第二部33話── “黒い影の言葉”と、赤石悠真の残した“匂い”**
【中央図書院・地下二階──影のうねり】
黒砂になって崩れた“屍人”の残骸の先で──
闇がざわめいていた。
ザ……ザザザ……
タクが刀を構え、ミナを背中へ隠す。
「ソフィア、キャス……構えろ。」
「了解……!」
ソフィアが光風の膜を分厚くする。
「お兄ちゃん……あれ……“強い”……」
キャスの瞳が狼のように細くなる。
ミナは震えながらタクの服を掴む。
「……だめ……あれは……
“屍人の声”じゃない……
別の……誰かの……“理の残響”……」
(誰か……?)
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【黒霧の中に“影の言葉”】
階段の奥、霧が渦巻き──
人影がひとつ、現れる。
先ほどの屍人より濃い。
まるで“闇”そのものが形を取ったような姿。
影の声「……く……ろ……
……あか……い……
……あの……こ……」
「……喋ってる……?」
タクが息を呑む。
影の人は、ゆっくりタクへ顔を向けた。
影「……おまえは……
……しろ……い……いし……?」
タクの背に冷たいものが走る。
(白石……!?
名前も顔も知らねぇはず……
でも“理”で分かるのか……!)
ソフィアが歯噛みする。
「タク……気をつけて。
あれは完全に屍人じゃない……
“半屍”……!」
キャス「お兄ちゃん……嫌だこれ……
怖い……!」
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【キャス──“動物の勘”が叫ぶ】
キャスがタクの袖を掴み、震えながら言う。
「お兄ちゃん……今の匂い……
あれ……赤石の人の……“匂い”がした……」
「赤石……!?」
「うん……
混ざってる……“火の色”……
そして……“最後の想い”が……」
タクの心臓が跳ねた。
(……赤石悠真……
いや……これは悠真本人じゃねぇ……
“赤石の誰かが屍人になった残響”……?)
ソフィアが息をのみ、ミナを手元へ引き寄せる。
「キャスの嗅覚は本物よ……
だとしたら──タク。
これは“赤石家の闇落ち者”の残り香……」
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【影、襲来】
影「……ころ……せェェェ……!」
黒霧が爆発したように飛びかかってくる。
「来るぞ!!」
タクは後方へミナを抱えながら跳ぶ。
「如水──
二式・刃返!!」
刃を返して“受け流し”に徹する。
ギャァァァッ!!
霧の爪が壁を抉り、紙が飛び散る。
ソフィアがすかさず補助魔法を展開する。
「光風・纏護!!
タク、キャス、周囲に光の膜をつける!」
キャス「うん!!
お兄ちゃん、右から来る!!」
タク「任せろ!」
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【タク──“悠真の戦い方”を感じ取る】
影の動き。
その軌道──
その“踏み込み”──
(……この踏み込み……
悠真の“赤石式”と似てる……!!)
影「ァァァァァ!!」
炎の理を持たないはずなのに、
影の振り下ろしが“炎の残像”のように軌跡を残す。
(やっぱり……
こいつは“赤石の誰か”が闇に飲まれた残骸……!)
タクは刀を構え直す。
「……わかった。
お前は……まだ“戦いを覚えてる”んだな……」
影「……ぁ……あ……」
影は一瞬……止まったように見えた。
(通じた……!?)
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【ソフィア──核の位置を看破】
「タク!!
核は──“胸じゃない”!!
“喉奥”よ!!
そこに闇が凝ってる!!」
「喉奥……!」
「屍人じゃありえない位置!
“上位理持ち”だった証拠よ!!」
タクの目に光が走る。
(悠真……赤石家……
理の扱い方が、普通と全く違う……)
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【タク──核を断つ】
「キャス、俺の後ろに!」
「わかった!!」
タクは全身に雷を通し、
足元から空気を蹴り上げる。
「迅雷──
空歩・三連!!」
ドンッ! ドンッ! ドンッ!!
影の喉元へ。
影「……っ……お……ま……え……
……しろ……い……!」
「俺は──白石古武術の後継者だ!!」
「如水──
三式・逆流断!!」
ギィィィィィィィィン!!!
刃が“喉奥”の核を切り裂く。
影の声「……あ……り……が……とう……」
影は崩れ、砂となった。
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【静寂──そして、ミナの言葉】
しん……とした空気の中で、
ミナがそっとタクの袖を引いた。
「白石さん……
いまの影……“完全に死んでない”です……」
「どういうことだ?」
「黒い人(屍人)は……
“核を砕くと闇は消えます”。
でもいまの影は……」
ミナの瞳が震える。
「“理がまだ残ってる”。
どこかで……“呼んでる”気配がします……」
ソフィアが目を細めた。
「……それ、まさか……」
キャスが喉を鳴らす。
「お兄ちゃん……
それって……“赤石悠真”……?」
タクは息を呑んだ。
(悠真……
お前、どこで……何をしてる……?)
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