私のターン!
4月14日に拍手でリクエストくださった方へ
お題「主人公ペアと女王トリオとの掛け合い」
多分、異変より前の話
その日、外の天気のよさとは裏腹に、室内の空気はどんよりと停滞していた。
リコリスは相棒と並んで席につき、テーブルには絞りたてだったオレンジジュース。それを挟んだ向かいに、死んだ魚の目をした親友が、悪魔2匹に挟まれている。
たまにこうしてこの5人でお茶会モドキを開催するのだが、どうにもこうにも。
相棒はからかわれてピリピリしているし、親友は絡まれてぐったりしているし、双子は見境がない。
「今日は何時まで続くんですかね、この無駄な時間」
「え~? ライカってばヒドイなぁ。あ、もしかして苛めてほしくて言ってる? ふふ、なんなら混ざるかい?」
「………………殺したい」
「あぁっ、ライカさん、そのナイフは是非俺に……っ」
「……リコリス……助けて」
……と、こんな調子でなかなかの混乱ぶりだ。
それを半ば傍観者の気分で眺めながら、リコリスは首を捻っている。
(んー、双子はどこまで本気なんだろう……?)
事あるごとにこうしてライカリスで遊び、場合によってはリコリスまで誘ってくるこの2人の意図がいまいちよく分からない。
ライカリスのことを気に入っているのは確かなのだが、しかしソニアとは比べ物にもならないだろう。
リコリスを誘ってくる理由も、ソニアが喜ぶかもしれない、と意味不明である。
(うーん……)
「変態ってよく分からん……」
うっかりしみじみと呟いてしまって、4人の視線が一気にリコリスに向けられた。
相棒と親友は何やら顔を引き攣らせているが、双子の方は常と変わらない笑みを浮かべて。
「分からないなら、リコリスも混ざる? 理解できるかも……ねぇ?」
ふふ、と妖しく笑いながら、リビダがリコリスの頬に手を伸ばす。
それでいよいよ殺気立ったライカリスの手を、リコリスはテーブルの下で軽く押さえ、リビダの手はさらりとかわして、可愛らしく首を傾げてみせた。
「いいけど、そしたら最初から最後まで私のターンだよ?」
「えっ?」
珍しくぽかんとしたリビダがそこから動く暇を、リコリスは与えなかった。
彼女が静かに宣言したのと、白くたおやかな腕が数本、双子に巻きつくのとが、ほぼ同時だったからだ。
「クイーン、逃がさないでね」
『仰せのままに』
8人のクイーンが声を揃え、がっちりと双子をホールドする。
「えーと、これはどういうことかな……?」
「あの、リコリスさん?」
目を瞬かせる双子に、リコリスは満面の笑みで応えた。
「さーて、どうやって遊ぼうかなっ」
ライカリスとソニアが若干怯えているようだが、それはそれとして。
リビダが「しまった」という顔をしているが、知ったことではない。
心なしか期待しているらしいビフィダは、さて、どうすればその顔を崩してやれるだろう。
そう考えたところで、ばさりと床に何かが落ちる音がした。
見れば、そこに落ちている……メイド服。
『……』
思わず全員が沈黙する中、メイド服の上に鼻眼鏡が落ち、アフロが落ち。更にヒゲ、筋肉スーツ、褌……と、かつてのネタ装備が山を作る。
それら全てを吐き出して、満足そうににやりと笑ったのは、リコリスの蝙蝠ポーチだった。
「蝙蝠様……ナイス!」
「いや、待って! リコリスも蝙蝠様もちょっと待って!」
「待ったなーし」
羞恥プレイ……と頬を染めている弟の方にはまた何か別の手を考えるとして。
クイーンに遊ばれ始めた双子を横目に、リコリスは固まっていた相棒と親友を交互に見、人差し指をピッと立てて。
「嫌がったら負け、だよ」
その不敵な表情に、ライカリスは無言で視線を逸らし、ソニアは「確かにそうなんでしょうけど、これはリコリス以外にできないわ……」と、乾いた笑い声を零した。




