第二話 "Was Bist Du?"
アイバーは無表情でこっちを見てきた。
「ひっさしぶりねえ。殺されに来たの?」
彼女はオレのバカの遺伝子を燃え上がらせる。もう何もかも関係ない。AUGUSTAの照準をアイツの頭に合わせ、引き金を引く。
アイバーはドッジボールが飛んできたかのように首を傾け、65口径の弾丸を軽々とよける。
「あんた、ふざけてるの?魔法使い相手に、銃弾が当たるとでも思ってる?今度は私の番ね。」
ありえねぇ。水鉄砲じゃないんだぞ。そういってアイバーはポケットの中から黒い筒状のものを取り出した。
何をする気だ?その瞬間アイバーはこの筒を振り回して何らか呪文みたいな物を口につけた。
弓に変化させただと...!魔法でそんなことができるのか?いや、知り合いの魔法使いにもそんなことできる奴は1人もいなかった。しかしアイツは矢を持っていない。何をする気だ?そうして、弦を引っ張ると、手品のように赤い灼熱の矢を出現させた。いや、手品じゃないだろう。魔法か妖術だろう。次の瞬間、30本ぐらいの赤く光った矢がこちらめがけて飛んでくる。そして真横の地面に矢が刺さる。
「そうだ、いい忘れたけど、私、魔法使いよ。ぐずぐずしないでさっさとかかってきなさい。」
魔女相手に人間が勝てるとでも?俺は連合でもかなり珍しい純血の人間だ。そんな俺に何ができると?
「人間様をなめるんじゃねえぇぇぇ!!」
そう叫びながら、右手に刀を握り締め、左手でAUGUSTAを乱射しながら、突撃する。
アイバーは酷く冷静に弓を放つ。3本俺の体に命中した。足が宙に浮き、前のめりになって倒れる。これでチェックメイト。
考えてみれば人生バカばっかりやっていた。後悔した。傷がものすごい激痛となって襲う。血が口からあふれ出てきて、意識が遠のいてくる。と同時に見えない何かに引っ張られる気がした。バカな遺伝子がさわぎだした。
――――1200。
左目が焼けこげるようにに痛い。しかし、今まで感じたことのない力がみなぎってくる。傷の痛みも引いてくる。立ち上がった。自分でもわけがわからなかったが、何かとてつもないことができる気がした。
「ばかねぇ....」
アイバーのそんな言葉とともに矢が飛んでくる。
見える!はっきりと。止まって見える矢を刀で裂いて見せた。
AUGUSTAをホルスターにしまい、白兵戦へと移る。白兵戦なら弓しか持たないアイバーにはいくらか対応できるだろう。アイバーも弓をしまい、戦闘用ナイフで応戦してくる。
刀と弓がぶつかり合う金属音がコロシアム中に鳴り響く。もうすでにお互い息が上がっている。油断した隙に腕を切られ、ものすごい激痛が走る。もう最後の手段だった。やけくそだ、と思いつつ、オレは何かに導かれるように刀を地面に突き刺し、使ったこともない未知のエネルギーを刀に注入し、ふんばった。人生いきてる中で一番ふんばった。周りをとてつもない爆発音とともに、あたり一面光が覆い隠した。
光が収まったころには、アイバーは煙に包まれていた。一瞬何が起こったかわからなかったが、すぐに、勝ったとわかった。勝った。あの今まで見下されてたやつに勝ったんだ。そう思って安心した瞬間、意識が暗闇に吸い込まれてしまった。
俺が勝利を確信したそのときだ。
どこからでもなく現れた霧からアイバーが現れた。
「ったく、反則よ...渡された資料の中に一つも魔法を使えるって書いてなかったじゃない...」
「覚醒能力は認めるけどねぇ...まだうまく魔法を使えない見たいね。」
もう絶望的だった。あれが頼みの綱だったのに。足の震えが止まらなくなってきた。
「それにしても不思議ね...一番あんたの血縁の中で魔法使いが多いはずなんだけど、人間の特性しか現れなったのよねぇ...」
要するにオレが魔法使いってことか?人生今までそんな兆しは見せなかったのに。怖かった。自分のずっと信じてきたことが壊されるのが怖かった。オレ何もできずただ呆然と立っていることだけしかできなった。そんなことはお構いなしにアイバーは攻撃を繰り返してくる。ただ飛んでくる矢をよけ、発砲するだけだった。オレは今戦場にいる機械だ。感情もない機械だ。
「ったく、じれったいわね。もう終わりにするわよ。」
そういって彼女は黒くてぶっとい矢を放つ。見た目よりも速い。考えなしに刀で切り裂いたのがバカだった。爆発性のある矢だ。自分の周りを炎が包み込む。すぐに防御体制をとるが間に合わない。全身やけどだらけだ。それでも立ち上がる。機械だから。何回やられようが何回きられようが突っ込む。バカならバカなりに全力を出す。
「英雄の末裔がこんなちゃらんぽらんじゃあ、世も末ね。」
「さっきからお前ら、英雄とか血縁関係とかそんなことをほざいてるがいったい何なんだ。」
口から滴る地と荒い吐息でうまく発声できない。
「え、知らないの?以外ねぇ。あんたのおじいさんは60年前の種族間戦争を止めた英雄じゃないの。」
そんなこと一回も聞いたことがない。じゃあ、オレの親は英雄の息子だってか。気がつけば、怒りとともに青白く光る刀を持って突進していた。
ズバッ!
そんな音とともにアイバーの弓が真っ二つに切れた。さっきまでこんな切れ味じゃなかったのに...これも魔法が作用したのか?勝ち誇った気分に浸る。弓が使えなくなればこっちのもんだ。そう思った矢先だった。
「ばかねぇ...さすが単細胞。」
弓が再生している・・・。魔法科学のおかげなのか?軍はまだまだ想像もよらない兵器を持っているのか?
俺の心の中で深い絶望に生まれた。魔法なんてそう簡単に取得できるもんじゃない。数分前に魔法を会得した魔法使いが、ベテランに勝てるわけがない。
ふと気づいた。さっきから1回もAUGUSTAをリロードしていない。なんで気づかなかったんだろう。もう軽く100発は撃っている。最大装填数は7発のはずだ。これも魔法のおかげか?AUGUSTA-Lv.0と刻印が彫ってあるのも怪しい。まさか、レベルアップはずは...
AUGUSTAが光に包まれ、軽機関銃のような形になった。グリップ部分には、
AUGUSTA-Lv.1/RAIL/MACHINE GUN と書かれてある。
レベルアップしたね。(笑)
RAIL GUN? レールガン。種族間戦争時に実用化に成功、人間が個人で運用できるようになり、今でも妖怪相手に使われている。試験前日に追い込んだ知識だ。赤点とったけど。そんなことはお構いなしに、とりあえず撃ってみる。今まで聞いたことのない風を鉄片が切り裂くような音が鳴り響く。
当たらなかったが、分厚いコロシアムの壁を貫通した。アイバーは若干震えているように見えた。
「まさか・・・」
自分でも恐ろしかった。65口径というだけでも十分悪魔なのに、レールガンまでついているとは...設計した人の気がしれない。
ためらうことなく彼女を狙って、悪魔の引き金を引いた。ばこんという音とともに奴の腹部に命中する。
アイバーは血を吐きながら3mほどぶっ飛んだ。鈍い音がした。
やっと勝った。勝ったのか…?しかし、あまりに無残な姿に駆け寄ろうとしたが、力尽きた。そのまま意識が飛んでしまった...