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妖精の頭登り

拍手小話No.3

アイリス視点

 家妖精たちには、最近流行の遊びがある。

 それは、高所に登ること。もっと言えば、人間の頭に上ること、だ。


「よいしょ、よいしょ」

「うんしょ、うんしょ」


 今日も今日とて、作業の合間に妖精たちの頑張る声が聞こえてくる。


 彼らにもこだわりがあるらしく、高ければ高いほどいいらしい。

 この牧場に滞在している人間で背が高いといえば、ライカリス氏と、牧場主リコリス様の3人の弟子チェスナット、ファー、ウィロウだが、安定性の面から弟子たち(の頭)が好まれているようだ。

 これを聞いて、チェスナットが「でかい頭で悪かったな!」と叫んだが、別に悪くはない。笑いを誘うだけだ。

 そして、なんだかんだいって、妖精たちが登りきるまでじっとして、落ちかけたら支えてやったりしているのだから付き合いも面倒見も悪くない。


 無事登頂が成功した妖精は、誇らしげにポーズをとる。

 片足立ちで両手を上げてみたり、逆立ちしてみたり。

 その度に男たちはハラハラしている。


「おじさん見て見て!」


 ファーの頭の上でバレエダンサーのようなポーズをした妖精が、ファーに言う。

  ……ファーの頭の上にいるのに、その頭の持ち主にねだるのか。

 なかなか難易度の高い要求だ。




「おじさん、おじさん! じっとしてじっとして!」


 その日も、例によって頭登りを始めた妖精に根気強く付き合っていたウィロウが、ふと動きは止めたままで口を開いた。


「おじさんおじさん言うがな、俺たちはまだ22だぞ」




『?!?!』




 その場にいた全員が、動きを止めた。妖精までだ。

 この、髪はぼさぼさ、ヒゲもわさわさの、だみ声の男たちが、22歳……だと?

 リコリス様が、彼女の隣にいたライカリス氏とウィロウを何度も見比べる。


「え、ライカより年下……?」


 それを聞いたペオニアお嬢様が更にぎょっと目を見開いた。

 それどころか、自称22歳の3人までが驚いてライカリス氏を見る。

 チェスナットが恐る恐るライカリス氏を伺う。


「あの……ライカリスさんっていくつなんスか?」

「……27ですが」


 沈黙。

 意外だ。もっと若いと思っていた。


「へ、へぇ。じゃあ、師匠とはかなり年離れてるんスね」

「え? 私21だよ。そんなでもなくない?」




『―― えええええ?!』




 いかにも15、16の美少女という見た目のリコリス様の発言に、ライカリス氏と妖精たちを除く全員が声を上げた。

 21歳であったこともそうだが、男たちと1つしか違わないというのにも驚きだ。

 見た目40歳と15歳が1歳違いとは。

 あまりにも続く驚愕の新事実に、ペオニアお嬢様が既に倒れそうになっている。


「ごめんねぇ、ロリ顔で」


 顔を引き攣らせながら、リコリス様が言った。


 ――ああ、もう驚きすぎて頭がぼんやりしてきた……。

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