第二十八話 "開始"
赤い光とサイレンとともに、委員会施設内で戒厳令(非常事態宣言)が出された。
この前の戦闘で足骨折という重症を負いました、アイバーです。
傷は治りましたが、まだ復帰するなという命令を負ってしまい...
ってそんなのんきに個室で寝てる場合じゃねえし。日本各地の連合軍の基地が黒い騎士団に襲撃されたぁ?
電動車いすで自分の机に向かうが遅さにじれったくなり、途中から自分の足で走る。すみれを呼び、
「委員会第3即応師団指揮権を一時的にすみれに移行する。直ちに援軍に迎え...」
「お言葉ですが...アイバー大佐、現時点で元帥命令により全軍凍結されています。」
自分の思っていた返答とはかけ離れたものが返ってくる。
全軍凍結だと?ふざけるな、いくら独立組織だからといって、国家の存亡にかかわる非常事態なはずだ。
頭の中で疑問がこみ上げてくる。頭の中で血管がはじけたような感覚を感じる。
「いいから軍を動かせ!!」
勢いよく拳銃を引き抜き、すみれに拳銃の銃口を向ける。すみれは顔色一つ変えずに、まるで自分が正義だといわんばかりに自分にも拳銃の銃口を向ける。
「落ち着いてください。元帥の命令です。」
「んだと...!」
拳銃を持って指令室へ走る。
他にも慌ただしく働いている人員はいるが...どうやらこちらには気が向いていない。
「国家安全保障委員会中尉の権限で、国家反逆罪として元帥、アーサー・ストーナーを逮捕する!」
照準を元帥の頭に合わせていた。
「銃を下ろせ!」
後ろから追いかけてきたすみれに銃口を向けられる。
さっきとは逆の立場か...
「アイバー加恋中尉。まずは落ち着け。まだ私が何もしないとは言っていないだろう。」
「では...なぜ、師団を凍結したんですか!」
元帥は放送のマイクを取り、自分で指揮をする。
「完全防御体制を構築。特殊領域下対人外用装備を各員ただちに装備せよ。防御レベルを最大まで上げろ。非戦闘員も現時点から戦闘員として扱う。繰り返す、完全防御体制を構築。防御レベルを最大まで上げろ。非戦闘員も現時点から戦闘員として扱う。特殊領域下対人外用装備を各員ただちに装備せよ。引き続き繰り返す...」
特殊領域下対人外用装備だと...
人間の基本的な能力のみの単独で人外に挑むための装備。
つまるところ...主兵装はレールガン。
なぜ?魔法を使用すればいいのに...
「特殊領域が何者かによって展開されました!影響下にあるのは...日本全域!」
連絡員がストーナー元帥に報告している。
日本全域を覆う特殊領域だと!?そんなエネルギーがどこに?
「引き続き連絡します!謎の部隊が委員会に向かっている模様!至急警戒せよ!」
サイレンで耳が痛くなりそうだ。
「アイバー君、君は...圧倒的に数で劣る黒い騎士団がここに制限領域をかけて攻めてくると思うかね...」
まさか敵は...黒い騎士団などではなく...
連合軍?
「アイバー君、君にすべてを任せた。」
拳銃を下ろし、指令室のマイクをぶんどる。
「各員に次ぐ!バリケードを構築、衛星砲、戦略核ミサイルを起動、いつでも発射可能にしておけ!用意が済んだらマミーにも電話しておけ、死ぬ間際にションベンちびったって、遅いからな!敵前逃亡は即時死刑だ!よく覚えておけ!わかったらマザーフ**カーどもを皆殺しにしてやれ!」
自分で言ったが...ものすごく汚い言葉だ。
男子の士気の高揚にもなるわけ...
「行くぜぇぇぇぇぇぇぇ!」
周りがこんな声に包まれている。
効果はあったか。
自分も仕事場に戻って着替える。
下着を見られようがどうでもいい。
男どもがちらちら見てきたり目をそらしたり...
「アイバー中尉、さすがにそれは破廉恥であります!」
「あん?景気付に見ておけ。私の下着姿見て死ぬ恐怖を紛らわしてろ。変態猿ども。」
大和は私の口調におびえているが恥ずかしさから顔を赤らめている。
「もうおしまい。」
さっさと装備を付ける。
作戦はこうだ。
地上から地下に向けて防御隊を10数個配置する。私やすみれ、大和は最後の防御線、地下14階だ。ラファイエットは今も出張。大丈夫なのか。
その先の部屋で元帥が指令を出す。そして...レールガンは各員一つずつ。膨大な電源を供給するために、なんとしても地下13階にある複数の核融合炉も死守しなければならない。
ゲートには...地雷、爆弾、その他諸々が仕掛けられている。これで少しは...
「敵到達な模様!すべてのゲート解除までおそらく12分!」
The War Has Been Started―――戦争開始。