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魔女は契約を継承す  作者: 若槻風亜
魔女との出会い編
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第3話 「師匠は凄い」④

 耳を寄せていたファーラは質問の内容を把握すると、「ああ」と頷き、今度は自分がブリジットの耳に唇を寄せる。


「(この間ロザリア様から、お父さんが魔女になった時に魔女たちの空間を全部作り直した、って話聞いたじゃないですか?)」


 軽く頷くと、ファーラは「実は弊害があって」と残念さを声に滲ませた。


「(その時()()()()()も助けてすっごく魔力が上がっていたみたいなのですが、空間を作り変えるのに膨大な魔力を使っちゃったせいで、魔力が本来の高さまで上がらなくなっちゃったみたいなのです。グレース様の診断だと、本来の魔力量の半分くらいしか出てないとか )」


「ええ、身の内に内包される魔力の量は確かに多いのに、何か に阻害されてそれを表に出せない状態なのです。魔法でも魔道具でも。原因がそれと断言は出来ませんが、それが一番可能性としては高いのです」


 ファーラの言葉を裏付けるようにグレースが肯定を唱える。驚いた少女二人が揃って顔を上げると、いつの間にやら自分たちの話をやめたニーロとグレースに視線を向けられていた。


 気付かなかった二人は申し訳なさそうに謝る。それを宥めるように、グレースは穏やかに微笑んで見せた。


「いいのですよ。悪い話をしていたわけではありませんしね。学ぶ気持ちがあるのは良いことです。それより、折角の機会ですから私もひとつ何かを教えたいのですが、いいですかニーロ?」


 少しわくわくした調子で確認されたニーロは「ありがたいことです」と頭を下げた。許可を受けてグレースは嬉しそうに目を細める。ずっと落ち着いた様子を見せていたが、彼女もまたニーロの弟子を心待ちにしていたひとりなのだ。初弟子に何かを教える手助けをする、というお節介を焼きたくて仕方なかった。


「そうですね、では、今ファーラが軽く触れた魔力の解放についてはどうですか? もう習っていますか?」


 次に確認されたのはブリジットだ。ファーラが軽く触れた、と言われたが、本題に意識が傾いていたので言われたことすら覚えていない。が、少なくともそれに該当する話はされていないはずなので、恐る恐る習っていないと答える。


「ではそれを。まず、女性の魔力は有する者であれば魔女でなくても全身に流れています。今のあなたもそうですね。だから、自覚の有無など関係なく魔女裁判などで見つかってしまうのです。ですが、実は魔女になる前の魔力は、殻に包まれている状態なのです」


 言下、グレースは指を振った。応じてぽんと音を立てて出現したのは、水と何かの種が大量に入ったグラス。重さが違うのか何か魔法を使用しているのか、種は水の中を文字通り縦横無尽に漂っている。


「ブリジット、これは植物の種を保護する核で、中には小粒の種がたくさん入っています。これが割れるとどうなりますか?」


 問いかけを受けてブリジットがじっとグラスを見つめれば、答えはすぐに出た。顔を上げ、しっかりとグレースの目を見据える。


「中の種が水の中に広がります」


 種の重さによっては浮いたり沈んだりするのだろうが、この種の状態ならそれで合っているはずだ。確信を持って答えれば、にこりと微笑みが返された。


「正解です」


 言下指が振られ、種――もとい核が壊れ中から、とても細かいゴマ粒のような種が水に広がる。


「魔女になるということはこの核が割れること。そして、核が割れるということは、閉じ込められていた魔力が解放されることです。この結果、弟子であった時よりも格段に使える魔力の量が増えるのです。特に直後は大変純度が高く、落ち着けば出来ないだろうことも出来ます。ニーロの空間変革も、このタイミングであったからこそ、あれほど高度なことを一斉に行えたのでしょうね」


 素晴らしいことです、と括ったグレースから視線を下ろし、ブリジットは改めて種が舞い踊るグラスを視界に写した。これが魔力の形か、と見つめ続けていると、ニーロに呼びかけられる。


「ブリジット、ご教示いただいたのなら言うべきことがあるだろう?」


 優しく(たしな)められ、はっとしたブリジットは慌てて立ち上がり手を揃えて頭を下げた。


「お教えいただきましてありがとうございます、グレース様」


「いいのですよ。私から教えたいと言ったのですし、それに、久々に自分で直接教えて楽しかったですから」


 言葉通りグレースの表情は楽しげだ。その穏やかな雰囲気に呑まれ、ブリジットはつい疑問を口にしてしまう。


「久々、と仰いますと、今はお弟子さんたちに何も……?」


 思わず尋ねてからブリジットははっとして口を手で塞いだ。これは失礼なことを聞いているのではないか。と不安になる。だが、その回答は本人よりも隣のファーラから軽い口調で返された。


「グレース様の所にはお弟子さんが多いので、下位のお弟子さんには上位のお弟子さんが教える役を買ってるんです。それにグレース様のところの上位のお弟子さん方はもう長いですから、今更直接グレース様がお教えすることも少ないですよ」


 ざっと百人はいるかもしれませんね~、とあっけらかんと渡された答えに、ブリジットは絶句する。ニーロの弟子はようやくブリジットひとりだというのに、その百倍はいるかもしれない、という桁違いな事実に眩暈がしそうだ。もちろん、ニーロが極端な例外なのは分かっているのだが――。


「あの、その人数が通常? それともグレース様がその点におかれても規格外でいらっしゃるだけ……?」



お読みいただきありがとうございます!

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