もんじゃ焼きはダークマターでは無い、はず。
粉な物は美味しい。
ジュージュー良い音を立てて、もんじゃ焼きの土手を作っている。
何故か俺が。
おかしい、榛名さんはここには新人歓迎会的な事をするね。
と、良い笑顔で言われたが。
その声は、拒否出来ない何かがあった。
が、歓迎会なのに、俺はこき使われて居る。
マジおかしい。
もんじゃ焼きもお好み焼きも、そこに並んだタレたっぷりの焼きまんじゅうだって、大好きだからまぁ良いんだけどさ。
事は待ち合わせの会社の裏手についてからまで遡る。
少し早めに会社裏手に辿り着いた俺は、近くの電柱に寄りかかる。
まぁ、呼ばれた新人が、遅刻するよりはいいか。
そう思ってふと裏手側の壁に、もう一人男性が居た事に気付いた。
会社の人かな?
しかし、声をかけて来る事もなく、そのままだった。
しかし、何だろう。
見知らぬ男性が、さっきからチラチラこちらを見ては、目が合うと逸らされる。
凄いイケメンで、服はパッと見て何処にでも有りそうな振りした高級品だ。
よく見ると、ブランド名が小さく書かれて居たり、ブランドマークが入って居たりする。
多分一点物だろうか?
羽振りの良い同級生が、ブランド品を揃えてもこうはならない。
服に負けてしまうだろう。
しかし、目の前のイケメンさんは服が負けて居る。
何処かの坊ちゃんが、庶民に憧れた安そうな風の格好して見た様に見えたのは、気のせいだろうか?
それにしても、先程から凄くキョドりすぎなんですが!
何だろう、人見知りの激しい大人しい紐川陣と言う同級生を思い出した。
あいつはイケメンでは無かったが。
何処かこのイケメンさんに、何処か雰囲気が似ている気がした。
「紐川思い出すなぁ。」
それは、聞こえるか聞こえないかの小声で呟いた。
「っえ⁈」
ビクッとして、カチコーン!とばかりにイケメンさんは固まった。
え?何その反応。
ん?今の声は…?
しげしげと相手をよく見ると、身体付きも背丈も似ている。
違うのは、髪は外人さんみたいな色合いの髪色と、オールバックした前髪から覗く瞳もカラフルな瞳だ。
それ以外は当てはまる。
トドメはあの声。
どんなに声音を変えても、俺は相手の声を忘れない変な特技がある。
「紐川…なのか?」
「俺は…。」
俯いた紐川に俺はサムズアップ。
「何だよ社会人デビューか?
何処のイケメンさんかと思ったぜ紐川!」
もちろん良い笑顔でだ。
「そんな、見破られ…た?!」
見る見る青ざめて行く紐川を見て、何か俺やらかしちゃったかなぁ?と奴を伺う。
「あはは、だから無意識発動には叶わないって言ったでしょ。
紐川君…いいえ、高天淡海君。」
悪戯が見つかった子供の様に、罰の悪い顔で奴は榛名さんを睨む。
「るせーな。流石にすぐにバレると思わなかったんだよ。」
噛み付く様に怒鳴ると、我に返ってこちらを向いた。
「高天…あれ?
この会社の、創始者一族の苗字に似て、うぇぇぇぇ?」
「騙していて悪かったな。
俺は素姓隠して彼方此方の学校に転校しまくって、ここの人材と俺の部下に相応しい者を探していたんだよ。
まぁ、家訓とは言え済まなかった。」
綺麗なお辞儀で謝罪された。
「まぁ怒ってないから、ちと驚いたけど。
この会社自体がびっくり箱みたいだし、気にすんなよ。」
苦笑しながら答えた。
何も言えねぇ。
家訓で友達作れる子供時代に転校三昧とか、色々大変だな金持ちも。
俺のいつもと変わらない対応に、やっと安心したのかホッとした顔で説明を続ける。
「榛名達と出会い、こいつらの異世界召喚絡みでトラブル対応とかしてた後にこいつらと友達になってな。
榛名にしろ草薙にしろ、人を寄せる体質みたいだから。
それからは転校せずに少しづつ集まる人材をみてたりした。
三河は特に面白かった。
ここに推薦したのは俺なんだよ。」
「うぇぇぇぇぇぇ‼おまえが原因カヨ!」
流石に驚いて、梅干しグリグリする。
「ちょ!やめろ、痛いイダダダダダダ!」
「あらあら、家康君が攻めで淡海君がまさかの受けだなんて。
薄い本が厚くなるわぁ。」
「榛名!馬鹿言ってないで助けろ。」
「ちょっと榛名さん、俺はノーマルなんでやめてくださいよ。」
「え?意味わかっちゃうの?」
何故か俺の反論に変に食いつく。
「家の…孤児院の年下の双子の一人が腐なんですよ。
普段物静かなのに。
好きな事でテンションあがると、止めようかなにしようが、俺が男なの分かっていても、腐話強制的にふってくるんで、知ってます。知りたく無かったけども。」
「双子…ああ!引っ越しの時に見かけた可愛らしいお嬢さん達ね。
そう、家康君に好きな話を興奮して共通認識させたい位、慕われて居るのね。」
「まぁ、そうかもしれませんね。」
柔らかな笑顔で言われても困る。
ついて来れない紐川、あ、いや高天が不思議そうに俺たちを見てるしな。
「っと、これで全員?」
技と話題をズラす。
「本当はあと二人呼ぶ予定が、別件で異世界なのよ。
だから今回はこの三人ね。」
「そっか、了解。
んで、これから何処に行くで有りますか?隊長殿。」
からかう様に俺は笑う。
「焼きまんじゅうともんじゃ焼きの美味しいお店よ。」
榛名さんも、負けずに悪戯っぽく微笑みを浮かべる。
その後、俺達は榛名さんの案内で、車で郊外の学校近くの駄菓子屋に立ち寄った。
「駄菓子屋?」
「そおよぉ、レトロゲームと駄菓子と焼きまんじゅうと、焼きそばともんじゃ焼きが有るの、美味しいわよ。」
懐かしい感じのお店だ。
子供が立ち寄る事が運命付けられた駄菓子屋には、何故かこう言った物を取り扱う。
元々は文房具や運動着や上履きなど。
学校指定のアイテム扱う片手間なお店が多いみたいだ。
最近はあまり見かけないが、まだ残って居たんだな。
「あら 榛名ちゃんだべ。
いらっしゃい、まだ子供らは来ないからゆっくりするといいべ。」
ガギグゲゴ系が強い群馬弁が飛び出した。
だべとかだがんとかつける語尾は、まるで何処かの超猿宇宙人の奥さんみたいだが、似たような発音だ。
「はい、有りがとおばちゃん、んじゃあね、まずは焼きまんじゅう三本と、焼そば小三つともんじゃ焼きカレーとココア二つね。」
「あいよ、足りなかったら呼んで頂戴。」
そう言って、奥へ引っ込んだ。
「さて、子供向けだから基本量少ないけど、足りなかったら追加出来るから。
好みの物追加したら良いわ。」
待っている間、レゲーをする俺。
シューティングの10円のテーブル筐体とか、これメンテどうやってんだろ?
まぁ、楽しいからいっか。
チュドーン!
あ、死んだ。
「へったくそだなあ。」
と、眺めていた高天に代わる。
チュドーン!
やはり死んだ。
レゲー難しいぞ。
「お前だって瞬殺じゃねえか。」
「あ、私もやるー。」
ピコピコ音が続く。
あ、一面の火山安全地帯ことあんちに置いたよ、この人慣れてるな。
だが途中でおばちゃんがくる。
「はーい、お待ちどうだべ。
焼きまんじゅうと焼そばはこっちのテーブルにおいたから、もんじゃ焼きは此処で焼くといいべ。」
「もんじゃ焼きやり方わかる?」
「あ、俺分かるよ。」
「じゃあお願いしてもいいかしら?」
そして冒頭に戻る。
しかし、すごい色だ。
カレー味は凄くカレー色というか、凄く自己主張激しい色合いのカレーもんじゃ焼きで具は少なく汁大目。
ココア味は、何がどうしたらこうなるのか分からない紫色。
例えるなら紫芋の色でこっちも汁大目。
そしてとても甘い。
どちらも駄菓子っぽい色合いだ。
なけなしの具で土手を作り、ある程度焼いたら中央に残りの汁を入れる。
少しして外の土手と混ぜて伸ばして焼いたら、あんなに水っぽ物が、薄皮になる。
半熟派はパリパリになるのを待たずに食べるし、パリパリは香ばしいのが好きな人はパリパリになるまで待つ。
「俺の知ってるもんじゃ焼きと違う。」
「奇遇だな、俺もだ。」
おっかなびっくり食べ始めて、二人して顔を向き合う。
「「あれ?んまい?」」
後は終わるまではすぐだった。
「おばちゃん、もんじゃ焼きカレー追加一つお願い。」
「あ、俺ココア味の方追加で。」
ドカーン!
あれ?今の音。
「アーン五面で終わったわ、美味しそうな匂いにやられたわ。」
「あ、お好み焼き焼けたからこれ食べるか?よっと!」
お好み焼きを器用に引っくり返す。
「おお!うまいうまい。
って事はもんじゃ食べ終わって気に入ったのね、良かった。」
「間に食べた焼きまんじゅうも焼そばも美味かったよ。
よく知ってたね。」
「ここ、親戚の家が昔近くに有って。
こっち来ると良く連れてこられたのよ。
なかなかいいでしよ?」
「いいな、そういうの。
俺家族は孤児院の連中しか居ないから。
そう言いうの本気で羨ましいよ。」
榛名さんと淡海君(下の名前で呼べと言われた)は何とも言えない表情に一瞬なる。
「馬鹿ねえ、そのうち彼女でも作って。
結婚したら、その子供達と思い出作ればいいじゃない。」
クスクス笑う榛名さんと、うんうん偉そうに?頷く淡海。
「結婚ねえ、何で言うか。
今はそんな気も時間もないから、ぶっちゃけ想像つかないや。」
二人が何かいう前に、おばちゃんが、割り込む様に口を開く。
「はい、もんじゃ二つお待ち。
結婚なんて物は、なるようになるもんだべ。
色んな恋や仕事や遊びの寄り道もいいけんども、子供が作りたいなら早い方が良いべ。
野郎はともかく、女の晩婚は出産で身体に負担が掛かって死ぬ事もあるからの。
日本なんか医療先進国だけんども、医療遅れて居る国とかは対応出来んらしいべ。」
知恵袋発生なう?
「んで、榛名ちゃんの本命はどっちだべ?」
実に良い笑顔。
固まる三人。
「違うよおばちゃん、、二人は元同級生で今は会社の同僚なの!
だからそう言うんじゃ無いのよ。」
即座に反応したのは榛名さんだったが、少し赤くなっている。
結婚話のブーメランが、予想外な別方向から飛んで来た。
「そーかいそーかい、どっちも気になるんかい。」
しかも反論聞いちゃ居ない。
どうして年寄りが色恋とか結婚見合いの話を始めると、馬の耳に念仏状態になるのだろうか?
榛名さんさらに真赤な林檎顏。
やれやれ、助けてやるか。
「ねえねえ、おばちゃんだって、若い頃モテたんでしょ?」
「何を急に。」
怯んだおばちゃんに畳み掛ける。
「こんなに気さくで話しやすい女の人で、愛嬌も有るなら。男がほおって置かなかったんじゃないかなーって。」
無邪気に言ってから、ニコッと笑う。
秘儀、話題ずらしの誉め殺し!
面倒な相手は、これでだいたい何とかなる。
案の定、おばちゃん凄くうろたえた後に、やだよこの子は!
と定番の背中バシバシをしてご退場。
地味に痛い。
「あ、そろそろ焼けますよ、これ。」
しれっと言うと、榛名さんと淡海君は何とも言えない顏で食べ始めた。
そして、食べ終わった後に会社まで送って貰い、俺は帰宅した。
「末恐ろしいな、家康の奴。
直ぐにバレるとか、今まで誰かとこの状態でエンカウントしても、誰も全く気付か無かったんだぜ。」
「あー、あれは訓練の成果も有るんだと思うけど。
普段から勘鋭いしね。
まぁ、隠し事無くなってあんたも気が楽になったから、良いんじゃなぁい?」
「まあ、な。」
「私的には、あのおばちゃんからのしつこい根掘り葉掘り攻撃を、あんなに簡単に翻せる事の方が恐ろしいわ。」
「ああ、確かに。
ありゃしつこそうだ。」
「まぁそれだけ苦労したんでしょうね。」
「孤児院絡みは大人がまともな奴と、知名度上げる道具として利用する馬鹿のどちらかだし。
孤児で無い子供達は、残酷な事もする。
人を伺う生き方が徹底してるんだろうよ。」
二人は溜息を吐いて、それぞれ帰宅した。
ついに淡海君の正体が⁈
いやぁ、それにしても、今回出したもんじゃ焼きはガチで伊勢崎で知人に連れていかれて食べました。
凄く合成着色料な、自己主張激しい色合いです。
甘かった。
まだ有るのかは分かりません。
さて、そらそろ異世界が出てきます。
お楽しみに。