最近の女子小学生強過ぎ
脳を氷水でジャブジャブ洗うイメージ。
それ位しないと頭が吹っ飛ぶ世界が吹っ飛ぶ。
紅梨ちゃん今何言った。
「ど、どういう事だね? 紅梨ちゃん」
「だって……」
体育座りをして、顔を膝で半分位隠しながら小さな声でもそもそと言う。
「あ、あぁいうエッチな事をするのは、赤ちゃんを作る為なんでしょ? だったらお兄ちゃんが私でそういう事をする気になったって事は、そういう事なんじゃないの?」
「ちがっ、あれは!」
言えない。
言えるわけない。
男の股間が大きくなるシステムと、男の性欲についてなんて力説したら、即警察に連れていかれる。
「違うの? じゃあ何で大きくしてたの?」
「いや、ね? だからあれは……ね?」
(パンツ見えてるパンツ見えてるパンツ見えてるよ紅梨ちゃん! スカートで体育座りするんじゃありません!)
いつもならともかく、今は雰囲気的に指摘が出来ない。
したら絶対藪蛇になる。
つーか今、マジでヤバい。
俺の理性のほとんどは、小日向によって成り立っていた事がよくわかった。
色んな意味で溜まっている今、下であった様な胸の感触は勿論、今みたいな視覚的な物でも、些細な刺激が全て命取りになる。
一応言っておくが、俺はロリコンじゃない。
ロリコンじゃないが、紅梨ちゃんを抱けるか抱けないかと言われたら、……うん。
勿論!
一男として、何より兄として!
この幼い少女を傷付ける様な真似は絶対にしたくないし、しない!
しないけど……!
(モジモジする太ももの付け根から目が離せない!)
どうしてパンツがちょっと大人っぽいの!?
紅梨ちゃんは別に長身という訳じゃないし、特に大人っぽい顔立ちをしている訳でもない。
けど、胸とかそういう男の欲望が集中する部分が大人みたいに育っていると、やっぱりどうしてもそういう目で見えてきてしまう。
いや、いつもなら大丈夫なんだ。
理性と、大事にしたい、守ってあげたいという兄としての愛情から、そういう欲望を浄化できる。
いつもなら。
今は無理!
溜まり過ぎた性欲から、溢れ出す欲望を浄化しきれない!
「そ、の……」
どんどん紅梨ちゃんの顔の朱色が濃くなっていく。
「わた、しは……別に…………お兄ちゃんになら……エッチな事、ちょっと位なら、され、ても……」
砕いたドライアイスをジョッキ一杯一気飲みしたくなった。
「紅梨ちゃんはー……そのー……俺の事がー……好き、なのかな?」
「そっ、そんなんじゃないけど!」
「え、じゃあ俺の事嫌いなの!?」
「嫌いじゃないよ! そんな極端なのじゃなくて! ……じゃなくて」
体育座りのまま膝をすり合わせる。
「…………やっぱ結構好き、かも」
液体窒素の風呂に入ってクールダウンしたい。
「き、気持ちは嬉しいんだけど、俺にはその、小日向が居るからさ」
「今は居ないじゃん」
体育座りを止めて、四つん這いでこちらに近づいてくる。
「ぁ、紅梨ちゃん?」
「……少し位なら、私だってそういうの興味あるし」
紅梨ちゃんの汗ばんだ体臭に、『その気になっている』香りが混ざっている。
フェロモンとでもいうのだろうか。
独特な、異性に発情を伝える匂い。
小学生でそういうのがもう出るのかという驚きと、その事に気付いてしまった事への、後悔。
理性は留まれと告げる。
だが雄としての本能は、求められているのだからと受け入れさせようとする。
「…………大丈夫だよ」
「な、何が?」
「エ、エッチな事しても私まだ……体が赤ちゃん、作れる様になってないから……」
俺はもう限界だった。
「紅梨ちゃん!」
「!?」
ガシッ、とか弱い肩を掴む。
「な、なにゅな、にゃに?」
「冷たい物飲もうか!?」
「はい?」
気持ち前かがみ気味に立ち上がる。
「ちょっと待っててね! すぐ持ってくるから!」
「えぇ~……?」
急いでドアを開けて、逃げる。
後ろから小さな声で、「へたれ」と聞こえた気もするが、聞かなかった事にする。
(怖い! 最近の小学生怖い!)
最近の小学生というより紅梨ちゃんが怖いのか。
(アグレッシブ過ぎる!)
あんなんヤバ過ぎるでしょ。
(何でいきなりあんな――)
ドアを開けた瞬間、気付いた。
「姉さんの仕業か!」
姉さんが廊下に座り込んで、俺達の様子を窺っていた。
紅梨ちゃんに何を吹き込んだのか知らんけど。
「これはちょっとやり過ぎでしょ!?」
「………………」
俺を見上げて少しの間目を合わせた後、スクッと立つ。
「あのさぁ、姉さん! 紅梨ちゃんの事だけど!」
「記憶の事」
「え、記憶?」
突然何の話だ?
「その気になれば一瞬で片付く事を、どうしてわざわざこんなに手間と時間をかけてるの?」
「…………」
「イケメンに不可能な事は無い、でしょ?」
「…………」
「どうして解決しないの?」
姉さんが俺の顎を指でなぞる。
「………………ふふ」
口角を少し上げる程度だが楽しそうに笑い、俺に背を向けると後はもう何も言わずに自室へと行ってしまう。
「……何気にこれ、上手く誤魔化されたよね」
その後、冷やしたほうじ茶を用意して部屋に戻ると、紅梨ちゃんは居なくなっていた。
ホッとした様な、情けない様な、凄く微妙な気持ちになった。
「最近の小学生わっかんねぇなぁ~」
「俺は日景兄が何したいのかがわかんないよ」
真斗の部屋で勉強する真斗を背もたれにしながら、漫画を読む。
「重い」
「勉強か。どれどれ、イケメンなお兄ちゃんが教えてやろうじゃないか」
「日景兄感覚で理解するタイプだから教えてもらってもよくわかんないし、いいよ」
「あ、そう?」
少しだけ寂しい。
「もうちょっと待っててよ。そしたら予習も終わるから」
「は、予習!? お前宿題とかじゃなくて予習してたの!? 小学生なんだしいいだろう、そんな事しなくても」
「しなくても勉強はわかるし、必要無いって言ったら無いのかもしれないけど、毎日一時間でも二時間でもいいから勉強する癖だけは付けておきなさいって姉ちゃんが」
「あいつ自分はしない癖に人に言う時だけ真面目な」
仕方ないと真斗のセーブデータを消す遊びをしようとしたら、速攻で予習を止めてくれた。
「日景兄はいつも本当に無茶苦茶だよね」
「あぁ、確かに俺はいつも無茶苦茶イケメンだな」
「……それで? 今日は何の用事で来たの? ただ遊びに来ただけ?」
「まぁ、なんつーか? 遊び半分、もう半分は」
「姉ちゃんの事だよね」
「わかってるんじゃないか」




