第二部37話── 蒼光水(そうこうすい)。光と理が交わる瞬間
【公国郊外・宿裏の練習場】
翌朝。
宿屋の裏手にある、簡易訓練場。
朝日の色が薄青く、
タクの背中の新刀が静かに光を返していた。
「……やるか。」
タクはゆっくり刀を抜く。
刀身には、夜よりもはっきりと
光のルーンが脈打っている。
(グラドさんが言ってたな……)
昨夜の言葉が脳裏に蘇る。
⸻
【回想──グラド】
『昔のぉ。源蔵が言っておった。
だいぶ飲んでおったが……』
『“水には、静と動の二つの要素がある”とな!』
タク「……静と、動?」
『そうじゃ!!
水は流れ、止まり、斬り、包み、砕きもする。
そこに“光”を合わせると──』
グラドは胸を張って言った。
『“蒼光水”になるんじゃッ!!』
『名付け親はわしじゃ!すごいじゃろ!?ハハハ!』
タク「(いや源蔵が考えてたんじゃ……?)」
『源蔵も“それでええ”と言っとった!!』
(酔ってただけじゃねぇのか……?)
⸻
タクは苦笑しながらも、
刀を両手で構えた。
「……蒼光水か……。
やってみるしかねぇだろ。」
ソフィアが腕を組んで見守る。
「焦らなくていいよ。
光は急に扱うと暴れるから。」
キャスは隣でぴょんぴょんしながら、
「お兄ちゃんの新技!!見るーーー!!」
タク「いや見るだけじゃなくて避ける準備しとけ。」
キャス「えっ!?なんで!?」
タク「暴発したら迷惑かける。」
キャス「やだぁぁぁ!!」
⸻
【タク──蒼光水初実験】
タクは深呼吸し、
胸の奥の“理”へ意識を落とした。
(水の理……流れを読む……
静の一点……動の裂流……)
刀に“水の気配”が乗る。
そこへ──
ルーンの“光”が、薄く反応した。
ピシュッ……!
(動いた……!)
刀身が蒼白い光を帯び、
水色の残像がゆらりと伸びる。
ソフィア「……すご……。
本当に水理と光が溶けてる……!」
キャス「わぁぁぁぁ!!きれーーい!!」
タクは半歩踏み込み、
「──如水・蒼光!」
スパァァァッ!!
地面を“光の水”が走り、
雑草の列が静かに裂けた。
遅れて、砂が“蒼光”に照らされて弾ける。
タク「……これが……“蒼光水”……!」
だが次の瞬間、光が暴れた。
ピシッ!!
「うおっ!!?」
ソフィア「ちょ、タク!!広がりすぎ!!」
キャス「お兄ちゃああああん!!まってぇ!!」
光水が暴走し、
訓練場の地面に“蒼白の線”がガンガン伸びる。
タク「止まれ止まれ止まれえええ!!」
ソフィア「だから言ったのに!!」
キャス「ふゃああああああ!!!」
結局、
訓練場の地面に“謎の蒼光ライン”が10本ほど残った。
タク「……まだ制御できねぇな。」
ソフィア「当たり前よ。
水理の“動”に光を乗せたら暴走するわよ。」
キャス「でもすっごく強そう!!」
⸻
【キャス──新篭手テスト】
キャスは胸を張って言う。
「次!キャスのばん!!
えいっ!とうっ!やぁぁぁ!!」
獣人用ガントレットをつけると──
キャスの跳躍が
明らかに3倍になった。
タク「お前、飛びすぎ!!」
キャス「すごーい!!お兄ちゃん見て!!」
タク「おい!戻ってこい!!」
キャス「やぁぁぁあぁぁ!!」
バシュンッ!!
ソフィア「ちょっと!?距離感バグってるわよ!?
それ、完全に“獣王国の戦士クラス”の跳躍じゃん!」
キャス「えっへん!!」
タク(……可愛いけど、これ敵が見たら絶対引くな……)
⸻
【三人の未来の“形”】
蒼光を拾い、
タクは静かに刀に触れる。
タク「……この刀で、初代に届く日は来るのか……」
ソフィアは微笑む。
「来るよ。
そのための光だし、
そのための仲間なんだから。」
キャスがタクの腕に抱きつく。
「お兄ちゃんは、ぜったい負けない!」
タクは二人の顔を見て──
ゆっくり頷いた。
「……よし。
蒼光水を使いこなす。
キャスもその篭手に慣れろ。
ソフィアは……杖だけで我慢しろ。」
ソフィア「なんでよ!!?」
タク「いや箒は危ないだろ。」
ソフィア「なんでバレた!?」




