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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

その一言で。

作者: 黒猫姫にゃお



この話は、息抜きで書いております。


『黒の剣に姫は囚われる』に出てくる天狐のミレン(美蓮)の話です。

そこの所をご注意ください。

『黒の剣に姫は囚われる』を読む必要はございません。

読まなくても楽しめる様に書いております。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


妾は、一人で生きてきていた。

人間が嫌いだった。

人間なんて、存在する価値がないと思っていた。

だけど。

妾は出会った。

大切な方に。

大切な方のためには、なにを犠牲にしてもよいと思った。

大好き。いや。この命はあの方のもの。


さぁ。我が君。お望みを。


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


「あらあら?わたくしの可愛い子?なにを毛を逆立たせておる?」

ちらり、と背後を見る。

そこには、美姫という言葉が霞むほど美しい人がいた。いや、人ではないな。

(ワラワ)は天狐。天のきつねである。何千年も生きることができる。だが、我が一族はなぜか人間と婚姻を結び、そして伴侶の寿命が事切れるときに共に死ぬ。

人間が大好きだから。


はぁ。と妾はため息をついた。

人間などと。馬鹿らしい。あんな私利私欲に塗れた薄汚い者共のことが妾は好きになれぬ。

「わたくしのことは無視かしら?」

「黙りゃ。母上。何故ここにおる?父上とおるのではなかったのかえ?」

そう。母上は今日は仕事を休んだ父上とおるはずだのに、何故か母上はここにいる。屋敷の妾の部屋に。

「早う行かねば父上が待っておるぞ」

妾は窓の外を見たまま、母上にそう言った。

「……ふぅ、わたくしの可愛い子は相手してくれぬからわたくしは我が夫殿とお出かけしてくる」

「はいはい」

ふわふわと手を振る。

早く行け。


……人間は、本当に欲深い。人間の欲のために何人の狐たちが死んだか。天狐や九尾の血を飲むと不老不死になると言われている。それを信じた人間が妾たちの同胞の狐たちを残虐極まりない処刑をした。

同胞である狐を殺せば、九尾や妾たち天狐が出てくると思ったのだろう。

正解だ。

怒り狂った九尾や天狐が人間を八つ裂きにした。

だが、人間たちは諦めなかった。人間の前に姿を現した九尾や天狐たちは皆、捕まり、そして血を抜かれた。尻尾などの毛は、剥ぎ取られ観賞用に。又は飾りに。

生き物としての尊厳すらなくされた。

故に妾は人間が大嫌いだ。

会いたくもない。なのに、我が一族の女は皆、人間の男と婚姻を結ぶ。


ふわり、と窓枠から飛び降り走る。目的地までひた走る。


目的地は、桜の木。大きな木だ。

満開の桜がとても美しい。そこの枝に腰掛け、酒を飲むのが最近の楽しみになっていた。


「……」

この場所は、人間の王族が暮らしている屋敷に近い。だから、見えてしまう人間が。

美蓮は眉を潜めた。

「人間風情が」

唾棄するように言葉を紡ぐ。


本当に人間は嫌いだ。



ある日、美蓮は母上に命じられた。

『少し西洋の文化を学んでこい』と。西洋の文化と東洋の文化を交えた新しい文化を創りたいと思っていたようだった。

美蓮は、渋々西洋に渡った。



「……どこじゃここは」

美蓮がいた所とは全く違った景色に見とれながら歩いていたら、迷子になった。

西洋の狐に聞こうとしても、なぜかどこにもいない。

「あぁ、ここは神をそこかしこに祀っておらぬのか」

祀っておれば、そこら辺にいる狐などに道を聞くのに。


「まぁ、歩いておればいいだろう」

適当に、妾は歩き出す。

ただ自分が住みやすそうな場所を探すために。


「あれ?君は誰?」

ふと、後ろから声が聞こえた。

気配は感じなかった。

「そなたこそ誰じゃ」

妾が気配を感じられないなんて。何者じゃ。

「え、耳と尻尾……?」

その言葉で理解した。驚きで尻尾と耳が出ていた。

バッと手で抑え込む。無駄だが。

殺される殺される。いや、殺される前に八つ裂きにしようか。

早くこの男を殺さ

「綺麗だね」

「……は?」

何を言ったのだろうか。この男は。

「うん。綺麗だ。金色だね。俺と一緒だ」

「……」

ふわっと、その男が妾と同じ色の髪を指さして笑った。

「……っ」

……動悸が激しい。なんじゃこれは。

男の顔が見れぬ。

「そなたの、名は」

いつの間にか、勝手に口が動いていた。

「妾の名は美蓮じゃ」

「へぇ、名前も美しいね。俺はサイカ・ヴォルン・キーナ。よろしくミレン」

ぶわりと、名を呼ばれただけで頬が熱を持つ。


……妾は、人間が大嫌いだったはずなのに。

出会ってしまった。(ツガイ)に。



本能が叫んでいる。

この者のために全てをかけたいと。





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