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04.死神の足音
『ピィィィィィィィィィィ』
片耳から小さく聴こえてくる高音。最初は機械か何かの音だと思った。みんなに聞こえている音だと思った。
『ピィィィィィィィィィィ』
でも違った。年を経るごとに大きくなっていく音。それは機械なんてないところでも聞こえてくる。抗議の邪魔じゃないかと思っても誰も指摘しない。そう私だけ。私にだけ聞こえていた。
『ピィィィィィィィィィィ』
右耳だけ左耳だけ。ときには両耳。次第に大きくなる音。突然聞こえてくる音。いつどのタイミングで聞こえてくるか分からない。でも慣れてしまった。だからこそ慣れてしまった。そういうものなのだと慣れてしまった。
『ピィィィィィィィィィィ』
また音が鳴る。始まった。少ししたら終わるだろう。
『ピィィィィィィィィィィ』
今日も音が鳴る。また始まった。ある程度したら終わるだろう。
『キィィィィィィィィィィ』
私の耳にはその音が聞こえなかった。いつもの音にかき消されて。
『ピィィィィィィィィィィ』
その音が大きくて。その音に引き寄せられて。交差点を渡るその間。車の音が聞こえなかった。