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夢のサマーアイランド

「日差しが眩しいな……」


 さんさんと照り付ける太陽。

 薄っぺらいビーチサンダル越しにわかる砂の熱さ。

 鼻から息を吸うと潮の香りがする。


「さぁ……」


 目の前に広がる光景に気持ちも高ぶる。


「海だ!」







 話は今日の放課後に遡る。

 帰りのホームルームが終わった途端、メイ先輩が教室に入ってきた。

 そして皆に、冷えピタ位のサイズの、昔流行った貼るだけで腹筋を鍛えられる運動器具みたいな機械を配った。

 それは、夜額に貼って寝ると皆が共通の夢を見られる機械らしい。

 しかもその夢は、メイ先輩が調整をかけた五感全てを感じる事が出来る現実世界と変わらない夢。

 先日小日向の記憶喪失の件で迷惑をかけたからと、皆を夢の中ではあるが南の島のリゾートに招待してくれると言うのだ。

 今日は金曜日。

 明日は休みだからちょうどいいとクラスメイト達は大喜びでそれを受け取った。

 で、今に至る訳だが……。







「夜八時以降に貼って寝ればいいって言うから結構早めに寝てみたつもりだったけど……」


 砂浜を見る。


「もうほとんど全員集合してんじゃねぇか」


 こいつらなんぼ暇人よ。


「おーい、遅いぞー海馬沢ー」

「メイ先輩!」


 流石メイ先輩だ!

 やっぱこの人ええ身体しとるわ!


「メイ先輩こんばんは! ビキニ姿マジ眩しいっす! 最高っす!」

「あはは、エロい目でガン見しながら下心全開で褒められても全然嬉しくねー」


 イメージと違いちょっと可愛いめのデザインなのがギャップになって良い。


「てかさー海馬沢。あんたが来ないとゲスト勢知り合い少なくて困るでしょ? だから早く来る様に言っておいたのに」

「いや、結構早かったですよ?」

「あんたより早い子がいたらおんなじよ。むしろ八時ピッタリに来ても良かった位よ」

「はい、すんません」


 それは反省だ。


「あっちに皆いるから。ほらほら急ぐ」

「うぃーす」


 背中を叩かれ言われるがまま行くと、本当にもう皆揃っていた。


「あ、兄さん」

「遅いよお兄ちゃん」

「遅くなってごめんね。桃香ちゃん、紅梨ちゃん」


 ゲスト勢というのは、肉親勢だ。

 小日向の記憶が無くなった事で小日向のいるクラスに迷惑をかけたが、その彼氏である俺の姉妹にも落ち込んだ俺が迷惑をかけただろうと、メイ先輩はうちの姉妹にも機械を配っていた。


「変な意味じゃないよと事前にはっきり言った上で。二人共、その水着とても似合ってるよ。凄く可愛い」

「「………………」」

「だから変な意味じゃないってば! ただ褒めただけでしょ!? そんな顔しながら身体隠すの止めて!?」

「ね? だから言ったでしょ桃香お姉ちゃん。Tシャツとか上に着ておいた方がいいって。エッチな目で見てくる人がいるから」

「誰の事!? ねぇそれ誰の事だい紅梨ちゃん!?」


 桃香ちゃんと紅梨ちゃんの二人はビキニの上にTシャツを着ていた。

 片手で胸元を、もう片方の手でTシャツを伸ばして下半身を隠すようにしながら、俺の事を赤い顔で睨んでいる。

 今年の流行は知らないけど、二人共カラフルで結構派手な色の水着を着ていた。

 

(でも……うん)


 Tシャツを着たのは正解かもしれない。

 改めてこうして見ると、やっぱり二人共発育がいい。

 そしてそこに、まだ幼さの残るぷにっとした肌の柔らかさや未発達な肉付きが加わると、何とも言えないエロさを感じる。

 こんなの他の奴らに見せたら大変な事になる。

 

「日景兄、目がエッチだよ」

「!?」


 慌てて振り向くと、真斗が呆れた顔で俺を見上げていた。

 真斗も誘われていたのだ。

 小日向の弟という事で、真斗にも迷惑をかけただろうと。


「ハッハッハ、何を言っているんだい真斗? 兄である俺が妹達に対してそんな目をする訳ないだろう?」


 真斗に対する態度は妹達とはまた違う物になる。

 同じ男だからこそ、真斗の前では常に格好いいお兄ちゃんでいたくなる。

 見栄を張りたくなるのだ。

 だから、この醜態はマズい。

 誤魔化さなければ。


「俺はお前の姉と付き合ってるんだぞ? なのに他の女の子を、ましてや自分の妹をそんな目で見るなんて。ははは、あり得ないよ」

「先輩先輩、紬思い切ってスリングショットっていうのに初挑戦してみたんですけど……どうですかね? 見ていただけますか?」


 速攻で振り向く。


「ほらスリングショット」


 ビキニ姿の紬が手にスリングショット、ゴム銃を持ってポーズを取っていた。


「べったべたな罠に騙されたぁぁぁぁああああああ!!!!!!」


 紬も記憶探しを手伝ったからと招待されていたのだが。

 この仕打ちはあんまりだ。

 この女は後でお仕置きだ。


(お仕置き……)


「あはははは! すみません、先輩」


 無邪気に笑う紬の身体。

 うん、いい、凄くいい。

 笑うと柔らかそうに揺れる胸に、飛びつきたい。

 桃香ちゃん達がTシャツを着ている分、そのままビキニだけの紬は肌色の多さでどうしても視線が吸い寄せられてしまう。


「せんぱーい。目がエッチですよー」

「!?」


 また言われた!


(いつもならここで紬にセクハラ返しの一つでもするところだけど、妹達と真斗がいる前で変な事言えないし!)


 やり辛いったらありゃしない!


「あー、日景やっと来たー」

「マイワイフ!?」


 ナイスタイミングで露出の多いまるで下着みたいないやらしい恰好をした嫁がやってきた。


「下着みたいって……。水着だよ水着。言い方がなんか嫌だ」

「肌を隠す布の量は同じ様なもんだろ? ……いや、同じじゃないか。お前の下着はもっと布の量少ないもんな」

「な、何なの会うなりいきなりそのセクハラ!?」


 小日向の下着姿も裸もしょっちゅう見てはいるけれど。

 水着となるとまた別だな。

 クソエロ可愛い。

 家族の目線が無ければ即効で押し倒し犯してた。

 それ位眩しエロい。


「ところで小日向」

「何?」

「その水着、上下で色違うけど。間違えたの?」

「そういう水着なの!」


 怒った小日向に頬を手で押し潰す様に挟まれる。

 よし、調子が戻ってきた。


「それよりさー。遅いよー日景ー、来るのー」

「ごめんごめん」

「メイ先輩の開会の挨拶もさっきやったのにさー。日景いないしー」

「え、嘘。そんなのやったんだ」


 それはちょっと居たかったかも。

 てか居るべきだった。


「そうですよ、兄さん」


 桃香ちゃんが腕を組んで俺に怒った顔で言う。


(組んだ腕に胸が乗っかってる)


 無意識でいると見てはならぬ方に視線が行きそうになるので、必死に逸らす。

 水着って、本当に色々な意味で危険だ。


「その時ここでの遊び方とか注意事項の説明もあったんですよ?」

「そうだったんだ。それは聞きたかったな」

「大丈夫だよ」


 紅梨ちゃんが防水加工された一枚の紙を持ってくる。

 

「後から来た人用に説明ここに全部書いてあるから」

「よかった、そういう物がちゃんと用意されてたんだ。ありがとう、紅梨ちゃん」

「うん」

「先輩先輩、ジェントルスマイルしてるとこ悪いですけど、視線あちこち彷徨っておっぱい我慢してるのバレバレですよ?」

「オラだったらてめぇが俺に乳見せろや紬よぉ!」

「きゃーん」

「兄さん……」

「お兄ちゃん……」

「ははは、誤解ですよ。僕そんなん一切興味ないですし。ほーら、真面目で紳士で素敵なお兄ちゃんだよー?」

「日景兄、苦しいにも程があるよ」


 仕方ないだろ。

 男ってそういう生き物だ。


「はいはいほらほら」


 小日向が手を叩く。


「日景はもういいから。夢の中とはいえこうして折角海来たんだし、遊ぼうよ」

「日景はもういいからって酷くない?」

「そうですね!」


 紬が俺の腕に抱き着いてくる。

 凶悪な二つの理性破壊兵器の感触が俺を襲う。


「ほら先輩! 泳ぎましょうよ!」

「ほーう」

「小日向さん!? 浮気じゃないからねこれ!? これは紬が勝手に!」

「あ、確かにこれはよくないですね。彼女さんの前でこんな事。では、改めて」


 俺の腕を離して今度は紬が小日向の腕に抱き着く。


「小日向先輩! 泳ぎましょうよ!」

「え、えへぇ~? そ、そうだねぇ~、そうしよっかぁ~」


 なんて馬鹿なんだ俺の彼女は。

 あっさり騙されている。

 ……そして許せねぇ、あの女。

 俺の紬のおっぱいの感触ニヤニヤ楽しみやがって。

 あれは俺のおっぱいなのに……。

 てかお前は自分でいいもん抱えてるんだからそっちで満足してろよ。


「こひなちゃん」


 そこへ、とてとてという足音と共に、まるで天使の羽音の様に可愛らしい声が話しかけてきた。


「いっしょにすなでおしろ、つくろ?」




「作るぅぅぅぅうううううう!!!!」




「酷い!」


 小日向が一瞬で紬の事を振り払って、足元でモジモジしていた苺香ちゃんの事を抱き上げると、頭空っぽな笑みを浮かべてくるくると回り始めた。


「作るぅ~~~~作るよぉ~~~~! 世界で一番のお城作ろうねぇ~~~~!」

「わー」


 姉妹というのだから勿論、苺香ちゃんと姉さんもこれに参加していた。


「え、てか何で小日向に? あれ? イケメンお兄ちゃんは?」

「そうなんだよね」


 紅梨ちゃんが溶けたかき氷を飲みながら言う。


「苺香小日向さんにすっごい懐いてるんだよ」


 まぁ、そうか。

 会う度会う度大袈裟な位の愛情表現されて、しかもどんな遊びにも全力で楽しそうに嬉しそうにいつまでも飽きるまで付き合ってくれるのだ。

 懐かない訳がない。


(でもそれ、俺だってそうなのに!)


 むしろ俺の方が小日向よりも絶対苺香ちゃんの事を愛してる!


「そんな顔しないでよお兄ちゃん。苺香だってお兄ちゃんの事ちゃんと好きだよ? ただ小日向さんはいつもうちにいる訳じゃないから。会えた時はつい、いつも遊べない方に行っちゃうんだよ。それにやっぱり女の子同士だしね。もし小日向さんがいなかったら、まず真っ先はお兄ちゃんだよ」

「紅梨ちゃん……!」


 何この(もえ)(まい)超可愛い!

 なんか慰めてくれてる!


「そ、それに……さ」

「ん?」


 きゅっと俺の手を握ってくる。


「苺香じゃなくて、私とは遊んでくれないの?」




「遊ぶぅぅぅぅうううううう!!!!」




「な、何だこれ!?」


 紅梨ちゃんを抱き上げてくるくる回る。


「勿論! 遊ぶ、遊ぶ、遊ぶよぉ~~!! 何して遊ぼうかぁ~~~~!!!!」

「うっわ! ウザい! ウザい! 離せ! こら!」


 紅梨ちゃんも大喜びだ。


「流石夫婦。同じ行動取ってる」


 桃香ちゃんが回る俺と小日向を見てそう言った。







 皆それぞれ好きな事をしようと一旦別行動をとる事にした。

 小日向は苺香ちゃんとお城作り。

 抱き上げくるくるで怒った紅梨ちゃんは桃香ちゃんと姉さんを連れてどこかへ行ってしまった。


「で、この三人が余った訳ですか」

「俺ここに知り合いあんまり居ないから、日景兄がこうして残ってくれて正直ホッとした」


 俺と紬と真斗。

 ちょっと不思議な組み合わせだ。


「えーと、じゃあ」


 紬は真斗とは初対面らしい。

 笑顔で自己紹介を始めた。


「初めまして、紬です。君は小日向先輩の弟さんだよね?」

「はい。こちらこそ初めまして、千明真斗と言います。宜しくお願いします」


 真斗が頭を下げる。


「うん、よろしくね」


 そう言って紬が笑顔で手を伸ばし、真斗と握手をする。


「俺はイケメンだよ。宜しくね、二人共!」


 ナイススマイルで親指を立ててポーズをとる。


「はい尊敬するイケメン先輩! あなたの理想の後輩を目指すあなただけの紬です! 末永く宜しくお願い致します!」

「うん、今日は宜しくね日景兄」

「………………」


 何だろう。

 この受け入れられてる筈なのに感じる言葉にし辛い寂しさは。


「で、まずは何します?」

「あぁ、それなんだけど」


 実はちょっと気になっていた事があった。


「紅梨ちゃんがさ、さっきかき氷食べてたんだよ。それ食べたくて」

「……日景兄、そういう事ばっか言ってるから皆から嫌がられるんだよ」

「え? 駄目? かき氷」

「もー、先輩女の子の食べかけが食べたいなら紬に言って下さいよー。紬なら食べかけだろうが口移しだろうが先輩の変態性癖オールOKですよ?」

「ちげぇよ馬鹿! 何か話噛み合わないと思ったら! 紅梨ちゃんの食べかけかき氷じゃなくて普通のかき氷! 普通のでいいんだよ!」

「それならあっちで貰えるよ」

「じゃあまずは海の家に行きましょう!」

「………………」


 いじりがあっさりし過ぎているというか。

 いや、いいんだけど。

 二人に付いていくとこじんまりとした海の家があり、そこで色々な物を注文できる様だった。


「ところで先輩」

「何? 俺におっぱい見せたいって?」

「はい」

「え、本当に!?」

「はい。聞こうとしたのは別な事ですけど、おっぱいも見て欲しいです」

「え、じゃ、じゃあ見た…………ぃ訳無いだろぉう!」


 真斗が居るんだ!

 可愛い弟分の前でそんな恥ずかしい事は言えん!


「そうですかー。じゃあおっぱい見せる話は無しで」

「!?」

「それで質問なんですけど。先輩何でそんな暑そうな格好してるんですか? 脱ぎましょうよ」

「そうか? そんな暑くはないけど」


 上に首元までしっかり閉めた長袖のパーカー。

 下にはいてる海パンも膝隠れる位まであるやつ。

 確かに見た感じは暑そうかもしれない。

 

「仕方ないだろ。俺顔だけじゃなく体もイケメンなんだから。下手に露出多くしたらお前らベタ惚れしちゃうだろ」

「はぁー……確かに。実は紬、さっき先輩の足元見た時からずっとドキドキしちゃってます」

「だろ?」

「うん……男の俺でもドキッとして変な気分になる位だし、確かに日景兄はそのまま身体隠しておいた方がいいかもね」


 身体見せても素顔見せた時程のインパクトは無い筈だけど。

 だからって隠さないでいていいもんじゃない。


「それより海の家だよ。ここで物欲しい時ってどうすればいいんだ? 財布なんか持ってきてないぞ? 夢の中なんだし」

「全品無料ですよ」

「ただ食べても飲んでも味わえるだけで喉の渇きもお腹の減りも満たされないけど」

「あくまで夢の中ですからね。限界になったら大人しく目を覚ますしか無いです」


 食べ放題飲み放題で夢の中だから太らないと言えば、それこそ夢の様な話だけど。

 いくら食べても飲んでも満たされないって、それ何か怖くないか?


「すいませーん」


 紬が店員に話しかけると。


「へいらっしゃい!」


 そこには水着姿にサンバイザーとエプロンをしたメイ先輩と。


「い……らっしゃい、ませ」

「え、何してんだ雅?」


 メイド服みたいなデザインの水着を着て恥ずかしそうに俺を睨む、雅がいた。

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