第二部26話── 黒石初代、言葉を持つ“屍人”。禁忌の理、開眼**
【夜の山道──赤の気配が消えた直後】
赤石悠真の影が闇に溶けてから、数分。
タクはまだ動けなかった。
(……同い年のあいつ……何者だ……
理を読まれた……
俺の半分……?)
思考が渦を巻く。
だが──
キャスが震える声を出した。
「……お兄ちゃん……
これ……別の匂い……
さっきの人じゃ、ない……」
ソフィアも空気の流れで察した。
「……タク。
“黒の気配”……来る。」
タクは即座に構えた。
「黒の人か……!!
くそ……今は赤の方で頭いっぱいなのに……!」
しかし──
次の瞬間、三人は息を呑んだ。
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【“黒”が歩いてくる】
闇そのものが形を持つように、
森の奥から“黒霧”が滲み出る。
地面をまるで踏んでいない。
ただ“滑る”ように近づいてくる。
タクが歯を食いしばる。
(……前に遭った黒の人より……濃い……!!
理の壁が……刺すように痛ぇ……)
そして──
黒霧の中心から
“声”が漏れた。
「…………白石……の……理…………」
ソフィアの肩が跳ね上がる。
「しゃべった……!
本物の屍人は、壊れた音声しか出せないのに……!」
キャスがタクにすがりつく。
「お兄ちゃん……ダメ……!
これ……前の黒の人と違う……!!
怖い……もっと……深い……!!」
タクは一歩前へ。
「……来いよ。
逃げねぇ。」
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【黒石 清九郎 盛隆──理の底からの声】
黒霧は人の形を保ったまま、
ゆっくり首を傾けた。
そして、
明確に言葉を紡いだ。
「ほぉう…………
よく見れば……その“理”……
白石の……小童か。」
タクの心臓が跳ねた。
(言った……!!
悠真と同じ言い方……!!)
黒霧はふわりと揺れ、
その中に“影の顔”がぼんやり浮かぶ。
「姿形は……知らぬが……
その理で、わかるわ。
白石の……流れを……継ぐ者よ。」
声は老人のようで、
若者のようでもあった。
時間の概念を超えた声音。
ソフィア(震える):
「……本当に……喋ってる……
まさか……あなた……」
黒霧が笑うように揺れた。
「知っておるとも……
我が名は──
黒石 清九郎 盛隆(くろいし せいくろう もりたか)」
タクの全身に鳥肌が立つ。
「……黒石……初代……!」
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【500年の憎念と記憶】
「白石は……五百年……
変わらぬのう……」
「五百年……!?
生きてるのか……!!?」
タクが叫ぶ。
黒霧:
「生きておらん。
死んでもおらん。
“理が落ちた先” に、沈んでおるだけよ。」
タクは唾を飲む。
(……理が……落ちた……?)
黒石の声は、懐かしむような響きを持っていた
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【初代の目的】
「さて……白石の小童よ。」
黒石初代の黒霧が、すうっとタクへ近づく。
「問うぞ。」
「……なんだよ。」
「お前は……
“理を抱いて死ぬ”覚悟があるか?」
「は……?」
「白石の血は……
いつも“扉”に選ばれる。
行き先は決まっておる。
“終焉の地” よ。」
(終焉の地……!?
じいちゃんが行った場所……!)
黒石初代はさらに続けた。
「白石。
お前は……
いずれ、黒の道と白の道の “境界” に立つ。
その時……
わしはお前を試す。」
タクの拳が震える。
「何勝手なこと言ってんだ……
試す?
俺はあんたと戦う気なんて──」
「“来る” のだ。
避けられぬ。
それが……理の運命よ。」
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【襲撃──一瞬の死】
言い終えた瞬間。
黒石初代の黒霧が
“刃の形” を取り、タクへ飛ぶ。
「危ねぇ!!」
タクが反応したその刹那──
ガンッ!!
ソフィアの光障壁が割れ飛ぶ。
「ソフィア!!」
「っ……なに、この威力……ッ!!」
キャスが叫ぶ。
「お兄ちゃん!!にげ──」
「逃げぬ。」
黒石がキャスの声を遮る。
「白石が……逃げられるわけがなかろう。」
タクは息を吸い込む。
「……ああ。
逃げねぇよ。」
(じいちゃんが向き合った相手……
ここで逃げたら、
白石の名が泣く!!)
タクが構えた時──
黒石初代の霧の刃が
タクの首元へ 止まった。
ピタ……。
「今は殺さぬ。
“まだ” のう。」
「……!?」
「白石の理……
あと一歩で“満ちる”。
その時こそ試す。」
黒霧が霧散し始める。
「……わしを倒せ。
白石。
五百年越しの……
因果を終わらせよ。」
黒石初代は
森の闇に溶けるように消えた。
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【残された恐怖と決意】
タクは膝をついた。
「……っ……
やべぇ……足が……震えてる……」
「タク!!」
ソフィアが駆け寄る。
「ごめんソフィア……
あいつ……強すぎる……」
「当然よ……!
黒石家の初代なんて……
“理の化け物”なんだから……!」
キャスは泣きそうな顔で抱きついた。
「お兄ちゃん……死んじゃうかと思った……!!」
タクはキャスの頭を撫でる。
「……大丈夫だ。
まだ死なねぇ。」
(でも……
本当に死ぬかもしれねぇ……)
タクは拳を握りしめた。
「……強くなる。
絶対に。」
ソフィアも隣で静かに頷いた。
「うん。
白石の理は……まだ成長できる。
手伝うよ。
私たちがいるじゃん。」
キャス:「お兄ちゃん、がんばろ……!」
夜の風が三人の間を抜けていく。
こうして──
黒石初代との“2度目の遭遇” は
恐怖と覚醒を残し、
タクの運命を大きく動かすことになる。
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