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「留奈が来ないから、寂しいだろ。あいつ、何やってんのかな。」
そう話す昴くんの後ろを歩く。人と話すのは苦手。特に、男の子は嫌。手が震えて、息苦しくなるから。
「留奈とは幼馴染でさ。付き合ったのも、よく知ってたからなんだけど。次は、面白い子と付き合うって言ったら、田仲ちゃんを紹介されて。」
違うのに。わたしは、面白くなんてないのに。留奈は、何で言ったの。酷い!
「ちょっと、待ってよ。田仲さんてば!」
呼ぶ声に振り返ると女子生徒が追いかけてくる。あれは、留奈と同じクラスの子だった。女生徒は、昴に謝る。
「昴くん、ごめん。田仲さんに用があるの。」
用て、何なんだろう。話した事の無い相手だけど、昴くんから離れられてホッとする。昴くんから離れた場所で囁かれた。
「あんたは、昴くんに相応しくないわ。留奈だけよ、隣にいるのは。失せて‼」
それは、分かってるわよ。でも、留奈が。
「あんたの姉さん、結婚式の前に男と逃げたんだってね。あんたの親父も、女と逃げたんだって?だらしのない家ね。町中の噂よ。昴くんに近づくなんて許さないから。失せろって、陰気ゾンビ!」
わたし、心臓が潰れそう。どうして、こんな酷い事を言われなくちゃならないの。
「何で、ぐずぐずしてんのよ。ちょっと、来てよ。」
手招きされて、女生徒が数人かけて来る。学校から、付いて来ていたのだ。
「こいつ、動かないから引っ張ってってよ。」
涙を浮かべて立ち尽くす真雪は、両腕を捕まれて引きずるように連れて行かれてしまうのだ。残った女生徒が、離れた場所で待っている昴に歩み寄った。
「昴くん、ごめんなさい。あの子って馬鹿だから、やる事を忘れてて。学校へ戻ったわ。」
と、強引にデートをキャンセルしてしまったのだ。