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ヴェルデドラードの日常  作者: 雨根
リクエスト
63/74

あなたとお揃い

「リコリス様は、お髪を伸ばしていらっしゃいますの?」


 夕食も終わっての、寛いだ空気の流れる時間。

 何故かペオニアがリコリスの髪に触りたがり、特に拒否する理由もないのでされるままに任せていた。

 そんな時、髪を丁寧に梳かされながら聞いた問いかけ。

 振り返って見れば、ペオニアの細い手に掬われた一房の赤は、確かに長い。普段あまり意識していなかったが、この世界に戻ってきたあの夏の日から比べると、随分伸びたように思う。


「んー、伸ばしてるわけじゃないんだけど」


 自分でも髪を摘まんでくるくると遊ばせて、リコリスは僅かに首を傾げる。

 そう。別に、明確な意志や目的があって伸ばしているわけではない。ない、が。


「気に入ってるから、切るの勿体ないなーとは思う、かな」


 最初こそ見慣れなかったこの髪も、今では違和感の欠片もない。それどころか、ずっと好きになっている。

 ゲームのプレイヤーキャラクターとして作成した時に、全くの偶然で選んだ、この“色”のお陰で。


「……色がね、ライカと一緒でしょ?」


 明るさに違いはあれど、何色かと言われれば双方赤と表されるこの髪色。

 それは、誰より大事な相棒と、この先ずっと変わらぬ繋がりをもてているようで。それが嬉しくて、切ってしまうのが勿体ないと思ってしまう。

 照れ照れしながら告げたリコリスに、ペオニアもまた幸せそうに頬を染めた。


「お揃いですものね。素敵ですわ」

「ふふ、ありがと」




■□■□■□■□




 リコリスたちは知らない。

 年頃の女2人が華やかな笑い声をたてているその扉の向こう側に、今にもノックをしようとした格好で固まっている男がいたことを。

 彼は扉を叩きかけた手を止めた後、その手を口元に移動させ俯いた。


「…………っ」


 その後ろには、ライカリスに続こうとしていたチェスナットとウィロウ、そして女たちがいたわけだが、彼らは正しく察し、固まってしまったライカリスから行儀よく視線を逸らした。

 ただひとり、空気の読めない彼を除いて。


「あれ、ライカリスさん、顔赤いッスよ。大丈夫ッスか~?」


 そう声を発したファーには悪気はなかった。当然、ライカリスをからかうなどという、命知らずな意味もない。

 彼はただ、何も考えていないだけだった。


「うわっ、この馬鹿!」

「へ?」

「ファー、お前ちょっともう黙れ!」


 チェスナットとウィロウが慌てて仲間の口を塞ぐ。が、時既に遅く。


「死にたいんですね、よく分かりました。――特訓延長いきますよ」


 物騒な台詞と共に振り返ったライカリスが男たちを睨んだ。

 チェスナットとファーの口から「ひいっ」と悲鳴が上がり、ウィロウは切なくため息をひとつ。

 自業自得のファーはともかく、チェスナットとウィロウは完全なとばっちりだ。


 そうして後に残ったのは、早々に数歩下がって難を逃れた3姉妹。


「顔が真っ赤だと、ちょっと迫力なかったわねぇ」

「……ちょっとだけだけどな」

「…………リコリス様、何を言ったのかしら……」


 無情に追い立てられていく男たちを見送った彼女たちは、男たちに同情しつつも、のんびりとそんなことを呟いた。

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