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真雪は魔法使い  作者: 多蘿子
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9ページ

「これで、文句は無いじゃろう。霧氷むひょうや、紅蓮を送ってやりなさい。猫ちゃんや、餌も一緒に。」


老人の秘書は、その通りにした。





音も無く、景色が変わる。それは、上級者の魔法使いでなければ出来ない事だ。老人の家の絨毯から、フローリングに移動。違和感を感じさせない凄腕は、噂以上。


「あの秘書は、訳あり。それも、裏関係の。か。」


16畳のワンルームに、仔猫と山ほどのキャットフードと猫の砂。紅蓮を驚かせる事は、それだけでは無かった。


「引っ越し祝いを、差し上げます。私のささやかな気持ちですが。」


紅蓮は、呆れながら鼻先の顔に言う。


「霧氷さん、ノックぐらいして下さいよ。」


「いやん。霧氷で呼び捨てに。」


「お断りです!」


「ま、冷たい。そういうところが、好きですけど。そんな態度をとる男が少なくて。」


そうだろう。これだけの魔力なら、怖くてできやしない。俺は、捨てる物が無いからな。


「それーー。」


霧氷は、取り出した化粧ポーチを床に投げた。すると、化粧ポーチから次々にに家具が飛び出して来るではないか。


ドン、ドン、ドン、ドンーー。


あっという間に、家具が並ぶ。


「私の好みですわ、いかがでしょう。」


ミーー。返事したのは、仔猫。紅蓮の手から飛び降りる。そして、ベッドに飛び乗った。仔猫は、気に入ったらしい。


「私は、紅蓮さんと添い寝がしたかったのに。」


あんたと一緒に寝たら、命が失くなりそうだ。ごめんだね。そう、思ったものの、紅蓮は言ってみた。


「霧氷さん、魔力は戻せませんか。俺、不自由で困るんです。」


「そうでしょうね。あなたは、人気のマスターでしたもの。世界中を飛び回って活躍してらした。そうだわ、ゴールドマスターに推薦いたしましょう。」


「推薦?」


「真雪ちゃんが生徒になった事で、素人開発を本格的に立ち上げるそうなのです。紅蓮さんを代理責任者に、推薦しますわ。そうすれば、魔力も少しは使えるようになるでしょうから。」


思わぬ棚からぼた餅。言ってみるものだ。





人々に知られる事なく存在してきた魔法使いの組織。その組織で処分された魔法使いの紅蓮。シルバーマスター霧氷の推薦により、テスト事業の代理責任者となる事を認められた。






町の一角に建つ五階建てのマンション。そこが、紅蓮の新しい住所となった。早速、紅蓮は友人に連絡をとる。


「紅蓮、大丈夫なのか?お前は、あの老人の監視下なのだろう。」


表れた天道虫てんとうむしが壁に貼り付き、携帯電話のように声を伝えてくる。紅蓮は、苦笑いした。警戒しているのだ、自分も紅蓮のように処分されたくはない。紅蓮が、独りで罪を被ったというのに。


「ああ、大丈夫だ。雑音を出すカマキリを付けてあるからな。」


「そうか。だったら、話してもいいな。どうした、住まいが変わったのか?アパートに住んでいると、聞いていたぞ。」


そうだよ、銀行口座は閉鎖されての貧乏暮らしだった。マスターの資格を剥奪、爺さんへの借金の返済に1日中を働いた。仲間が知らぬふりで、贅沢に暮らしていても。


「ふっー。」


「何が、おかしいんだ?」


「俺、「素人能力開発プログラム」の責任者代理になったんだ。」


「素人開発って、お前の身元引き受け人になった老人が始めたテスト事業じゃないか。そんな物、やらされて大丈夫か?」


「そうなんだ。マスター制度には、一般市民は入れない規則だったのに。爺さんが、マスターが減ってるからって押し通して認めさせたんだよ。」


「素人に、魔法は使えない。それは、家系に能力の遺伝子が無いからた。無理だ!」


そうだよ、無理だ。あんな、雀頭を生徒にするくらいだから。だけど、俺はやってやるよ。


「代理責任者になったおかげで、バイトの掛け持ちから救われた。時間の余裕が出来たので、組織の乗っ取りをやり直したいんだ。協力してくれるよな?」


断るなんて、許さないぜ。お前達から誘っておきながら、俺が処分されるのを見ていたんだ。自分達は、何も知らなかったと言って。


「とりあえずは、魔法が使えないんで魔法チップを。爺さんのアイテムを借りてるけど、古くてな。」


さあ、始めようか。元シルバーマスター「紅蓮ぐれん」の力を見せてやる。




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