第二部23話── 迷いの少女は何者?タクを“光”と呼んだ理由**
【中央都市・宿屋「風の灯」──夜】
図書院から戻った三人は、
中央通りの宿屋に部屋を取っていた。
部屋に入ると、キャスはふわっとベッドに倒れ込む。
「うぅ……今日いろいろ疲れたぁ……
お兄ちゃん、あの子……なんだったの……?」
ソフィアは椅子に座り、腕を組む。
「私にも分からない。
でも──“普通じゃない”のは確かよ。」
タクは窓辺に寄り、
図書院で見た少女の目を思い返す。
(……光。
あの子は、俺の“理”を見た……?)
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【ソフィアの分析──少女の正体とは?】
「タク。」
「ん?」
「気になってるでしょ。あの子のこと。」
「……まあな。」
ソフィアは真剣な目を向けてきた。
「まず、あの子には“魔力の揺らぎ”がなかった。
魔法使いでも獣人でも、気配が必ずある。
でも、あの子は──」
ソフィアはゆっくり指を立てる。
「──“空白”なのよ。」
「空白?」
「うん。魔力があるようで、ない。
理があるようで、掴めない。
まるで……」
ソフィアは少し言葉を詰まらせた。
「……“核の闇”に触れた者みたいだった。」
タクとキャスの背筋が凍る。
「でも!!」
ソフィアはすぐに続けた。
「黒い人たちの“闇の気配”はなかったの。
むしろ、逆。」
「逆?」
「……“光の残滓”。
そんな感じ。」
タクは息を呑む。
(光……
あの子は俺を見て、光と言った……)
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【キャスの反応──獣人の感覚】
キャスが毛布を抱えたまま、ぽつりと言う。
「でもね……
私、あの子の匂い……嫌じゃなかった。」
「どういう意味だ?」
タクが聞く。
「うーん……黒の人とか、赤の人ってね……
“息の匂い”が重いの。
冷たくて、鉄みたいに苦しくなる。」
「……まあ、そうだろうな。」
「でもあの子は違うよ?
あったかくて……
ちょっと寂しい匂い……」
キャスは少し寂しそうに笑った。
「たぶん、悪い子じゃないと思う……
だけど……何かを探してる匂い……」
「探してる……?」
「うん。
お兄ちゃんか……お姉ちゃんか……
それとも別の“誰か”……」
(……俺の“光”を見た理由……
そこに繋がってるのか?)
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【タクの仮説──理の反応】
タクはふいに呟く。
「……ソフィア。」
「ん?」
「もしかして……
あの子、“理”に反応したんじゃないか?」
ソフィアは目を細める。
「……その可能性はあるわね。
だってタクは──」
ソフィアは優しく言った。
「“光の理”を持ってるんだから。」
「……っ!」
(ソフィア……気づいてたのか……)
「でもね、タク。
あの子が“光”って言ったのは……
あなたの理に惹かれたからかもしれないけど……」
「けど?」
「……それだけで済む相手じゃないわ。」
ソフィアは低く続けた。
「あの子、どこか“闇の残滓”みたいなものを抱えてた。
あれは黒い人とは別種の……
もっと……古い何か。」
タクとキャスの表情が固まる。
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【結論──少女は味方でも敵でもない】
「まとめるわ。」
ソフィアは指を折る。
「1:魔力の揺らぎがない。
2:光の残滓を感じる。
3:タクの理に反応した。
4:でも闇の匂いも微かにある。
5:“空白”の存在。」
「……要するに?」
「──“敵ではないけど、味方でもない”。」
「お兄ちゃん……じゃあどうするの……?」
「決めるのはタクよ。」
ソフィアがタクを見つめる。
「次にあの子を見つけた時、
どう向き合うかを。」
(……次また会えるのか?
いや、会うべきなんだ……)
タクは小さくうなずいた。
「……次は、話す。
ちゃんと……確かめる。」
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【夜更け──少女の影】
窓の外──中央都市の塔の上で。
白いワンピースの少女が、
風に髪を揺らしながら空を見ていた。
「……ひかり……」
その瞳は、やはり“空白”のまま。
「……みつけた……
……あのひと……
……きっと……」
少女はふっと夜の闇に溶けるように姿を消した。
(この少女が後に“核”へ繋がる鍵になることを
まだ誰も知らない──)
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