仮病じゃないよ
拍手小話No.16
本編29話の後 ウィロウ視点
「ほら、どうしたんです? さっさとかかってきてくださいよ」
いつも通りの口調でライカリスさんが告げる。
だが、それは少しだけ、本当に少しだけ、いつもより柔らかい……気がする。
ああ、理由は分かってんだ。
小枝を片手に立つライカリスさんの、その反対側の腕には、師匠が抱えられてるから。
何なんだかな。今日の朝から、もうずーっと、この状態だ。
ちなみに、状況によって、体勢は変わってる。
朝飯食ってる時には膝の上だったし、移動の時とかは……ほら、俗に言うお姫様抱っこってヤツでな。
今とかは片腕に座らせて、真っ直ぐに立ってる。
ライカリスさん、マジでどんな鍛え方してんだろうな。全然疲れたりしないんだぜ。
あー……師匠、魂抜けてるなぁ。
ライカリスさんが絶対に降ろさないから、逆にしがみつくしかないんだろうな。
今はライカリスさんの首にしがみついて、……顔も上げない。
まぁ、気持ちは分かります。
しっかし、これにかかっていくのか、俺たち。
かかっていっていいのか。
何で、この状態で、修行開始しようと思うんスか、ライカリスさん。
よく分からんことは、まだあるぞ。
俺の隣に立ってるチェスナット、ファー。
チェスナットは目の前の光景に顔を真っ赤にしてるし、ファーは……何だろうな。和んでやがる。
俺はお前らが分からん。
100歩譲ってチェスナットの反応は認めてもいい。
でもファー。お前は無理だ。
この光景、この状況で、何をどうやったら和めるんだよ。
「何を突っ立っているんです? さっさとしてください」
若干面倒そうな声になったライカリスさんが、ヒュンと小枝を振った。
……これって誰に対する仕返しなんだろうなぁ。
師匠か? ファーか?
どっちにしたって、俺じゃねぇのは確かだよ。
とばっちりだよ確実に。
…………先生。
腹が痛くなってきたんで、今日の授業は欠席してもいいッスか……?




