表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔女は契約を継承す  作者: 若槻風亜
魔女との出会い編
39/113

第5話 「救出作戦、始動」①



 翌朝、朝食を終えたユリウスとリーヌスは揃って取調室として用意された教会の大部屋に向かった。すでに連れて来られ待機していたアーサーたちは、その姿を見るや厳しい目つきを向けてくる。


 昨日の騒ぎは自分たちのせいではないのに、とも思うが、彼らにしてみれば同じなのだろう。特に文句も言わず、二人はアーサー、ハウエル、ルーシーと向かい合うように席に着いた。


「待たせた。じゃあ早速だけど今日の予定話すぞ」


 ユリウスが視線を向けると、リーヌスは日中以上に生気のない声で頭に書き出していた予定を読み上げる。


「これから二回目の取り調べを行います。その結果、あなた方の罪が魔女が町から逃亡する幇助のみと断定されれば、罪が確定します。ウッドロック憲章により、最初期の幇助は腕、あるいは足を一本切断となっております。ただし、司祭が神の前にあなた方が敬虔な信者であったことを宣言したため、手首、あるいは足首の切断まで減刑されました。先にコールダー執行人の独断専行により傷を負ったレスター・ボードマンはケガが治り次第の執行となります」


 減刑でも切断刑。リーヌスの抑揚のない声は一層恐怖を掻き立て、その様を想像してしまったルーシーは青くなり、ハウエルは吐き気を堪えるように口元に手を当てた。その二人とは真逆に、アーサーは乱暴に拳を机に打ち付ける。


「ふざけるな! 言っただろ、計画したのも実行に移したのも俺で、みんなは巻き込まれただけだって! 何でみんなまで刑を受けなきゃいけないんだ!?」


 背後で控えていた見張りが慌ててアーサーを宥め始めた。それでも落ち着かない様子を見せるアーサーに、ユリウスは「俺も言っただろ」と双眸を細める。


「誰が言い出したことだろうと始めたことだろうと、乗った以上は、他の連中も神の教えに背いた罪人だ。首謀者としてお前の減刑をなしにすることがあっても、他の奴らの罪がなくなることはない」


「っ恋人を! 友達を助けることが! 罪だって言うのか!?」


 椅子を蹴倒し立ち上がり、アーサーは動じないユリウスを睨み下ろした。ユリウスは訳が分からないと言いたげな顔で首を傾げる。


「神に仇なす悪魔の徒だぞ?」


「ブリジットを悪魔の徒だなんて言うな!」


「やめろアーサー!」


 掴みかかりそうになるアーサーを背後の見張り二人が慌てて押さえた。抱えるように引きはがされていくアーサーは最後まで悔しげな顔をしており、その感情もユリウスには理解出来ない。


「お前本当に信者か? 魔女は悪魔の徒。魔力を持つ者は魔女。なら、魔力を持ってたっていうその女も魔女だろ。何で悪魔の徒じゃないなんて言えるんだ? 恋人だろうと友人だろうと親兄弟だろうと、罪を犯した以上は裁かれなくちゃいけない。決まってるだろ?」


 心の底から疑問を抱いているユリウスの様子に、アーサーは「いかれてる」と呟き、他の町人たちは引きつった顔を隠せない。そんな彼らの反応にユリウスは、「この町の教会はしっかり教えを広めてないのか」と疑問を持つ。そしてそんな彼にこそ、リーヌスは頭を抱えたくなっていた。


 信者として執行人として、神を信じきるその姿勢は恐らく間違ってはいないのだろう。けれど、『人間』としてユリウスはあまりに一面的すぎる。それでも執行部隊にとっては都合がいいので、きっとこれからも彼はこのままなのだろう。ため息をつきたい気持ちを必死に堪え、リーヌスは動かない表情の下に感情を隠した。


 それと共にもうひとつ頭の隅に隠したのは、思い出してしまったとある噂話。副都で、決して多くはないが語る者がいるそれは、ユリウスの最初の仕事についてのもの。常時の彼を知る身としては、「そんな馬鹿な」とも「ありえるかも」とも思えていた内容だ。判別は出来ていなかったのだが、この神への傾倒ぶりを思うに、真実ではないかと思い始めてしまっている。


「まあいいか。それじゃあそろそろ取り調べ始める。一旦他二人を外に――」


「失礼します!」


 今考えても詮無きこと、とユリウスが次の指示を出そうとしたその時、突然若い男性が息せきながら室内に駆け入って来た。男性は、探すように視線を動かし、ユリウスとリーヌスを見つけるとほっとしたような顔をする。


「大変です、町の様子がおかしいんです! 突然眠りだしたり訳の分からないことを言い出したり、変なものが見えているような者もいて――!」


 混乱した様子の彼の説明は言葉足らずにもほどがあった。しかし、その異様な現象に心当たりのあるユリウスとリーヌスはばっと顔を合わせる。


「おいでなすったか。おい、町の方だな?」


「は、はい! 町中で」


「分かった。コンラッドにも連絡しとけ。行くぞリーヌス」


 身軽に立ち上がり、ユリウスはすぐさま室内から出ていき、リーヌスもそれに遅れて続いた。執行人二人が出ていくと、アーサーたちはまさかという衝撃と期待がないまぜになった顔を見合わせる。


 その背後にいた見張りたちは、訝しむような視線を報告に来た男性向けた。


「なあ、お前隣町に出かけていたんじゃなかったか? いつ帰ってきたんだ?」


 見張りの一人が発した問いかけを受け、アーサーたちの視線も報告に来た男性に向く。集まる視線の中、男性にはふっと笑いをこぼした。


「あら知り合いだったの? 人の多い町だから大丈夫だと思ってたんだけど」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ