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皆なかよしたのしい登校

 今日の俺は機嫌がいい。

 遂に妹達と一緒に学校へ行く夢が叶ったからだ。

 姉さんはいつの間にか一人で先に行ってしまっていたので、それが少しだけ残念だったが。

 駅で紅梨ちゃんとは別れて、小日向桃香ちゃん俺の三人で電車に乗った。

 電車の中でいつもの癖が出て、桃香ちゃんが居るのについ小日向のケツを触りそうになった時はヒヤッとした。

 その後電車を降りて歩き出すと、見知った顔が見え始める。

 

「桃香」


 誰かに肩を叩かれて桃香ちゃんが振り向く。


「おはよう、桃香」

「あずみ。おはよう」


 清楚な笑みを浮かべて朝の挨拶をする少女は、桃香ちゃんの友人のあずみちゃんだ。


「あずみちゃん、おはよう」

「はい、おはようございます海馬沢先輩」

「え!? 兄さんとあずみ知り合いなんですか!?」

「そりゃ桃香ちゃんの友人関係位兄として把握してるに決まってるだろ」

「ひぃぃ!」

「先輩の冗談だよ、桃香。海馬沢先輩と知り合ったのは桃香が海馬沢先輩の妹になる前だから」

「あ、そうなんだ。……え? ちょっと待って。尚更どこで知り合ったのか気になるんだけど」

「ふふ、桃香。焼きもち?」

「だ、誰が!」

「おやおや、お兄ちゃんの事をそんなに独占したいのかい?」

「日景、その変にしておかないと本当に嫌われるよ桃香ちゃんに」

「小日向せんぱ~い」

「はいはい、よしよし」

「ほらやっぱり居たー」


 そこへ誰かが声をかけてくる。


「なんか騒いでるなーってとこに行ったら大抵あんたが居るわよね、海馬沢」

「姫乃先輩」

「おはよう、海馬沢」

「はい、おはようございます」

「千明ちゃんもおはよう」

「おはようございます、姫乃先輩」


 そしてあずみちゃんを見てちょっと驚いた顔をする。


「あら? 珍しい子が居る」

「おはようございます、姫乃先輩」

「うん、おはよう」

「え!? ちょっと待ってあずみ! この先輩とも知り合いなの!? 顔広過ぎない!?」

「さて、何ででしょう?」


 あずみちゃんは指を立ててシーッというポーズをとる。


「そっちの子は初めましてだね」

「あ、はいっ」


 姫乃先輩に話しかけられ、桃香ちゃんが少し緊張した顔になる。

 相手が高等部だからか。


「初めまして、海馬沢桃香です」

「あぁ、君が噂の妹さんか。初めまして、高等部二年の姫乃です。宜しくね」

「はい、宜しくお願いします」


 並んだ美少女達を見て思う。


(小日向>あずみちゃん≧桃香ちゃん、少し間があって姫乃先輩、か……)


「ねぇ海馬沢。女って案外そういう失礼な視線にちゃんと気付いてるからね?」

「そう思うでしょ? でも男の視線の貪欲さにも女は気付くべきですよ。実際の所、男って女が気付いてる更に倍位は胸とか太ももとかに視線送ってますからね」

「………………」

「!? しまった!」


 桃香ちゃんが居る事を忘れていた。

 どうしよう、すっげぇ白い目で見られてる。


「もう駄目だぁ~……桃香ちゃんに変態だと思われたら俺生きていけないぃ……」

「最初から変態だと思ってますけどね」

「てかあんた、自分の彼女に変態だと思われるのはいいの?」

「小日向は変態な俺の事が好きなんです。大好きなんです。だから別にいいんです」

「どうしよう、私彼氏とコミュニケーションが足りてない事に気付いた」

「足りてるだろ? あんだけしょっちゅう体を――」

「うわぁぁああああ!!!!」

「ペロペロペロペロ」

「舐めるな! 突然何なのその奇行!?」

「だってお前が手を舐めて欲しいって俺の口に寄せるから……」

「ふさいだんだよ! 口を! 手で口をふさいだの! 舐めろなんて言ってない!」

「言ってなくても手なんて口元に寄せたら舐めたくなるのは当然だろ?」

「舐めたくならないよ! 犬じゃあるまいし!」

「犬じゃない。俺はイケメンだ」

「あーーーーもう面倒くさい面倒くさい面倒くさい面倒くさい!」

「あっはっはっは! ……って、あれ?」


 いつの間にか他の人が居ない。


「皆俺達が好き放題イチャつける様に気を遣って先に行ってくれたのか」

「違うよ! 皆逃げたんだよ!」

「逃げた? あーそういう事か。……プリティキューティ愛しのマイハニーが道端で大声なんか出すから……」

「私が大声出す羽目になったのは誰のせい……あぁ、もう!」


 小日向はいつもテンション高くて楽しそうだ。

 そりゃ俺みたいなイケメン彼氏が居たら毎日楽しいだろうけど。




 ドンッ




「あ?」


 突然背中をどつかれた。


「おいコラ、何すん……えぇ?」


 苛立ちながら振り返ると、黒髪ロングの美少女から、殺意と憎しみをぐつぐつ煮詰めて仕上げに怒りと嫌悪を振りかけた様な最低最悪の視線で睨まれていた。

 

「いや怖い。その目マジで怖いってば。止めて」


 美少女というのは、あくまでその恐ろしい目元を黒い線で隠せばの話だ。

 黒い線を取れば彼女は恐怖の象徴でしかない。

 目つき怖過ぎる。


「何でどつかれた被害者の俺が睨まれてんの?」

「もー、相変わらず(みやび)は日景と仲悪いんだから」


 小日向に話しかけられた瞬間、あれだけ恐ろしい目つきをしていた彼女が、突如拗ねた幼い少女の様な愛らしい顔になる。


「別に仲悪いわけじゃない。たまたまぶつかっちゃっただけ」

「あんなたまたまがあってたまるか」

「………………」

「だから怖いって。その目やめぇや」

「雅。そんな顔しちゃ駄目、女の子なんだから。雅は美人なんだからそんな顔してたら勿体無いよ」

「小日向……」

「そうそう、美人なんだから勿体無いって。そうやっていつも小日向と一緒に居る時みたいな可愛い顔してればすぐにお前にも彼氏……ごめんごめんやめてその目本当に怖いって」


 俺を見る度鬼の様な目つきになるこの子の名前は、雅。

 俺と小日向が小学生の頃からの付き合いだ。

 小日向の事が好きで好きで仕方ないらしく、その彼氏の俺の事が嫌いで嫌いでたまらないらしい。

 会う度この様に強烈な敵意を向けられるか、無視される。

 雅の小日向好きは筋金入りで、小学校から今に至るまで小日向以外の誰も仲がいい友達が居ない。

 いいのかそれでお前の人生。

 俺の場合はそれでも全然良いけど。

 小日向さえ居ればそれでいい。


「小日向、早く学校行こう?」

「え、ちょ、ちょっと待って引っ張らないで」

「いいよ、俺の事は気にすんな」

「う、うん。ごめんね日景」

「小日向早く」


 雅がぐいぐいと強引に小日向の手を掴んで学校へと連れていく。

 あんなんでも小日向の親友だし、今位は譲ってやろう。

 どうせ夜は俺の物なんだし。


「……ん?」


 と、ここでふと気付いた。


「あれ? 俺いつの間にか一人じゃね?」

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