第二部24話── 赤の理、微かに揺れる。遠くから来る“あいつ”**
【中央都市・宿屋「風の灯」──深夜】
ソフィアとキャスが眠ったあと。
タクだけが眠れず、窓の外を見ていた。
中央都市の灯りは遠く、星がよく見える。
(……あの少女のことも気になるけど……
黒い人の気配も……まだ近い気がする)
タクの胸がざわつき続けている時だった。
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【“理の波”──突然の異常】
ふいに、
タクの中の“理”が勝手に反応した。
(……な、なんだ!?)
体の芯に、灼けるような衝撃が走る。
熱い。
そして、懐かしいような、胸が痛むような……
「……赤……?」
タクは思わず呟いた。
ソフィアが布団の中でかすかに目を開ける。
「……タク?どうしたの……」
「……分からない。
でも……来てる。
“赤の理”を持つやつが……」
ソフィアの顔色が一気に変わる。
「あの感じ……間違いないわ。
赤石家の理。」
「赤石……?」
「そう。
黒石とは逆の“烈火の理”……
本来は、あなたと同じ“扉の一族”。」
(……赤石家……
父さんの昔話でよく聞いた名前だ……)
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【中央都市・外門──深夜の来訪者】
同じ頃。
中央都市の外門近く。
夜警の兵士たちが松明を掲げて立っていた。
「だ……誰だ!?
こんな夜中に……!」
暗闇の向こうから“炎の気配”が近づいてくる。
現れたのは──
まだ少年の姿の青年。
黒髪に赤い反射光。
背は高く、細身なのに、纏う圧が重い。
だが一番目を引くのは──
瞳の奥に、まるで“燃える核”のような光が揺れていること。
「……道を開けてください。」
青年の声は淡々として静か。
しかし、拒める空気ではなかった。
「い、今は閉門中だ!
手続きを踏め──!」
青年はゆっくりと手を上げる。
その掌から、火が生まれた。
だが燃え上がるような魔法ではない。
むしろ──異様なまでに“静かな炎”。
「……俺は旅の者です。
通りすがっただけ。」
炎が自然に消える。
兵士たちは背筋が凍るのを感じた。
普通の火魔法はこんな感情を抱かせない。
(……なんだこの子……!?
圧が……桁違い……!)
青年「争う気はありません。
扉を開けるだけで良い。」
兵士たちは無意識に開門していた。
青年は深く頭を下げ、静かに都市へ入っていった。
兵士A「……なんだったんだ今の……?」
兵士B「やべぇ……
“赤の人”ってやつじゃないだろうな……」
兵士A「いや……違う。
……あれは“正気”だった。」
兵士B「……じゃあ、何者なんだよ……?」
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【タクの異変──“呼ばれている”】
宿屋。
タクは胸を押さえて座り込む。
「ぐ……っ……!」
「タク!?」
ソフィアが飛び起きる。
「どうしたの!?
どこか痛い!?」
「いや……違う……
なんか……体が……応える……みたいな……」
タクの“理”が勝手に脈動している。
キャスも起きてきてタクの背中を支える。
「お兄ちゃん!?大丈夫!!?」
(……この感じ……初めてじゃない……
黒石初代の時にも……少し……)
ソフィアが真剣な声で言う。
「タク──
あなた、“呼ばれてる”わ。」
「呼ばれてる……?」
「赤の理を持つ者は、
白石や黒石と同じく“扉の系譜”。
理同士が反応し合うことはある。」
タクは息をのむ。
(赤石家……
じゃあ……まさか……)
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【中央都市の屋根の上──“彼”の独白】
青年は中央都市の高い屋根の上に立ち、
夜風に髪を揺らしながら遠くを見る。
視線の先にあるのは──
“タクが泊まる宿の方向”。
「……白石の理。
やっぱり……生きていたんだな。」
青年の目は悲しげであり、
しかしどこか嬉しそうでもあった。
「拓海……
会いたかったよ。」
青年の名前は──
赤石 悠真
17歳。
赤石家・正統なる後継者。
そして──
この夜、悠真は初めて
“白石の理”を感じていた。
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