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究極の選択

拍手小話No.4

ペオニア視点

 わたくしの隣で機嫌よく料理をなさっているリコリス様は、改めて見てもとてもお可愛らしい。

 揺れる鮮やかに赤い髪、その髪に映える真っ白な肌と、大きな新緑の瞳。

 うっとりするほどお可愛らしいのです。

 すらっとしたその肢体を包むのは小悪魔的な黒いご衣装で、蜘蛛の巣や蝙蝠の羽などがあしらわれ、髪飾りは小さなカボチャですわ。

 秋の燈明祭のモチーフですわね。


「あと一品は何にしようかな~」


 わたくしに少しずつ作業を与えてくださり、丁寧に丁寧に教えてくださいます。

 町の方々にあのような態度を取っていたわたくしを見放すことなく……。


「リコさん、これが食べたいです」


 不意に後ろから声がかかりました。

 食器を運んだり、食材をとってきたりと、リコリス様をお手伝いなさっていたライカリス様です。

 この方はずっとリコリス様の傍らに立って、初めてお目にかかった時などはとても自然にリコリス様を助けておいででした。

 わたくしだけでなく、きっとどなたからご覧になってもとてもお似合いのお二人ですのに、その関係はなんとも歯痒く、リコリス様の腰に下がっているポーチの蝙蝠様などは、時折「チッ」というお顔をなさっておいでです。

 思えばこの蝙蝠様も不思議な方……。


 話が逸れましたわ。

 そのライカリス様が差し出してこられたのは、丸々と大きなカボチャでした。

 リコリス様はそのカボチャをお受け取りになって――、


「…………………………」


 あら?

 リコリス様の表情が幾分暗くなり、恨みがましい目でライカリス様を睨みました。


「あの……?」


 いつにないご様子に不安になってわたくしが声をかければ、リコリス様は視線を床に落とされました。



「……カボチャキライ……」



  ……。


 ……っ?!


 そんな格好をなさっていて?!

 燈明祭では様々なカボチャ料理が振舞われるものですのに?!


 見ればライカリス様はとても楽しそうに微笑んでおられます。

 リコリス様がカボチャがお嫌いなことをご存知だったのでしょう。

 この方はこうして時折リコリス様に意地悪なさいますのね。


「食べたいです」


 にっこり。

 結局折れたのはリコリス様の方でした。




 本日のメニューはお魚とお野菜をふんだんに使った和食でした。

 和食はスィエルの町の港からずっと東に行った島国の料理です。

 わたくしはまだ行ったことがありませんが、いつかは行ってみたいものですわね。


 現実逃避をしている私の眼前では、和やかなはずの食卓が緊張に包まれております。

 アイリスたちも、チェスナットたちも、顔が強張っています。もちろんわたくしも。

 先ほどのカボチャは、甘い煮付けになっています。

 しっとり甘くてとても美味しく、味見ができないと言っていたリコリス様ですが、さすがだと思いますわ。

 そのカボチャの一欠けらをフォークに刺して、ライカリス様は。



「はい、あーん」



 差し出す相手はもちろん……ああ、言うまでもありませんわね。

 輝かんばかりの笑顔に相対するは、真っ青なお顔。


「リコさん、あーん」

「……コノヤロウ」



 ところでライカリス様の意地悪は……上手く言えないのですが、なんだかリコリス様を試しているようにも見えます。

 わたくしなどよりもずっとライカリス様を理解しているであろうリコリス様は、青いお顔でずっと迷っておいででした……。


 あっ、また蝙蝠様が顔を歪めていますわっ!

 しかし、この緊張感の中、気がついたのはわたくしだけのようでした。


 え? 結局食べたのか?

 そんなこと……わたくしからは言えませんわ。

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