も~
拍手小話No.15
本編29話の後 ファー視点
「美味そうに食うなぁ、お前ら」
青い空の下、俺は牧草地に座り、目の前でのんびりと草を食む牛を眺めていた。
もう少しで、サイプレス親方の作業場に向かう時間で、今は朝食後のちょっとした休憩時間だ。
チェスナットやウィロウもどこかで腹ごなししてんじゃねぇかな。
それにしても、牛ってのはいいな。
髪を毟られた恨みはあるが……こののんびり具合がいい。
もっさもっさ食ってるのが、何かいいよな。美味そうだし。
美味いって言えば師匠の飯。
いつも美味いんだけど、今日はなんか……面白かったんだな。
何て説明すればいいんだかなぁ。
「いい加減、降ろしてよーっ。ホント、謝るからぁ」
そんな時、師匠の家の方から、微妙に泣きの入った声が聞こえてきた。
遠目に、背の高い男が、小柄な女を抱えているのが見えて、女の方が大きな声で懇願している。
……師匠と、ライカリスさんだ。
そして妖精たちが、その回りを飛び跳ねている。
な? 面白いだろ。
あの2人、今朝からずっとああなんだ。
師匠は降ろせ降ろせと言い続けて、それが全く聞き入れられなくて、そのうち暴れ出した。
足をばたつかせて、ライカリスさんの耳を引っ張ったりしているが、ライカリスさんは笑ったまま。
あ、師匠の耳元で何かしてるな。
ここからだとよく見えねぇけど。
でも、師匠はピキーンと固まって、しばらくして塩をかけられたみたいに縮こまった。
それで、ライカリスさんはまた楽しそうに笑うんだ。
いいなぁ。あの2人。
見てて和むよなぁ。牛みたいだ。
何より、ライカリスさんの機嫌がいいんだよな。
俺らにまで、何となく物腰が柔らかいんだ。優しいってほどじゃねぇけど。
だから今のままでも、いいかなって思っちまう。師匠には悪いんだけどさ。
それに、やっぱ和むし。
そんな感じで、のんびり2人を眺めてた俺は、気づかなかった。
――背後から忍び寄る、大きな影が、俺の頭に吸い寄せられたことに。
………………。
「ぎゃああぁぁぁああああっ」
髪……。
俺の髪ぃ……。
ああ、やっぱ師匠たちと牛って似てるんだなぁ。
和んでたら、痛い目見るとことか、そっくりだぜ……。




