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「やっと、起きたか。ガキは、よく寝るなあ。」
枕元に座っている紅蓮が、眠そうにアクビをする。真雪は、自分の頭から落ちた物を見つめた。
「なに、これ。手紙だもんー。」
正確には、手紙とは異なる。頭と手足が、付いているからだ。その白封筒は、訂正してくる。
「手紙では無いでしゅう、レター種でしゅう。」
「触りたいもん!」
バタバタと走り回る真雪。紅蓮は、レター種を追い回す少女に怒った。
「おい、俺の話を聞け。そいつを、追い回すんじゃない。」
部屋から音がするので、母親が襖を開けた。
「真雪、どうしたの?」
すると、暗い部屋の布団の上に真雪は座っている。
「母さん、何ですか?」
聞いたのに、聞き返された。本当に、真雪は別人みたいだ。戸惑いながら、母親は言うしかない。
「隣の家に音が聞こえるから、静かにね。」
「はい、母さん。」
襖が閉まると、畳の下から真雪が頭を出す。なんと、真雪は二人になった。
「紅蓮さま。これで、良かったでしゅか?」
そう言うと、布団の上の真雪が封筒に変わる。化けていたのだ。
「母さんが騙されるなんて、凄い!」
畳に空いた穴の中から、紅蓮が真雪の腕を引いた。
「ほら、声を出すな。また、母さんが来るぞ。さあ、アルバイトの話を済ませてしまおう。早く、帰りたいんだよ。俺は。」
「うん。早くて、沢山、稼げる仕事がしたいもん。」
「だから、「お金持ち」て書いて送ったのか。意味、分かるか。あほ。」
紅蓮は、メッセージカードを取り出した。それのコメント欄に、「お金持ち」と書かれている。
「真雪、お爺ちゃんからもらったカードに書いたのに。」
老人は、アルバイトをする気になったら書き込みなさいとカードをくれたのだが。カードは対になっていて、届くようだ。
(これって、本当に魔法なのかな。そうなら、アルバイトして魔法を覚えたら。お姉ちゃんを探せるかも。)
真雪は、やる気になっていた。