第三十六話 "父"
相手の策略にかかり、直線の通路で包囲された。
サブマシンガンだけの装備はかなりきつい。
援軍が来ないと...みんな全滅する。味方も結構無力化されてきた。緊張で手に汗が付く。敵の数も増えてきている。
「アイバー中尉、もうだめなんじゃないですか!?」
「黙れ!男のくせにうじうじするな!無駄口叩いてる暇あったらさっさと撃て!」
部下を叱責するが次の瞬間そいつは頭に銃弾を受けて目を思いっきり開いて倒れる。死んだか...
「これでもくらええ!」
150年前以上に製造されたドイツ製拳銃型グレネードランチャー、カンプピストルに擲弾をこめ、相手に撃つ。小型だが改良型の擲弾を使っているため、威力は絶大だ。だが、雑草のごとく敵兵がわいてくる。こちらの残り弾薬も少ない。もし弾薬が尽きたら...その時はナイフで突撃だ。私が先陣を切ろう。
サブマシンガンの弾薬が尽きた。拳銃に切り替え、何とか抵抗する。だが拳銃なんて所詮は予備の武器。すぐにマガジンがなくなる。
部下を死なせたくはないが...白旗を振ったところで相手が攻撃を止めるとは思えない。
「アイバー中尉、行きますか...?」
「そうね。みんなで一緒に楽しく地獄行きよ。」
各員ナイフを取る。
「突撃ぃぃぃぃ!」
だが、周りの敵兵がどんどん倒れていく。
「突撃...させません。」
憎き父、ラファイエットの声か...
まあともかく援軍が来てほっとした。だが、自分が突撃途中で敵と中途半端な距離にいることを忘れていた。敵兵の銃口が自分に向けられる。
―――終わったか。
刹那の時間が永遠に変わる。敵兵の引き金が弾かれ...自分の体は動かない。
だが、不意に横から突き飛ばされる。私は体勢を崩し、その場でしりもちをつく。
そして、私の父親...ラファイエットは何発もの銃弾を受け、地面に横たわっていた。
たとえ憎くても父親は父親。自分は父親扱いしてなかったのに...今まで酷いことしてきたのに...どうして親不孝な私なんか...
「シルビア...生きろよ...」
彼の目から生気が消える。
ラファイエットの腰のホルスターから拳銃を引き抜き、敵兵を片っ端から打つ。リボルバーとはなかなかしゃれた趣味をしている。
ここは戦場だ。それに嫌いな父親だ。軽く敬礼をし、彼の持ち物を...
胸のポケットに私の小さいころの写真が入っている。ずいぶん前の写真だ。
なんで...私のことなんか...
だが、そうも言ってられない。
「これで...今のところ私が指揮官なわけね?」
「はい...。」
「本部に指揮官交代の連絡を入れておいて...」
「Sir, Yes Sir!」
部下を引き連れ、彼のアサルトライフルで敵兵を殺す。
片っ端から部屋を探す。
これで、私たちに割り当てられた区画の調査は終わり。
目の前に敵発見!銃を構える。
と思ったら龍河たちでした。
「アイバー!見つかったか?」
「ない!そっちは?」
「お互いこれで全部探しただろ...?なかった。もしかして...この基地には...」
「存在しない」「存在しない」
お互い息を合わせてぴったり同時に言っていた。
ブラックへ龍河が無線をつなぐ。
「ブラックさん!ここにはない!」
「そんなことはない。よく探せ。」
無線切られててるし...
そんな無茶な...
残り時間、あと45分。