハ!」


「うるせぇバカ! お前私達に興味無い癖に何で捕まえるんだよ! そして服返せ!」


 私が反抗してると檻の一部を握り潰し始めたガルド。多分、威圧してるんだと思う。

 そしてそれは成功。私は一瞬で竦んでしまった。


「他の吸血鬼と戦うのが楽しくてな。それにアイツ貴族だろ? どのくらい弱いんだろうな。んで、状況が変わった。テメェらの血を吸えば寿命が延びる上強くなれるらしいからな、いただくぜ」


「マジかよ……」


 檻の中へ踏込んで来るガルドから少しずつ後ずさって行く。間合いに入ったら終わりだ。

 だけどこんな狭い檻の中に逃げ場なんて無い。


 両腕を壁に押し付けられて拘束される。絶対絶命な状況で、私は眼を強く塞ぐ。

 ──死ぬ……!


「アイツを怒らせる為の糧となれ聖女」


「えいっ」


「うおっ!?」


 急に仰け反り膝をついたガルドは、香恋を睨みつける。え、何があったの?


「貴方は十字架、効くようですね。その上ニンニクに漬けといたので威力も抜群ですよ」


 ガルドが弱った理由は、香恋が投げつけた全長30センチメートルほどの十字架だった。

 ガルドには十字架効くんだ……でも前のマルスとは違う種族みたいだし……どんだけ種類あんだよ吸血鬼。纏まってろ。


 「ぐおっ!」


 もう一度ガルドに十字架を叩きつけた香恋は檻の外へと飛び出す。


「凌菜さん早く! 逃げますよ!」


「あ! おうサンキュー!」


 今回は助けられちったなぁ……てかコイツどこにあんなもん隠し持ってたんだ。今下着姿だぞ。私と違ってシャツも来てるけど。

 今気付いたけど寒いな。


 今回は何処かのアレか? 何だっけ? 監獄でいいか。そんな感じの場所なのかな? あちこちに檻有る。誰も入っていないけど。

 それにここ迷路みたいに通路が複雑だな、どうやって抜けだしゃ良いんだろう。出口も何処か分からないし。


 四つ目の角を曲がった所で誰かにぶつかった。

 まさか──!!


「あ、良かった二人共見つけられた。脱出出来たんだね」


「ヴォルフ!?」


 ぶつかったのはヴォルフで、お昼で早退したらしくそこから私達の気配を辿ってここまで来たらしい。凄いね。

 それより本当に助かった。


「いや、結構強烈な眺めだなぁ」


「見んな!」


 変態じゃなきゃ褒めてあげたんだけどなぁ。一瞬で褒める気失くしたわ。


「おお、来たか吸血鬼」


「いやお前も吸血鬼だよね」


 ヴォルフとガルドが遂に対面。お互いに様子を伺ってるようで……ん? ヴォルフが私と香恋の腰に手を回してる? たく……。


「おい! 何でこんな時に……」


「逃げるよ二人共!」


 その直後、ヴォルフは私達を抱えて高速で通路を抜け出口を突破した。待ってこの出口さっきの檻の真横じゃん、私達馬鹿か。

 ヴォルフが言うに、奴はマルスの数倍強い為自分では勝てないと判断したらしい。

 でも、それじゃずっと追われるんじゃ……。

 私の予想は嫌にも的中し、デカイ図体で飛んで来るガルド。スピードは大して無いっぽい。


「ちょっと待ってて。倒してくる」


「さっき勝てないって言った癖に!?」


「策があるんだ」


 私達を茂みに隠してガルドの前へ出るヴォルフの表情は、最初の頃の余裕そうな笑みに変わっていた。

 腹立つけど、今じゃかなり頼もしく感じる。


 そしてヴォルフはあの(・・)真の姿へ変身した。やっぱ見慣れないなぁ……。


「さあ、かかっておいで坊や」


「誰が日本昔話だ!!」


「あいつは何の話をしてるんだろう。由奈以外全員に突っ込んだ気がしたぞ」


 ガルドが突っ込んでいくと、その直後水柱が上がり空中にはヴォルフだけだ浮いていた。

 ……え? 瞬殺?


「予知とテレポートをコンボで使えば水に落とすなんて楽なんだよ。坊や〜良い子だねんねしな」


「なるほど、バカだ。そしてまた水の中だったのか」


 ガルドが水上に上がってきたと同時に、巨大な渦が発生した。待て何だ何が起こってんだ。

 ヴォルフの解説を聞く感じこれもテレポートの一種らしいけど、本当ですかね。恐ろしいんだけど。


「ぬおぉ!?」


 大渦に飲み込まれたガルドは、中心に吸い込まれて行く……けどここは海とかじゃないから吸血鬼なら復帰して来そうだよね。

 ガルドの姿が見えなくなると、ヴォルフは嗜虐的な目で笑う──怖い。


「じゃあね、坊や」


 突如水が噴射され、虹が出来る。巨大なスプリンクラーにでも打たれてるようだ。

 ガルドの姿は見えないけど、勝ったのかな?


 変身を解いた(?)ヴォルフはゆっくりと私達の元へ降りて来る。

 優しい笑顔で。


「終わったよ、帰ろうか」


「おう」


 私はヴォルフの濡れた髪をTシャツで拭き、笑顔を返す。香恋は凄く眠そう。


「あ! そうだ」


 突然ヴォルフは手を叩き、私の肩を掴む。ん? 何?

 そして眼を閉じて顔を近付けてくる。


「お礼はキスで!」


「はあ!?」


「やっぱりラブラブじゃないですか」


「はあ!?」


「○○○でも可!」


「可! じゃねぇよバカ死んでろ!!」


「ぎゃーーーー!!!」


 ヴォルフを湖に突き落とし、私は顔を隠しながら家に向かおうとしたけどこの姿じゃ帰れないのでヴォルフが上がって来るのを待つ。

 ……何で顔を隠してるのかって?  知るかバカ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ