第二部28話── 白い少女は“誰かを探している”。公国図書院が隠す影**
【焚き火跡──白い少女の出現】
三人の前に現れたのは、
月明かりの色をそのまま髪に落としたような少女だった。以前見た白い少女とは、年齢が違う。でも…
白いローブ。
素足。
森に似つかわしくないほど静かな足取り。
ソフィアは警戒したまま杖に手を添える。
「……あなた、誰?」
少女はかすかに首を傾げた。
「……“誰”……ですか。」
声は淡く澄んでいるが、
どこか抑揚がずれていた。
タク:「夜の森で何してるんだ?道に迷ったのか?」
少女はタクをじっと見つめる。
「……探しているのです。
“白石”の──」
その言葉に、タクの心臓が跳ねた。
(白石……?)
ソフィアがすかさず一歩前に出る。
「どうして白石を?」
「……“呼ばれた” から。」
「呼ばれた?」
「……ええ。
あの黒い“影”が……
わたしに触れて……
“白石を探せ” と。」
三人:
「…………」
(黒い影が……?)
(屍人に接触したのか……?)
(それって……普通、生きてないはず……)
キャスの尻尾が不安に揺れる。
「お兄ちゃん……この子……大丈夫……?」
タクは少女を観察する。
(……息はある。脈もある。
でも、“理”が……ほとんど感じられない……?
まるで……空っぽみたいだ)
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【少女が取り出した“木札”】
少女は胸元から小さな木札を取り出した。
薄く、白く、
かすかな光の粒が浮かぶ古い札。
「……これを……届けなければ。
白石へ……辿り着くまで……わたしは……」
ソフィアが青ざめる。
「タク……それ……!」
「……ああ。
“光の木札”だ。」
キャスが息を飲む。
「お兄ちゃん……
あれって……巨大樹の……?」
「間違いねぇ。
公国に五つあると言われる光の木札……
一つはこの少女が持ってる。」
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【少女の“空白”】
タクが優しく問いかける。
「お前……名前は?」
「……わかりません。」
「わからない?」
「……気づいたら森にいて……
影に触れられ……
それだけ。」
ソフィアが眉を寄せる。
「ちょっと待って。
屍人に“触れられて”生きてる時点で異常よ?
普通なら闇に落ちるか……精神壊れるわ。」
少女は首を横に振る。
「闇は……わたしの中に入りませんでした。
ただ……寒かっただけ。」
(寒い……?
闇を拒否した……?
それって……どういう……)
タクがさらに確認する。
「じゃあ……どうして俺たちの前に?」
「……“近い” と感じたから。」
「何がだ?」
「……あなたの“理”。
とても……懐かしい。」
タクは息を止めた。
(懐かしい……?
この子……白石家を知ってるのか?
でも……年齢は……15くらいに見える……
なのに言葉遣いが……)
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【ソフィアが思い出す“図書院の文”】
ソフィアは小声でタクに囁く。
「……タク……
キャスと別行動の時、
図書院で読んだ一文……覚えてる?」
タク:「“闇に触れても壊れない者が稀にいる”……
あれか?」
「そう。
“光の器” と呼ばれる存在。」
(光の器……
光属性が異常に強く……
闇への耐性が極めて高い……
屍人の“触れ”にも堕ちない……)
少女の薄い瞳が、タクの瞳の色をそっと映す。
「……あなた……
白石の……“におい” がする……」
ソフィアとキャスの目が一斉に見開く。
(におい……!?
理を“におい”で感じ取ってる……?
そんな芸当、普通はできない……)
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【突如として少女が倒れる】
少女の膝がふらりと揺れた。
「っ……!」
タクが抱き止める。
「おい!どうした!」
「……すみません……
わたし……“器”が……揺れて……」
ソフィアが即座に手を当てる。
「理が……不安定……!
この子……今まで“影”に触れ続けて……
限界まで頑張ってたんだ……!」
キャスも慌ててタクの袖を掴む。
「お兄ちゃん!助けてあげよ!!」
タクは迷わず頷く。
「もちろんだ。
助ける。絶対に。」
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【ソフィアの提案──公国中央図書院へ】
「タク、この子……
今のままじゃ危険よ。
光属性が強すぎて、器が割れかけてる。」
「じゃあどうすりゃいいんだ……?」
「公国中央図書院。
あそこなら“光の器”についての記録がある。」
「行くしかねぇな……!」
キャス:「お兄ちゃん、この子……連れて行こ!」
タクは少女を優しく背負い、
立ち上がった。
少女はかすかに囁いた。
「……白石……やっと……見つけた……」
タク:「……俺は白石だけど……
お前の探してる“何者”なんだ?」
少女:「……まだ……思い出せません……
でも……あなたに会わなきゃ……
いけなかった…… 気がする……」
タクの胸が強く脈打つ。
(この子は……何を知ってる……?
そして……なぜ俺を探した……?)
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