第三十七話 "Lv.5"
かなり久しぶりの龍河視点。
本編では17話以来か...
おいおい、どこにもない。
あと45分で連合国の増援が来る。言い換えれば俺たちの敗北。
「ブラックさん、ほんとに富士基地にあるのか!?」
「そこ以外にどこにある。よく探せ。」
「らちが明かねえ...」
格納できそうな場所はすべて探した。人員弾薬ともに消費が激しく、これ以上進撃するわけにもいかない。
そのころすみれは...
無いだと...そんな無責任な...だがここにしかない。
いや、ここ以外考えられないのだ。一番エネルギーの波が強いところ、さらに連合軍最大の要塞。
レーダーをもう一度見直す。
あいにく余っているパソコンがない。
紙と鉛筆を引っ張り出し、自分の頭で計算する。
後38分。
行けるか...?
そして龍河。
ないないない。どこにある?
アイバーもひどく困惑している。
敗北か? 撤退か? 死か?
走り回っても意味がない。
これ以上の作戦は...
あと6分。
すみれは...
計算式が出た。時間がないので検算もしていない。そうか...こういうことか...。
確かに基地にある。だがそれでいて基地にない。
衛星砲はチャージ中、核ミサイルはない。
あと2分。
―――すみれから無線が来た。
「もしもし、龍河さん?」
「はぁ?」
「ああ、ごめんなさい。アイバーさんにかけちゃいました。基地全体を消し飛ばすような武器ってありますか?」
「そんな武器あるわけ...」
「基地全体を消し飛ばせるような武器か...?ある。」
龍河に無線を奪われる。
「で、どこを消し飛ばせばいいんだ?」
「床です!さらに地下を吹き飛ばしてください!」
「なんで地下!?」
「いいから、早く!」
アイバーから無線を奪った後、俺はAUGUSTAを引き抜く。LUMのおかげでずいぶんと機能が増えた。
AUGUSTA Lv.5 ECS拡散砲。
最大半径500mを吹き飛ばせる威力がある。
チャージに最短でも3週間程度かかるが、Lv.0と同じで制限領域下でも使えるのが強みだ。
急いで最下階まで走り、浅い角度で床を撃つ。
見かけはただの拳銃だ。
だが、その威力は超弩級。
激しい反動で後ろに吹き飛ばされる。
思わずAUGUSTAを離しそうになるのを必死にこらえる。
そしてむき出しとなった床と壊れた装置。まさかこんなところにあったとは...初めから気づいていればもっと損害を減らせたのに...
残り0秒。
「富士基地周囲に大量の敵の反応を確認!」
すみれからの無線。
「あと何人残ってる?」
「こちらの残り戦闘員約2500...」
「わかった。ありがとう。」
彼我の兵力差、850:1。
アサルトライフルや余分な装備を捨て、基地の外へと向かう。
本当の地獄はこれからだ。