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普通にドン引くわぁ

「いや効かんし。お前昨日小日向に使って効かなかったのわかってるだろ」

「作った本人の私もここにいるしねー」

「そもそも俺はイケメンだしな」


 あっはっはっはと先輩後輩仲良く二人で笑う。


「あのさ、雅」


 そんな俺らをガン無視して、小日向が雅に話しかける。


「どうしてこんな事……いや、うん。した理由は何となくわかるんだけど……。そんなに嫌だった? 日景の事が」

「おい」

「そいつの事は勿論、殺したいほど八つ裂きにしたいほど焼却処分したいほど幾度殺しても殺し足りないほど嫌だけど」

「え、俺そんなレベルで嫌われてたの?」

「私が嫌なのはそいつだけじゃない。私は小日向に近寄る男近寄ろうとする男、全てが嫌よ」

「あら、そうなの? じゃあ私も?」

「安心しなさい。あんたは小日向に全く一切全然これっぽっちも可哀想なほど脈が無いから、最初から眼中に無いわ」

「………………」


 陽一が素の無表情になったの久しぶりに見た。


「だからって私の記憶消すってのはやり過ぎじゃない? 彼氏の記憶を消して別れさせようっていうのはアイデアとして悪くないかもしれないけど、それにしたって友達にする事としてその選択肢は普通選ばないでしょ」

「ていうかさ、小日向。お前本当に怒ってる? 言い方なんか軽くない?」


 実はもう、小日向には俺達が元々幼馴染で恋人同士だったと伝えてある。

 そしてその記憶を雅が消したのだと。

 だからいきさつは全て理解している筈なのに、どうにも反応が薄い。


「え? うん。だって雅だし」

「雅だしって」

「友達だからね」

「友達だからねって」

「それにさ、何だかんだで日景とはまたこうして付き合えてるし」

「まぁな」

「他の記憶を消されていないから私自身は毎日に違和感も無いし。正直に言っちゃうと、私的には怒る様なポイントが特に無いんだよね」

「いや、それは……。そうか、そうだよな」


 言いたい事はわかるが、納得いかん。


「だから今回は許すけど。もう止めてね、こういう事するのは」


 いいのかよそんなんで。

 記憶消すってもっと大事だと思うんですけど。

 俺だけじゃなく、周りにいる奴らも小日向の態度を見て呆れてる。

 人がいいを通り越して頭おかしいぞこいつ。


「だったら別れてよ、日景と」

「いやそれは無理だけど」

「どうしてよ!」

「え、だって」


 ギューと手を繋いでくる。


「好きだもん、日景の事。むっちゃ好き」

「犬、犬、鳴け、犬! 記憶、消せ、小日向の記憶、消せ! 日景に関する記憶、消せ!」


 小日向の言葉を聞いて雅が鞄をバシバシ叩きまくる。

 キレまくり顔で。

 無駄だしそんな事しても道具壊れるだけだから止めたれ。


「いや、いや、てかさ。その前になんか違うでしょ、これ。ちょっと待てよ、なぁ。この空気は違うよな? もっとあれよ。雅の事しっかりと怒ってやらんと駄目だろうが。何でこんなほのぼのしてんだよ」

「そんな事言われてもなー……」

「え、何で抱き着いた? また雅の事煽ってんのか?」

「大好きで信頼できる彼氏がこうして隣にいるからかな?」

「理由になってねぇし、てか意味わかんねぇし」


 でも抱きしめ返しといた。


「俺も大好き」

「きゃー」


 俺達の今のIQは、きっと一桁。







「いい加減にしてよ!!!!」







『!?』


 雅の出した大声に、浮かれた空気が霧散する。


「何なのよ小日向!」

「何なのって、何が?」

「どうして!?」

「いや、どうしてって言われても……」

「離れて!」

「おっと」


 雅にどつかれた。


「ねぇ、何で!? どうしてなの!?」

「み、雅?」


 腕を強く掴まれて、流石に小日向が動揺する。


「どうしてなのよ!」

「ちょ、ちょっと痛いって。落ち着いて、雅」

「ねぇ、小日向!」

「そもそも何がどうしてなのか私にはさっぱり……順を追って話してくれないと」

「だから!」

「はーい一旦ブレイクだよー」

「少し落ち着きなさい、雅」


 渚と清香が両側から雅を掴んで小日向から離した。

 俺がやると余計キレて大暴れしそうだったから、正直助かった。

 陽一もその心配があったから近寄らなかった様だ。


「離しなさいよ! 何なのよあんた達!」

「あんたが何なのよ」


 雅が振りほどこうとするが、流石に二人がかりで押さえつけられるとどうしようもない。

 

「あんた達だって同じでしょ!? 小日向があんな男と付き合ってるの見てて嫌じゃないの!?」

「嫌じゃないけど」

「私も別に嫌じゃないなー」

「大体、さっきから日景日景男男ってあんた言ってるけどそれ、本当は男がどうとかそういう話じゃないでしょ? 男に限らず女だろうと誰だろうと、小日向が自分以外の誰かと居ればそれだけであんたは不満に思うのよ。それは単なる独占欲。違う?」


 怖。

 雅の目に怒りと殺意がこもってる。


「あんたのそれは好意というよりただの執着心ね」

「違う!」

「そもそもあんたはどうしてそんなに――」

「好きだからに決まってるでしょ!? 私は好きなの! 小日向の事が、好きなのよ!」

「いや小日向。そんな困った顔で俺の顔を見られても困るんだけど。キスしてやる位しか出来ないぞ?」


 今マジでやったら雅が発狂するだろうからしないけど。


「私はあんた達と違って本気なの! 本気で小日向の事が好きなのよ!」

「………………」

「えー、そういう言われ方は心外だなー」


 渚が無表情になり、清香が膨れる。


「私だって小日向の事は好きだよ?」


 清香が小日向の方をチラッと見た後、雅に言う。


「むしろ好き通り越して愛しちゃってるレベルでね」

「だったら!」

「でもさ、私達が小日向にしてあげられる事には限界があるんだよ。わかるでしょ? 女の子同士じゃ出来ない事が沢山あるの。私達じゃ小日向に子供を作らせてあげる事だって出来ないし、皆に祝福して貰える結婚だってしてあげられない。女の子じゃ与えられない幸せが沢山あるの」

「だから小日向、そんな目で俺を見るな。そして清香、お前ガチ過ぎんだろ。あっさり当たり前の様に言ってるけど、人生設計レベルで小日向との事考えてるとは思ってなかったぞ」


 だがこんなとんでも発言を聞いても雅は動じない。


「別にいいじゃない」


 むしろ清香の言葉に反論を始める。


「仮に男の日景と一緒になったって、必ず満点の幸せな生活が送れるとは限らない。あいつの性格考えたら浮気だってしそうだし、小日向の嫌がる事だっていっぱいしそう。子供と結婚だけが人生の全てじゃないでしょ? それを手に入れているのに不幸な人はいっぱいいるじゃない。そう考えたら小日向は私と一緒になった方が絶対に幸せになれる。私は百点満点で百点の幸せはあげられないけど、八十点満点で八十点の幸せな確実にあげられる。だから小日向は私と一緒にいるべきなのよ。そこの男とじゃなくね」

「待て待て小日向、逃げようとするな。離してじゃない。お前今本気で逃げようとしてるだろ。当事者のお前が逃げようとすんな」


 自信満々の表情で雅が清香に言う。


「最初から諦めてるあんたとは思いの強さが違うのよ。さっさと離しなさい」


 雅の気迫に清香が気圧され、ゆっくりと手を離した。


「ほら、あんたも」

「…………」


 だが、渚は離さない。


「……ふふ」


 どころか、不敵な笑みを浮かべる。


「だったら悪いけれど、私の方が思いは強いみたい」

「はぁ?」


 渚の挑発。

 小日向はもう今すぐこの場から去りたがっている。


「あんた風に言うと、私は小日向に百点の幸せを抱かせた上で、更に八十点の幸せを贈るつもりよ」

「は? 何言ってるの?」

「私は小日向に幸せの制限をかけるつもりはないわ。日景の事が好きだっていうのなら、そのまま日景と添い遂げさせてあげてもいいと思ってる」


 何で上から目線やねん。


「ほら、あんたも清香と同じじゃない」


 そしてそれを聞いて雅が馬鹿にする様に笑う。


「違うわ」

「何がよ」

「私は小日向に望む幸せを与えるだけじゃなく、私も小日向と一緒に幸せになるの。あんたのそれとは全然違う」

「は?」


「わからない? 私は小日向と日景が一緒になった後、私も日景の側室として一緒に居続けるつもりなのよ」


「え?」


 その場にいる全員の思考が一瞬止まる。


『………………』


 そして渚の言ってる意味を理解した瞬間――







『えぇぇええええええええ~~~~~~~~!!!!!!!!』







「これなら小日向も幸せになれるし、私も小日向とずっと一緒にいられる。皆一緒に幸せになれるわ」

「な、なな何言ってるのよ! そんなの駄目に決まってるでしょ!」


 ずっと会話内容にドン引いていただけだった小日向が、やっと会話に混ざった。


「そ、そうだよ、俺だって今の話初耳だぞ」

「そうでしょうね。今まで誰にも言っていなかった話だもの」


 渚が小日向を愛おしそうに見つめる。


「私はね? 出来ない事や最初から無理な事をいつまでも考え続けるのは、時間の無駄だと思うの。不可能な事にいつまでもこだわり続けるのは無意味だとしか思えない。それなら自分が出来る範囲での代替案を考える方がずっと建設的よ」


 そっと下腹部を撫でる。


「私にはね、一つ夢があるの」

「ゆ、夢?」


 ドン引く通り越して怯え始めた小日向が不安そうに俺の手を握る。


「そう、夢……。私は、小日向の子供と同じ遺伝子を持った子供が欲しい……」


 うっとりした顔がもう完全にサイコ思考のあれだ。


「無理だから! 女の子同士で無理だからね!?」

「ええ、知ってるわ。だから私は、日景との子供が欲しいの」

「えぇ、俺!?」

「何で!?」

「そうすれば、私の子供は日景の子供と同じ遺伝子を持つ事になる。日景の遺伝子を持った小日向の子供と、日景の遺伝子を持った私の子供」

「落ち着け! 落ち着くんだ渚! そこに小日向の遺伝子は含まれてないぞ!?」

「ええ、わかってるわ。そんなの無理だもの。だから言ったじゃない。無理だとわかってる事に私はこだわり続けないって。だから私は、現実的に手に入れられる範囲にある私の幸せを求めるの」

「「いやいや、いやいやいやいや!」」

「直接小日向に関係する遺伝子が欲しいなら小日向の父親や弟を狙うのが早いけど、それをすると私は小日向から嫌われる。ずっと一緒に居る事が出来なくなる。だから私はそれをしない」

「駄目だろ!? 俺だって駄目だろ!?」

「大丈夫よ。小日向は私が日景に近付く分にはそこまで拒否反応を示さない。それに私は、はっきりと言える。私は小日向から日景を奪う気はないわ。だからそういう心配をする必要も無い。それがわかっていれば、小日向は私と日景の事を許してくれる」

「おい小日向。あいつ頭おかしいぞ」

「………………」


 小日向は何も言わない。

 そして渚はいつの間にか雅の事を離していたが、雅も渚の発言にドン引いていてそれどころじゃない。


「それで、話を戻すけど」


 渚が雅を見下す笑みを見せる。


「誰の思いが、私よりも強いって?」

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