面談前とは
私の通う大学は、四の学部と十の学科で構成された文系の大学です。その中でも、私が所属する学科は“THE 文系☆”のような場所で、全ての卒業年次の学生が卒業論文を執筆することが義務づけられています。同じ大学でも、学部や学科が変わればその方針も違うので、中には卒業論文を執筆しない学科もあるそうですが、うちの学科は卒業論文が書けなければ卒業できません。
そんな私の所属するゼミでは、卒業論文の執筆が本格化する卒業年次の後期日程に入ると、週に一度、先生との面談日があります。卒業論文の添削が主な中身で、一人三十分という時間を与えられています。
私に与えられた面談時間が、水曜日の十時から十時三十分までの三十分間。昨年度、卒業論文の前段階にあたる文献調査の時点で大幅に遅れてしまったうえに、さらに色々とやらかして、そんな諸々で先生を散々呆れさせてしまった私も、どうにか面談時間を与えられました。それはつまり、卒業論文を最低限書けるラインにはいる――ということになるのでしょうか。
ともかくも、この面談時間がまた厄介なのです。
先生の研究室で、三十分間、先生とサシでコミュニケーションをとる――そう、言ってしまえばそれだけのことなのですが、事はそう簡単ではありません。我がゼミの先生は、学科一こわいといっても過言ではない先生なのです。笑顔で心臓を抉りにくる――そんなタイプの先生なのです。もっとも、こうして一人一人のゼミ生と面談時間を持ってくれるということは、学生思いでもあるのかもしれませんが。他のゼミに所属する友人から話を聞く限り、週イチで面談の時間を持ってくれるのは、うちの先生一人くらいです。
とにかく、先生と三十分間、相対するということは、思った以上に緊張するのです。特に私は、先ほどもちょろっと述べたように、前科というか何というかがありまして、それがさらに不安の種となっているわけです。
この作品は、そんな私が先生との面談が始まる前に、スマートフォンのメモに書き綴ったものを集めたものです。大体は、面談開始十五分前くらいに、先生の研究室の前で、前の人の面談が終わるのを待っている間に書いていました。でも、あまりに緊張していると、一時間くらい前からツラツラと書いたりもしてました。自分の心をある程度客観的に見て書くことで、少しは落ち着いたりしたのです。
そしてこの度、うちの卒業年次のゼミ生、総勢十四名の卒業論文あるいは研究ノートが、一冊の論文集という形にできることになったので、それを機会に投稿することにしました。ようやくというべきか、ここまでがすごく長く感じています。先生の「みんな、もう一息だよ」が、全然“もう一息”ではなかった――と、ゼミ生で振り返っているところです。
というわけで、どうかそんなポンコツ大学生の心に、少しだけ付き合っていただければ幸いです。
願わくば、これから大学生になる人、または、これから卒業論文を書かなければならない人が、私のように周囲を困らせたり呆れさせたりしませんように。自分自身で悔いのない卒業論文を書き上げられますように。
そして、悔いのない大学生活だったと、心から思えますように。




