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真雪は魔法使い  作者: 多蘿子
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真雪は、クスクスと笑う。


「親友の留奈が、バイトやってるもん。コスプレするって。真雪もやりたい。」


「いや、コスプレはしないんじゃ。勉強して欲しいんだ。」


「勉強、嫌い!」


「おやおや、断られたか。ワハハ。」


老人は、おかしそうに笑った。真雪は、自分が嫌と言った事に気がつく。こんな風に、知らない人に嫌だと拒んだ事は無いのに。どうしたんだろう、自分が違う自分になってるような感じだ。






今日は、いい事があった。美味しいスコーンを奢ってもらったの。次は、母さんとお婆ちゃんと行ってみたい。上機嫌の真雪は、弾む足どりで帰って来た。そして、アパートの外まで聞こえる大きな声に立ち止まる。


「あんたの娘のせいで、うちは迷惑を受けてんのよ。婚約解消よ!」


あれは、お姉ちゃんの婚約者の母親の声だ。真ゆの母さんが、働いている工場の副社長でもある。


「息子が頼むから許したのよ。でも、もう、我慢できない。貧乏人の娘に振り回されないわ。結婚式にかかった費用は、弁償してもらいますからね。あんたは、首よ。首!」


叫ぶように言って、副社長はドアを叩きつけた。待っていた運転手が車のドアを開く。恐る恐る、真雪はアパートへ入る。





「母さん・・・?」


入り口に座っている母親が、泣いていた。いつも、笑った顔しか見せなかったのに。


「母さん。今日ね、真雪は「嫌い」て言ったゎよ。凄いでしょ?」


真雪に言えるのは、そんな事。母親は、黙って抱き寄せた。


「ごめん、ごめんね。」


抱き締められながら、真雪は思った。


(真雪、頑張る。母さんが首になっても、あたしが働くもん!)


あの、お爺ちゃんが言ってた勉強でもいい。勉強は、嫌いだけど。我慢する。


(魔法の勉強とか、言ってなかった?)


嘘だあ、あるわけないしい。魔法なんた、想像力が作った話だって、誰かが言ってたもん。きっと、知らない人に電話して贋物商品を売りつけるんだ。お姉ちゃんは、お金を持ってそうだったもん。そうやって、儲けたのね。






その夜、真雪と祖母は声を潜めて相談をしていた。


「首にされたんなら、出て行かないといけないねえ。会社から出る住宅手当てで、借りられたんだから。」


そう言う祖母に、母親は頷く。


「住めるとしたら、狭い部屋だけど。明日から、職安に行って仕事を探すわ。」


「そうするしか、ないねえ。今迄くらいの給料の仕事が有ればいいけど。それより、真雪が。」


「そうなのよ、変でしょ。帰って来てから、ずっと喋ってるから。」


「何時もなら、居るか居ないか分からないのに。別人みたいなのよねえ。病院へ連れて行くかい。」


二人の心配をよそに、何時になく喋り続けて疲れた真雪は爆睡中。


ポトッーー。


眠っている女の子の頭の上に、上から何かが落ちた。そして、髪の上をカサコソと動き始めたのです。


「ねえ。あなたの嫌いな物は?」


それは、眠っている少女に問いかけた。眠りながらの答え。


「むにゃむにゃ、蜘蛛は嫌い。」


「じゃ、蜘蛛でしゅう!」


途端に、頭の中にイメージする蜘蛛の姿。真雪は跳ね起きた。



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