第十七話 "Memento mori、何人も死す。"後編
とりあえず、目の前にいるにくき女を、この世から消したかった。頭には、もう、復讐の二文字しか残ってない。
「腕なんて…!」
右肩から赤い光の棒のようなものが出て、元の右腕が生えてきた。武器は...右腕に、赤いレーザーのような長い槍を出す。
「そんな、バカな...その赤い目は...」
女はうろたえているが、電撃を発射してくる。まあ、そんな程度の攻撃、指一本ではじいたが。
その時、無線の電子音が鳴り響く。救援部隊か。しかし、ヘリコプターの形状から見ると、戦闘用ではなく、医療設備しかつんでいないようだ。
「アイバー、大和、それと、ラファイエット、先に帰ってくれ。俺がこいつを片付ける。」
アイバーはすでに気絶している。医療班に運ばれていった。大和も乗り込む。
「迎えが来ると思いますので、安心してください。」
ラファイエットが確信に満ちたように言う。
「どういう意味だ?」
「自分で解釈してください。」
そう吐き捨てて、さっさと逃げてしまった。
ただ、元の右腕じゃない気がする。何か、力がみなぎっているし、右腕だけ魔法が使えない。刀のエネルギーが使えることは確かだが。ECS、魔法でもなかったら、まさか...!
刀が俺と一心同体となったことで武器がない。
右腕に力を込める。赤き光が右腕を包む。
今となっては脅威でもなんでもなくなった攻撃をかわし、みぞおちに渾身の一撃を加える。
女はうめきながら10メートルぐらい吹っ飛ぶ。
「こしゃくな...!これでどうだ!」
彼女の周りに、風が巻き起こっている。
「限界突破よ!」
誇らしげにいってきたのがむかついた。
なんだか女が必死だが、こっちは全力の1割も出してない。
右腕に込めていた力をレーザーのようなやりに変化させる。
隙を突いて、腹に槍をぶっ刺す。女は口から血を吹きながら倒れる。
乱暴に引き抜くと、切られたような跡ではなく、焼切られたような跡だできていた。
「惨めね...穢れた血にやられるなんて...」
「なぜ母さんを殺した?なぜ殺したか、と聞いているんだ!」
もう自分をコントロールできなかった。ホルスターからAUGUSTAを引き抜き、女の左足にゼロ距離射撃で命中させる。血しぶきとともに、左足が断裂する。
「あぅ!ぎゃああああああ!!穢れた...ハァ、ハァ、血だからよ...ハァ、ハァ。」
「穢れた血だと!ふざけるんじゃねぇ!」
あたり一面に、また65口径の銃の復讐の音が鳴り響く。今度は、右腕だった。
「このまま、残ってる足と腕、全部ふっ飛ばしてやろうか!」
しかし、いきなり足が体を支えきれなくなり、ひざを突く。だが、ひざにも力が入らなくなり、自分の右腕も消え、刀が自分から分離し、目の前に落ちる。
そう、口以外の全身のありとあらゆる筋肉が動かない。
全く反応すらしない。ピクリとも動かない。
「何だよこれ...」
「限界突破の反動よ。後10分は立ち上がることすらできないでしょうねぇ。もちろん魔法も。あははははぁ!バカねえ。親子そろって私に殺されるなんて。ECS爆発まで、残り8秒。」
ECSだと...
生身の人間がまともに食らえば致死率...100%。
今の俺は生身の人間以下だ。
「んな、バカな...」
そのときだった。視界が全て悪魔の兵器の光になった。
――また1人、英雄がいなくなった。
第1章終わりです。
これから第2章に突入するわけですが...
ここからは書きだめてないので時間がかかります(笑)
それでもどうかよろしくお願いします