第二部30話── 地下の影、光の札。図書院は“眠らない”
【中央図書院・入口ホール】
タクが扉を押し開けた瞬間、
静かすぎる空気が肌を刺した。
天井は高く、本棚は果てなく続き、
魔石ランプがぼんやり白く照らしている。
「……すごい……本が、いっぱい……!」
キャスが思わず声を上げる。
「気をつけて。
この図書院、表向きは観光地だけど──
“本当の資料”は地下にあるの。」
ソフィアの声はいつもより低い。
ミナはタクの背中にしがみつきながら
ゆっくり顔を上げた。
「……この場所……
“光”と“闇”の匂い……両方がします……」
(やっぱり……この子の感覚は普通じゃねぇな。)
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【一階閲覧室──違和感】
三人+ミナは“屍人(黒の人)”に関する資料を探した。
だが──
「……ないわね。」
ソフィアが眉を寄せる。
棚には
魔物図鑑、歴史書、各国の魔力統計、
一般向けの安全ガイド。
どれにも“屍人”の記述がない。
「隠されてる……よね。」
キャスがタクの服を引く。
「だと思う。」
タクの目が鋭くなる。
ミナは本棚に手を触れながら呟く。
「……この図書院……
本当に“知識を守る場所”なのですね。
隠して……閉ざして……」
ソフィアがミナに振り向く。
「ミナ。
地下の場所、感じられる?」
ミナは一瞬まぶたを閉じ──
「……“下に落ちる光”が……あります。」
「行こう。」
タクは頷いた。
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【禁書階段──封じられた扉】
図書院の奥、
“職員以外立入禁止”の札が掛かった階段。
ソフィアは袖をまくり、
光風を細く編んだ。
「静音……結界展開。」
白い膜が、三人をふわりと包む。
「タクが無茶しやすいからね。保険よ。」
「お前な……」
「……図書院は、油断できません……」
ミナの声が震えた。
(ミナ……ここに何を感じてる?)
タクが封鎖された鉄の扉に手をかけ、力を込める。
ギギ……ギィィ……
扉は静かに開いた。
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【地下書庫──真の知識】
空気が変わった。
湿った石の匂い。
光を吸い込む黒い影。
壁に刻まれた古い文字。
「……ここ……怖い……」
キャスがタクの腕にしがみつく。
「ソフィア……読めるか?」
タクが壁の文字を指す。
「これは……“旧文字術式”ね。
帝国と古代エルフだけが使ってた魔法文字。」
ソフィアが指先で壁をなぞり、読み上げる。
「“黒き影──五百年前より出現。
人の理を奪い、魂を穢し、
屍人へと変える。”」
キャスの肩が震えた。
「やっぱり……屍人……」
ソフィアは続ける。
「“闇に落ちた者は北を目指す。
水・火・土・雷……
いかなる属性魔法も効かず。
ただ“光”と“無属性”のみが通る。”」
タクとキャスは、あの黒の人を思い出し息を呑む。
「まさに……あの時のままだ。」
ミナが壁に手を当てた。
「……この文字、もっと深い意味があります。」
ソフィア:「わかるの?」
ミナの瞳が淡く光る。
「“影は……核の落涙。
理が遠ざかるたび……闇に溺れる。”」
タク:「……核……!」
(やはり、世界の核に関係してる……!
祖父ちゃんが戦った“あの闇”だ。)
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【ミナの異変──光が吸われる】
ミナ:「……う……っ……!」
突然、ミナの身体が震え、
白い光が吸われるように揺らめいた。
「ミナ!?」
タクが支える。
「だめ……ここ……“闇”が……濃い……
わたし……光が……奪われる……」
キャス:「お兄ちゃん!!ミナが!!」
ソフィアの目が鋭くなる。
「この地下……“闇の性質”が強すぎる。
ミナは光そのもの……
闇の近くは危険よ!」
タクはミナの身体を抱き上げ、出口を睨んだ。
「ここで無理させられねぇ。
一度、外に出るぞ。」
ミナ:「……タク……ごめんなさい……
わたし……足……引っ張る……」
タク:「バカ言うな。
お前は“仲間”だ。守るのは当たり前だろ。」
ミナの頬が淡く赤く染まる。
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【退避──しかし影は迫る】
階段へ戻る途中──
ゾ……ッ……
タクの背筋を氷が撫でた。
(まただ……
“屍人”と同じ……あの気配……!)
ソフィア:「……タク。
“上の階”に……何かいる。」
キャス:「お兄ちゃん……いやな匂い……!」
ミナがタクにしがみつく。
「来る……“黒い影”が……
わたしたちを……見ている……」
(ここで戦うのは最悪だ……!
だが逃がすわけにもいかねぇ……)
タクは刀を抜いた。
「来るなら──
“ここで斬る”しかねぇ!」
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