次元の歪みの召喚事故
今回、里奈と奈美の双子視点です。
里奈と奈美は、バスケットに手作りのお弁当とお菓子を入れて。
事前に仕事から帰ってくる日程を聞き出し、家康の家の近くで待っていた。
気合いを入れて用意したのは、お弁当はサンドイッチとポテトサラダと唐揚げ。
そして、それぞれ貯めたお小遣いから買った真新しい服を纏い、鈍感な家康の興味を少しでも惹こうと必死である。
里奈は大人しめな白いシャツに、赤いリボンと茶色のふんわりとしたオーバースカートに、白ソックスに赤い靴で纏めている。
奈美は、青い膝丈ワンピースをオーバーニーソックスと、水色の靴で纏めていた。
二人は中学生にしては大人びているのと、顔立ちが整った美少女の部類に入るから。
すれ違う人達は、チラチラと目線で追ってしまう。
しかも、今日は気合いを入れたオシャレさんだ。
目立つのも無理はなかった。
だが、それでも鈍感な家康には届かないのだ。
今日も可愛いね?
位で止まるのだ。
「それでは榛名さん、お世話になりました。」
家康の声が聞こえた。
榛名さんって誰だろう?
そう思って、家康の前に居る女性を横からチラリと眺める。
抜けるような白い肌の、同性の自分達でも見惚れるような、稀代の美貌の持ち主がそこに存在した。
ガツンと浮かれた心が冷えて行く。
「いいのよ、私達もう仲間でしょ?
気にしないで?
その内頼りにしますから。」
「タハハ、お手柔らかに。」
アレが仲間?
あんな優しそうな、輝く美女が?
視線が流れてきたら、同性だってドキドキしそうな彼女を、そんな至近距離で、いつものように通常運転対応する家康に、底知れぬ不安を覚えた。
アレがライバルなら勝てる気はしない。
泣くとは思うが、諦めもつく相手だ。
けれど、アレですら何とも思わないなら、私達は?
双子は変なところで思考共有化してしまう。
何も言わなくても、同じ事を感じたのか、二人の握る手が、少し強くなった。
「アレ?長谷川姉妹?」
私達に気付くと、へらっと笑って家康がこちらを向いた。
釣られて榛名さんと呼ばれた女性が、こちらを向いて柔らかく微笑む。
何という笑顔の破壊力。
「お友達?」
「タハハ、家族ですよ。」
その言葉に榛名さんは何か察して頷いた。
しかし、その直後彼女の笑みが固まる。
「次元の…歪み?」
「え?まさか、こんな所で?」
オロオロし始める二人に、私達は困惑する。
「何を言っているの?三河っち。」
「二人共、そこは危ないからこちらにっ!」
慌てて双子の方に駆け寄る家康。
「ダ、ダメ!
今動いたら、家康君も巻き込まれるわ。」
その手を掴んだ榛名さんは、焦った様子で引き留めようとする。
だが、そのタイミングで世界がグニャリと揺らぎ、反転した。
残された場所には、何も残ってはいなかった。
そして、次元の歪みの召喚事故に、四人は巻き込まれてしまったのだった。
榛名さんは、中学生には登れないエベレストみたいです。
一体四人は何処へたどり着いたのでしょうか?