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ある朝の風景

拍手小話No.24

 意識が浮上した。


 体に染み付いた習慣は目覚ましよりも確実に、夜明け前の起床へと導いてくれる。

 時間を確認すればやはり5時に少し届かないくらい。

 リコリスはとりあえず体を起こし、それから大きく伸びをした。


(ん~、今日はよく寝てるなぁ)


 隣のベッドには、うつ伏せて、枕に顔を半分埋めるようにして眠っているライカリスがいる。

 すうすうと規則正しい寝息が聞こえてきて、リコリスは口元を緩めた。


 時間になるまで、このまま眺めていようか。

 微笑みを浮かべたまま、無防備な相棒の寝顔をじっと見つめていると、不意に眉が寄せられ瞼が震えた。


(お?)


 起きてしまったか。

 残念がるリコリスを余所に、ぼんやりと潤んだ暗褐色の瞳はうろうろと周囲を彷徨っている。


「……ライカ?」


 もしかしてまだ夢の世界だろうか。

 小さく小さく呼びかければ、しかし視線は応えるように、真っ直ぐにリコリスを捉えた。同時にシーツの上に投げ出されていた長い腕が持ち上がり、伸ばされる。

 寝惚けているわりに躊躇いなく動いた腕は、リコリスの腰に回ると、強い力で彼女を引き寄せた。


「わ」

「……リコ」


 慌てて枕元に手を突いたリコリスの腰に両腕を回して抱きつき、彼女の腿の上に頭を乗せたライカリスは、それで何かに満足したのか、また穏やかに寝息を立て始めた。


「あら可愛い……って、もう起きる時間じゃん。ライカ。ラーイカ」

「……んんー」


 わしゃわしゃと腿の上の髪を掻き混ぜると、気に入らないのか、顔をぐりぐりと押し付けてくる。

 それ自体は別に構わないのだが、今日に限っては1つ問題があった。


 リコリスの夜着の下が、今日はショートパンツなのである。

 夏に涼しい優れものだが、露出している肌の上で頭を振られると。


「や、ちょっ。擽った……っもう! ライカ!!」

「ん……?」


 甲高くなった悲鳴に、とうとうライカリスが覚醒した。

 うつ伏せていた顔を上げ、目の前にあるリコリスの真っ白な足を確認し、一拍。

 それから更に顔を上げてリコリスと目が合うと、しばし考え込み……、


「……っ?!」


 ――跳ね起きた。


「あ、あれっ? 私はいつの間に……」


 それまでの状況を確認するように視線が行き来する。

 座っているリコリスと、今まで彼が抱きついていた場所を見て、白い肌が赤く染まっていく。


(乙女か……)


 というか、太腿に顔をスリスリされたこちらの方こそ、顔を赤らめるべきなのではないだろうか。

 擽ったかっただけで特に照れもしていないリコリスは、何となく負けた気分で相棒に笑いかけた。にっこりと、満面の笑みで。


「おはよう」

「………………おはようございます」


 憮然とした声に、リコリスは笑みを深くして追い討ちをかける。

 白い足をぺちぺちと叩いて。


「で? 寝心地はどうだった?」

「……」


 ……ライカリスは言葉もなく沈没した。

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