白い扉
俺の名前は桐生 渚。
この名前は誰がつけたのか、俺がそう書かれた紙を持っていたらしい。
プレイヤー名はその苗字と名前の間をとってユウナギという簡単な名前にした。
だって名前を呼ばれた時とか、自分の名前と全然違ったらわからなくなるし?
重力を感じ、目を開けると俺は光り輝く魔法陣の上に立っていた。
目の前にはデトラと名乗っていた男が椅子に座っている。
「こんにちは、ユウナギ。では、ゲームについての説明を始めようか。映像でも言った通り、命の保証はしない。それでもいいなら、その魔法陣から降りるといい」
俺はデトラの言った通り、魔法陣から降りた。
デトラはにっこりと笑い、指を鳴らす。デトラの鳴らした音が暗闇の中に響くと、俺の目の前に何処かの地図の映像が現れた。
「ここはゲームの世界の地図だ。今いる場所は1番南のこの位置。」
デトラは地図の下側に指を差し、俺から見て右側が今いる場所だと伝える。
「それで、北側に黒紫色に染まっている所があるのは分かるかな。そこが魔界だ。逆に人が住む人界は黒紫色に染まってない所だ。最初は小さい村からスタートしてもらう、ダンジョンを攻略していくことで大きな街や武器も良くなっていく。通貨はリンだ、分かったかな」
俺はデトラの説明に頷いて、その地図を貰った。
まだ、今いる場所と黒紫色の場所だけを大雑把に書かれている地図…きっと、攻略するごとに地図に記されて行くのだろう。
「では、ユウナギに私からのプレゼントだ。両手を叩きなさい。」
俺は言われたとおりに手を叩き、渇いた音が響くと同時に手を離した所から長剣が出てきた。
「ほぅ、ユウナギには剣が当たったね。」
「他は違うんですか?」
「人様々だよ。拳銃が当たったり斧が当たったり。」
デトラの例に、拳銃が良かった…と少し思ったが俺は早く行きたくて、出てきた長剣を手に取り薄ら笑いを見せた。
「帰る際と、怪我を治す時はここに来ると良い。出口はあの扉だ」
デトラの指が指す方に目を向ければ、白く分厚い扉が1つ、その存在を主張していた。
「ありがとう。行って来るよ」
「あっ、ちょっと待て!」
デトラの声が聞こえたが、俺は新しい生活が始まる、この世界に行きたくてデトラの声に耳を傾けず白い扉に向かって走った。
白い扉は人が来ると、自然に開く様で扉が開いた先には、何ともファンタジーな緑溢れる綺麗な世界が広がっていた。
扉のすぐ近くには看板が立ててあり、右の方を向いている。
これは、俺に右に行けと言っているな。と勝手に解釈し、長剣を腰に差してここから見える村へと歩いて行った。
*****
扉が閉まる音が暗闇に響き渡ると、デトラは溜息を溢す。
「18歳未満は21時に強制返還と伝えるつもりだったのだが、もう行ったか。ククッ、まさか渚がこのゲームに来るとはな。」
デトラは形の良い唇を歪ませ、楽しそうに笑っていた。
そして、また魔法陣が光出し組んでた足を組み直して、新たにやってきた駒ににっこりと微笑む。
「こんにちは、ユーリ。では、ゲームについての説明を始めようかーーーー」