表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/17

榛名さんの手とり足とり巴投げ 2

榛名さんマジどえす。

ドシャー!

カキンカキン。

たたたたた。

バターン。

もう何の音だって?

さっきから受けて居る、榛名さんの手とり足とり指導だよ。

柔軟体操と走り込みの後、まず学校で基礎を学んだ柔道と剣道と空手をする事になった。

柔道で巴投げされ、空手では飛び蹴りをくらい、剣道では胴を貰う。

どれも何やら急所ばかり狙われるから、マジ容赦ねえよ。

運動神経と反射神経はそれなりに自信有ったけど。

うん、本当それなりなんだな、俺。

攻撃重くて鋭くて、動きも早くてこっちは急所避けるのが手一杯。

なのに榛名さんの指導は、かなり手を抜いてくれて居るらしい。

ああ、榛名さんの本気怖いわ。

怒らせ無いように気を付けよう。

何で又急所ばかり狙うのかと聞いたら。

「ああ、モンスターとか敵兵とかは、確実に殺すか意識刈り取りにくるから。

今の内に慣れておけば、何かあった時対応し易いでしよ?」

とか言われてしまう。

成る程護身術なのか。

物騒な所が多いらしいしな。

確かに相手を倒すレベルには行けるか分からないけれど。

死なない為の回避は、必要かもしれない。

うん、でもめちゃくちゃキツイです。

敵兵の前に榛名さんに殺されそうだよ。

こうやって、最初の二週間は午前が講習午後が鍛錬に費やされた。

まあ、飴と鞭と言いますか。

休憩時間には、手作りお菓子とか、スポーツドリンク以外にも。

季節のフルーツのスムージーとかシャーベットや、採れたて野菜とかの生ジュースとか。

そう言うのを貰えたりする。

完熟の採れたてを使うから、砂糖が入れてない生ジュースとかかなり美味しい。

例えば生ジュースのトマトは、かなりトロトロ口当たりで甘くて好きなんだけど。

缶のジュースの謎の苦しょっぱい感じは苦手なんだよ。

孤児院にも、豊作の時は野菜やフルーツを、大量に寄贈してくれる稀有な方々が居て。

まぁ、それは本当たまになんたけど、お陰で生ジュースとかも飲めるんだ。

それがほぼ毎日とか、贅沢だよなぁ。

と、自分の貧乏なお手軽チョロっぷりに、きっと榛名さんは扱いやすかったに違いないと思うわけ。

ううっ、別にそれ飲食しながら、超にっこにっこして分かりやすかったとか、内緒なんだからな!

まぁ、そんなわけで。

俺への榛名さんからの飴と鞭修行は、滞り無く続けられた。



家康が帰宅した後の上層部控室。


「おい榛名、三河のやつはどうだ?仕上がりそうか?」

スーツ姿の美貌のイケメンが榛名に声を掛ける。

「ん?ああ淡海君か。

家康君は真面目だから、ほかの新人君たちより仕上がり早そうだよ。」

彼は天照淡海あまてらおうみこの会社の御曹司で家康とも顔見知りだが。

彼は変装して大学へ通っていたので、家康はその事は知らない。

実のところ、家康に目を付けたのは榛名では無く淡海だった。

特待生で孤児だと言うのに、物腰は柔らかくどこか品があり、人当たりも良く。

何より周辺に人が絶えない。

そんな、面倒見の良い隠れた人気者だ。

この会社は異世界移動をする関係で、命のやり取りをする事も多かったりする。

なので政府サイドから、過去の召喚事例者や時空転移事故での異世界トリップ者以外は、なるべく家族の多い一般家庭の者よりも、しがらみの少ない孤児などを指導推薦する方針をとっていた。

問題発生時や、怪我や死亡時への対応が楽な事が最大要因なのも有ると言うほのく昏い理由もあったりするが。

彼らはこの世界で不憫な扱いを受け易い為、希望者には、幸福に巡り会えた異世界移住しての異世界支部移転なども通常福利厚生以外で用意されて居る。

その分苛烈な仕事も有るし。

この世界の倫理観が通用するとは限らない。

そんな危険も伴うバクチ要素の仕事だとしても、何故か離職率が低い。


「本当に淡海君は、お気に入りとか分かり易いよね。

そんなに心配なら、今度私の休みの日に変わりに指導して見たら?」

楽しげに笑う。

「馬鹿言え、お前が早目に仕上がりそうって言うならそれを信じるさ。

ああ、それよりもカデキアの結界か壊されたらしい。

原因追求で聖女と巫女達が向かったが、護衛で念の為草薙を付けておいた。

どうもあっちはここの所、きな臭い事が続けざまに発生しているから、最悪お前にも頼むかもしれん。」

「え?カデキア又なの?

響居るなら平気でしょ?

って言うか、あいつに女の護衛させたら、又フラグ立ててめんどくさい事になるからやめてって言ったのに、もう!

私、出来れば行きたく無いんだけど。

あ、そっか。

最悪家康君連れて行こう。

家康君女の子の扱いは、あのおバカより上だから、動きやすくなるよね。」

「馬鹿言え、新人をきな臭い所連れて行ってどうすんだよ。

死なせる気か?」

「ふふ〜ん、家康君は隠れスキル無意識発動するから、問題アリマセーン。」

「あのなぁ、まだコントロール出来ないんだから駄目に決まってるだろ!」

「ふふん、何の為に私がフルーツや野菜のジュースあげてると思ってんの?」

「お、お前盛ってるのか!」

淡海が少し動揺して居る。

「やだなぁ人聞きの悪い。

能力上昇の異世界の安全なフルーツや野菜や薬草や木の実を、チョーっと混ぜただけじゃない。」

「馬鹿言え!

異世界由来なんて、こっちの人間への効果は未知数なんだろ。

実験するなよ。」

「あはは、心配性だねぇ。

私や響が飲んでも問題無いし。

私の配下には、かなり前から飲ませて居るから実証済みよ。

それに、異世界営業に行くならば、能力底上げは基本でしょうに。」

ヤレヤレと外人みたいに肩を竦める。

「基礎訓練でもそれなりに結果が出そうな奴をそんなに底上げして、お前は奴をどうしたいんだ?」

少し固い声をだすと、キョトンとしてから良い笑顔で答えた。

「幸せを掴む最強?」

「それは営業ではなく、最前線組に回すって事か?」

「まさか!今はむりでしょ?」

「今は、ね。」

淡海は溜息を吐いた。

どうやら榛名は家康に、何か他に言えない予知的な姫巫女特有の啓示を受けたみたいだ。

いつものような甘い砂糖菓子みたいな雰囲気が消え、のらりくらりとまさに狐の様にこちらをかわして来る。

こうなったら、誰にも追求出来ないだろう。

こいつは焔狐に召喚され、神の加護で姫巫女となった。

その後、勇者召喚に巻き込まれ。

何故か勇者よりも期待されて別の神の加護をも得た女だ。

内包する力は、実に俺の異世界人の祖母と互角でまだ伸び代が有る、と言うから末恐ろしい。

俺はそんなこいつに恋い焦がれているが、多分相手にはされない。

いや、多分榛名自身が惚れ無いと話にならないと思う。

まあ諦める気は無いが、無理強いする気も無いけどな。

それはともかく、それ程彼女の魅了能力は、彼女のトラウマレベルなのだ。

好きだと言うのが魅了の影響か不明なら、それは本当の気持ちにならないかも知れない。

そう思ったら、どんな相手でも疑心暗鬼になるだろし。

相手の気持ちを信じられないなら、自身の気持ちに頼るしか無いだろう。

では、魅了の効かない家康は?

どう言うわけか、家康は魅了が全く効かない体質らしい。

耐呪詛とか魔法防御が潜在的に高いのだろうが、この魔法の無い世界では宝の持ち腐れ。

しかも姫巫女の特性で、かなりコントロールしても魅了してしまう榛名の、体調が悪くてコントロール仕切れない時ですら効かなかったのだ。

さぞかし榛名は歓喜した事か。

この世界でこれなら、魔法の有る異世界ではとんでもない事になる。

精神作用の高い魔法への耐性は、通用魔法耐性防御の高さへと繋がる。

魔力コントロールは精神コントロールに通じる部分が高い。

孤児での生活が、彼の根本を作り上げたと思うが。

彼の人柄か周囲のお陰か。

精神コントロールが、あの若さではあり得ない程強く。

そして図太く折れづらく、かなり運動神経も高めだ。

前線組に居れたいのも分からなくもない。

家康は能力云々もそうだが。

かなり要領も良く。

環境に馴染む事や、人と人の心を繋ぐのがとても上手い。

営業か前線組のバックアップムードメーカにはうってつけだろう。

だが、だからこそ心配になる。

彼に懐いた風の妖精は、強いわけではない。

前線組に入れるには、今の能力や守護だけでは心許なく、足らないし危険だ。

それを踏まえても、覚醒待ちの隠れたスキル開花に躍起になって居るのかもしれない。

どうして?

そこに疑問が残るのだが、多分姫巫女の予知予見能力の答えが多分そこに有るのだろう。

実は家康担当は、俺がやるつもりだった。

俺の推薦だから責任持って対するつもりが、気づくと外された。

聖女の血を引く俺や、勇者召喚された響でさえ、あいつを鍛えるのに足らないと言う事だろうか?

まるで分からない。

「あ、そうそう。

週末皆で焼きまんじゅう食べに行こうよ。」

いきなり露骨に話題を変えた。

あーはいはい、これ以上は不可侵って事ね。

「やだよ、あれ美味いけど、手と口の回りベタベタになるだろ。」

蒸しパンのような饅頭を四つ位大きな竹串に刺したものの上に、味噌ダレかけて鰻とか焼き鳥みたいに焼く。

群馬のソウルフード。

中に餡子入りの物も有るが、餡子なしの方が俺は好きだ。

でも食べづらいんだよあれ。

「馬鹿ね、美味しいものは食べ辛いのがセオリーでしょ?」

皮付きのフルーツや細かい種付きのフルーツなど、美味しいもの程食べ辛い。

誰かに下処理された物を食べ慣れているから特にめんどくさいと思うが。

確かに自分で下処理すると、いつもより何故か美味しく感じる。

「家康君の歓迎会よ、焼きまんじゅうと焼きそばともんじゃ焼きの美味しい所に連れて行くんだからね。」

「全部粉物じゃねえか!」

「東洋のイタリアンと言われる群馬に隙は無かった!」

「何だそれ、ったく分かったよ。

集合場所と時間は?」

「会社の裏手で良いんじゃない?

時間は10時かな。」

「了解!じゃあな。」

ヒラヒラと手を振って淡海が立ち去る。

「言えたら楽なんだけど。

まぁ暫く心配させる事になりそうね。

ヤレヤレ、あのお方も無茶振りする。」

榛名は溜息を吐いて空に登った三日月を見上げた。


チョロっと家康君以外が出てきました。

次は沼田が元祖な焼きまんじゅうでレッツパーリィ!東毛と両毛で味が違うんだぜ。


ちなみに群馬は農村地帯だから、本当に粉な物おおいです。

東洋のイタリアンは本当に言われてるそうです。

うん、なんかファンタジー要素がまだ少ないとか秘密だよ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ