第二部31話── 図書院・影の追撃戦:封じられた者の“呻き”**
【中央図書院・地下階段】
タクはミナを片腕で抱え、もう片方の手で刀を握った。
階段の上から──冷たい影が流れ落ちてくる。
ズ……ズズ……
「……キャス、ソフィア。構えろ。」
「うん……!」
キャスの耳がぴんと立つ。
「タク、ミナを離さないで。」
ソフィアは光風の結界を展開する。
ミナは震える声で呟いた。
「……来ます……“黒い涙”の……匂い……」
(黒い涙……? 屍人の正体のヒントか……?)
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【影の人影──“屍人・第二体”】
階段の上から、ゆっくり姿が現れる。
人の形はしている、だが──
顔は黒い霧に覆われ、
目の位置だけが“空洞”のように光を飲み込んでいた。
「……ぁ……
ぁぁ……
……た……す……け……」
助けを求める声。
しかしその奥に混ざるのは、明確な殺意。
「“魂”の声と“闇”の叫びが混ざってる……」
ソフィアが小さくつぶやく。
キャスは震える手で短剣を握った。
「お兄ちゃん……嫌だ……あれ……怖い……!」
「キャス、後ろに下がれ。無理に出るな。」
タクはミナを背後の壁に寄せ、前へ立つ。
(逃がすわけにもいかない……
この図書院で暴れられたら、一般人が死ぬ。)
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【タク、初手──闇を読む】
(動きは……屍人の中でも速い方だ……!)
タクは深く息を吐き──
意識を“理”へと沈める。
影の人の呼吸は乱れている。
右足はほとんど地についていない。
軸は“左肩”に偏っている。
「……来い。」
影の人「……ぉ……あァァァァァ!!」
バッ!!
霧の刃がタクの首元へ迫る。
「──如水・斬撃」
タクが低く呟いた。
(“避ける”じゃない。
“読む”んだ。)
体を一ミリ横へずらし、
霧を“紙一重”ですり抜ける。
ズッ……
(掴んだ……こいつの攻撃の癖……!)
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【ソフィアの光】
影の人が体勢を変え、タクの背に回り込む。
「タク!!」
ソフィアが手を払う。
「光風・乱閃!!」
風の中に散った光粒が
影の体表の“闇”だけを弾く。
パチッ……パチパチ……!
影が苦しむように身をよじる。
影の人「……あァ……ああああ……っ……!」
「光が効いてる……!
やっぱり屍人は光属性が弱点……!」
ソフィアの声が強くなる。
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【キャスの感覚】
キャスは震えながらも前に出た。
「お兄ちゃん……
あの黒い人……“痛い”んだよ……!」
「痛い?」
「うん……言ってる……
“斬ってほしい”って……
“苦しい”って……!」
タク(……意思がある……?)
ミナがタクの袖を掴む。
「キャスちゃんの……それは……
“声”じゃなくて……“理の叫び”です……」
ソフィアが息を呑んだ。
「じゃあ……
屍人は、本当に【理を失った人】……!」
タクは刀を構え直した。
(だったら……
こいつらは“ただの怪物”じゃねぇ……)
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【タク──闇の本体を見抜く】
影の人が再び跳ぶ。
霧の爪が横へ薙ぎ払う。
タク「如水──
三断・流水!!」
タクの水刃が
“霧の中の核”へ正確に入る。
ギィィィィィンッ!!
影の人「…………っ……!」
(手応え……!
やっぱり“核”がある!!)
霧が一瞬だけ割れ、
中に“黒い結晶”のようなものが見えた。
タク:「ソフィア!!
核に合わせて光打てるか!?」
ソフィア:「任せなさい!!」
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【ソフィア──決めの一撃】
ソフィアは両手を交差し、
光を一点に収束させる。
「光断──
照破!!」
ピシュッ!!
光の線が、影の核を貫いた。
影の人「……ぁ……あ……
……ありがとう……」
霧がふわりと消え──
残ったのは黒い砂。
キャスは涙を浮かべながら、タクの背中にしがみついた。
「お兄ちゃん……
いまの……“ありがとう”って……」
タクは刀をゆっくり納めた。
「……聞こえた。
あれは……“人の声”だった。」
ソフィアも静かに言う。
「屍人は……
完全に消えたわけじゃない。
“理を戻せば救える”かもしれない。」
タクは拳を握りしめた。
(救える……
なら……救う方法を見つける。)
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【図書院の奥から──更なる影】
階段の奥、闇がざわめいた。
ザ……ザザ……
ミナがタクの胸にしがみつき、震える。
「……だめ……
来る……“もっと強い影”が……」
ソフィアが結界を張り直す。
「タク……!
これ、普通の屍人じゃないわ!」
キャスも身を低く構えた。
「お兄ちゃん……
あれ……“誰か”の気配がする……!」
(誰か……?
まさか……赤石……?)
タクの心がざわめく。
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