鳥ー衝撃ー
あれから一時間ほど経過した。
俺とセリアは草が刈られて土がむき出しになった道を一直線に進んでいるが、建物が一つも見えてこない。
「人が通らないね………」
「まあ夜中だからな」
セリアの言うとおり、一人も人が通らない。誰かから情報が聞ければこれからどうするかが決まるんだけどな……
と、その時、上から鳥が飛んできた。
「あ、鳥だ!初めて見…」
ワクワクした目で鳥を見ていたセリアの表情が固まる。なんだと思い俺も鳥を見ると、よくみたらそれは鳥っぽいけど鳥ではなかった。
「ギェァァァァァッ!」
ピンク色の鋭い嘴を顔の先端に付け、頭には黄色の毛のモヒカンを形作っていて、緑の羽をはためかせこっちに向かってくる存在がそこには居た。
「うわっ!?なにあれ怖い!逃げよう白井!」
「カラフルな鳥だな!」
俺達は元来た道へ逃げ出した。鳥って本当はあんなんだったのかよ!
「(ちっくしょう、研究者のやつら……本にも嘘書いてやがったのか)」
あの建物内で俺達能力者が顔を合わせられる唯一の自由時間、昼食。その時に読める本で、鳥の写真と特徴を読んだけど、あんなんじゃなかったぞ!
「あ、白井!能力は使える!?」
セリアが走りながら俺に問い掛ける。後ろにはあの鳥が物凄い形相で追いかけてきてた。
「俺の能力で鳥を撃ち落とせっつーんだな!?」
俺は立ち止まって振り返り、鳥を真正面に見据えた。鳥は舌を出してよだれを振りまきながら向かってくる。キモすぎだろ。
「よし、行くぞ」
掌を鳥に向ける。俺が力を込めると、掌から球体の炎が撃ち出された。
「ギォォォォァァァァォェェァァ!」
よく分からない声を出しながら鳥が焼かれる。そしてすぐに塵になり、跡形もなく消えた。
距離を取っていたセリアが駆け寄ってくる。
「な、なんだったの、あれ……?」
「鳥」
多分鳥。
「ホントに鳥……?ま、まあいいや、また歩こっか」
「そうだな」
俺達は進んでいた道をもう一度歩き始めた。