番外編1 "Sei Vorsichtig!"
指定されたバーに足を運ぶ。個室が用意されているというので、そこまで尾行に注意を払いつつ移動する。待っている相手は...黒き英雄、ブラック。
「久しぶりだな。ストーナー。元気にしてたか?話したいことは山ほどある。」
彼が、いつもとは違うまじめな口調で話してきた。
「どうせ全部答えるまで返してくれないんだろう?」
「あったりー。」
子どもめいた口調は、普段は誰にも見せないもう一つの顔だ。
しばらく、酒を飲みながら雑談をした後、本題に入った。
「なぜ、龍河にECSを撃たせた?」
急な真剣な質問に、若干汗をかいた。
「連合政府からの命令だよ。裏で操ってるのは、あいつらだけどな。」
「で、作戦実行前に俺に連絡入れたわけか。」
冷たい空気が流れる。
連合政府とは、日本自治政府、アメリカ、ヨーロッパ大陸政府3つからなる魔法使い、人間による同盟だ。妖怪を仮想敵国としている。そんな政府の命令に逆らえるはずがない。
「でも、非常事態宣言を安全保障委員会が発令すれば、連合に命令されても、ノーと言えただろ?」
非常事態宣言と言う手があったか。でも・・・・
「あいにく、非常事態にするほど時間がなかったからな。そこをやつらに突かれた。それに、宣言すれば政府に非難されることは必至だ。」
「あいつらって、”純血の同盟”だろう?だから、作戦のときも、いる場所がわかっていたから龍河を殺そうとした。」
「ブラックさん、PE-001Pのことだが。」
話題を切り替える。
「ああ、あれか?だいぶ厄介だな。あれの量産化に成功されたら結構きちーな。」
「まだ、こちらの監視下に置かれただけ、マシだったというべきか...」
「おそらく、委員会にあれを中心とした部隊を編成されたら、人員の2/3が死ぬだろうな。」
策略家の口から出た言葉に驚く。自分でもそれぐらいは覚悟していたが...
「そうか...」
「まあ、ECS装備を充実させておくか、レールガンを大量に配備するしかないな。」
「ECSはそちらに任せます。レールガンはこちらで大量に購入しときます。」
「では、お開きにするか。」
金は向こうが持つらしい。側近が用意した車に乗る。
別れ際に、
「Sei vorsichtig!」
"ザイ、フォアズィヒティヒ"。発音をカタカナで表すと、こうなるか。意味は、気をつけろ。
「Ja(Yes)!」
あともう少しか。