第十五話 "未確認魔法生物"
元帥のところに向かうと、そこにはアイバーではなく、ラファイエットがいた。
「ミッション内容は、いたって簡単、暴動が起きたとされたところを偵察に行くだけだ。距離もせいぜいここから50kmぐらいしか離れていない。がんばってくれ。」
元帥が淡々とミッション内容を告げた。ラファイエットは、俺よりかなり年上だが、階級は下。つまり、年下なのに上官だから、命令するのは俺。なんだか気まずい雰囲気が流れそうだ。
とりあえず、専用車両へ向かう。
「私が運転しますよ。高橋大佐。」
ラファイエットが丁寧に言ってくる。
「じゃ、お言葉に甘えて...」
車が静かに発進する。
「自分の娘より、階級が下で、嫌じゃないのか?」
会話しないのもあれなので、たずねてみた。
「別にたいしたことがあるわけじゃないですよ。連合からの配属だし、向こうは自分を父親とは思ってないですし。」
「そうか。」
それから数十分の静寂が流れた...
現場に着くが、特に異常はなかった。代わりに、無線がかかってきた。
「こちら高橋。特に異常なし。どうぞ。」
「先ほど京都に未確認魔法生物確認。いまアイバー少尉と赤城一等兵が現在対処に当たっています。しかし、状況は芳しくありません。至急、援護へ向かってください。」
「了解。」
未確認魔法生物?しかも、京都で?とりあえず、車は動き出した。
「PHOENIXかもしれませんね。」
「知ってるのか?」
「あなたの曾おじいさんが撃退した、魔法生物をコピーしたものですよ。もっとも、オリジナルより強化されていますけど。」
「俺の曾爺ちゃんが?」
「これは死ぬかもしれませんよ。覚悟しなければ。」
「いつでも死ぬ覚悟はできてるさ。そんなこといちいち考えてたら、きりがない。」
「そうですよね。」
そう思っているうちに、廃墟と貸した...そう、自分が消滅させた京都が見えてきた...
「あんたたちの助けなんか、絶対いらないんだから!」
いや、アイバーさん、完全にその傷だらけの体で、どうやって大丈夫といえるのか...?むしろまるっきりSOSを出しているように見える。
「とくに、ラファイエット...あんたなんかに助けられるような覚えは...ないわ...」
大和は、機関銃を構えている。
「敵はどこにいる?」
「飛んでいるであります!」
そういって、大和は機関銃を連射する。AUGUSTAは鉄の塊を発射するが、どうやらこっちは、魔力をそのまま発射する、魔法機関砲であろう。
しっかし、黒くて馬鹿でかい鳥だ。これが、PHOENIX?
目標が口からレーザーを発射する。何とかよけて、あたらなかったが、地面には、直径1mほどの深い穴が開いていた。とりあえず飛び跳ねて、日本刀できりつけようとする。
「やめてくださいであります!」
大和が叫ぶ。目標に近づいた瞬間、頭に割れるような痛みが走った。力が入らず、地面に落ちる。目の前がぼやける。こんな痛み始めてだ。怪我をした、というより、頭がおかしくなりそうな感じだ。
「リミッター解除であります!超大型魔砲、秋水、発射であります!」
ECSに匹敵するぐらいの爆音と辺りを包む。青白く光るものすごく太いレーザーだ。とりあえず...秋水は命中した...しかし、phxシリーズとはなんだったんだ...?
突然、頭にピキーンと痛みが響く。
ギュオオオオオオオオオオオンと目標が雄たけびを上げる。ちっ、まだ生きてやがったか。
大和もアイバーも力を使い切ってすでにぶっ倒れている。残るは俺とラファイエットだけか...
どうする?秋水が当たったってことは、もうそこまで体力はないはず。
ラファイエットは結界魔法が使えるか...すみれが、結界魔法は強力な魔法を発動できるって...
「おい、ラファイエット!使える中で一番強い結界魔法発動しろ!俺がひきつけておく!」
「Yes, sir!」
ラファイエットがいる位置と反対の方向に行き、AUGUSTAや刀でおびき寄せる。
近づくと恐ろしい頭痛がするのを覚悟でジャンプして切りつける。
生暖かい血が全身にかかる。意外と赤い。
何回も繰り返していると口にまで血が入ってくる。刀は真紅の色になり、べとべとだ。
「チャージ完了しました!」
「よし、発動しろ!」
「ロイヤルストレートフラッシュ!」
ラファイエットは杖を目標に向け、極太レーザーを発射する。目標に命中、消滅した。
「はぁ、はぁ、よくやった。結界魔法、なかなかすごいな。」
そして、無線で本部に報告する。
「目標撃破、医療部隊を頼む。」
「了解しました!」
思わず地面に座り込んで寝てしまいそうだった...