どっちもどっち
6月17日に拍手くださった方へ
お題「ロータスとウィステリア」
「また邪魔しに来たの、アンタ?!」
「そんな分かりきったことを訊くな!」
毎度恒例のやり取りに、硬い物がぶつかる音が続く。
締め括りは、盛大な爆発音。緑や紫の煙はアクセントだ。
煙が風で四散する頃、軽く咽ながら、ウィステリアは投げつけられ、頭に乗った呪いの人形を地面に叩きつけた。
これもいつものことだ。
仕事前にこうしてロータスが顔を見せた以上、絶対に成功しない。
それをよく理解しているウィステリアは、憎々しげに顔を歪めて舌打ちをした。
「あぁ、もう! アンタのせいで商売上がったりじゃないのっ」
「上がりっぱなしの方が平和でいいな。いっそ廃業したらどうだ? 養ってやろうか」
はっ、とロータスは鼻で笑う。
「……本気で殺してやろうかしら」
綺麗な顔に殺気が滲むも、ロータスは軽く肩を竦め、地面に落ちた人形を拾い上げた。
「まぁ、それはどうでもいいんだが、それよりちょっと出かけるから一緒に来てくれないか?」
「だから、アンタそれ人に物を頼む態度じゃないのよ! この男女!!」
「誰が男女だ! 失礼なこと言うなって、何度も言ってるだろうっ」
「あ~ら、本当のこと言われて怒ってるの? 私に色気で負けてるものねぇ」
「うるさい、このカマ野郎!」
「カマですって?! 私は体も心も立派に男なのよ!」
睨み合いになり、おもむろにウィステリアがロータスの頬を抓った。
ぐにっと横に引っ張られ、痛みにか行為そのものにか顔を顰めたロータスも、負けじと両手を伸ばす。
眼光も鋭く、殺気混じりの険悪な空気を漂わせながら、お互いの頬を引っ張り合うことしばし。
「………………いいひゃえんにしはらろうら?」
「……ひょっひほそ」
やがてロータスの指が震え始めると、ウィステリアが鼻を鳴らして手を離した。
ロータスもそれに倣うが、彼女の頬が真っ赤になっているのに対し、ウィステリアの白い肌は普段のままだ。
防御力の差か、攻撃力の差かは分からないが。
(……悔しい)
ロータスが疼く頬に顔を顰めていると、首を傾げて彼女の顔を覗き込んだウィステリアが嫌味っぽく微笑んだ。
「ブサイクに磨きがかかってるわよ」
「うぐ」
今引っ込んだばかりの手が、ロータスの頬に戻ってくる。
細く繊細な指が、赤くなった肌をそろりと撫でて、ロータスは擽ったさに身を捩った。
「擽ったいっ。――ほら、もう行くぞ!」
「やだわぁ。女のヒステリー」
「お前が言うな!」
「だって私は男だもの~」
キィキィとじゃれ合う声は時折爆発音を混ぜ込みながら、ワープゲートに近づいていく。
やがて小さな嵐が去った後には、穏やかな風の音だけが残された。




